2010年6月18日金曜日

年次休暇の時間単位での取得について(続報)

 6月上旬に人事から各課に連絡があった模様ですが、本年4月1日より労働基準法の改正に対応し、年次有給休暇に関し年5日分までは時間単位での取得が可能になりました。この制度改正に関して、問題が明らかになったのでお伝えします。

 この点につき、職員労働組合では5月下旬に他の用件で人事と接触した際に、年5日分までの時間単位での有休取得が4月1日に遡って可能になるという旨の簡単な説明を受け、5月28日付の職員労働組合ニュース【公開版】で皆様にお知らせしました。

 そして先日、人事から各課に出された通知を確認しましたが、非常勤職員がこの制度改正の対象に含まれていないらしいことが組合執行委員会で問題になりました。

 さらに、八景キャンパスにおける過半数代表である教員組合に照会したところ、本来、この時間単位での有休の取得に関しては、過半数代表者との合意に基づき、①対象労働者の範囲、②時間単位で有給を取得できる日数(5日以下)、③時間単位年休の1日あたりの労働時間を何時間とするか、④1時間以外の時間(例えば2時間等)を単位とする場合はその時間数、という4点について定めた労使協定を結ばなければならないにも関わらず、少なくとも八景キャンパス、福浦キャンパスについては協定が結ばれていないことが明らかになりました。つまり、既に発表された制度改正の内容は、少なくとも八景、福浦という本学の主要キャンパスにおいて、法に定められた時間単位での有休取得に関する労使協定の締結という手続きを経ないまま、当局側のみの判断で決定されたものでした。

 また、当局側による制度改正が非常勤職員を対象としているかどうかという問題について当局に照会したところ、契約職員は対象に含まれるが嘱託職員は含まれないという回答でした。この点についても、以下のような問題点があります。

 第一に、嘱託職員に関して、制度の対象とするかどうかは、厚労省労働局長通知に言う「事業の正常な運営との調整」の観点から取得を認めることが適当であるかどうかを判断する必要があります。上記の労働局長通知では「一斉に作業を行なうことが必要とされる業務に従事する労働者等にはなじまないことが考えられる」として工場労働者の例を挙げています。勿論、本学の嘱託職員はこのような範疇の労働に従事しているわけではありません。因みに、同じ公立大学法人の例では、静岡文化芸術大学で総ての職員を対象として時間単位での有休取得に関する協定が結ばれています。

 また、嘱託職員の契約は小規模な組織単位で独自に基準を定めて行なっているため、職員組合でもその実態は十分に把握できていませんが、これまでに寄せられた情報では週30時間を越える勤務となっている嘱託職員もいるようであり、実態として常勤職員と同様かそれに近い労働実態となっている嘱託職員がある程度以上存在していることが予想されます。このような状況を考えると、嘱託職員に関しても(勤務実態が多様であり、組合としてもその全貌の把握が困難ではあるものの)全体としては制度の対象に含めることが適当ではないかと考えます。

 さらに、契約職員に関しては、制度の対象に含まれるということで、常勤職員同様に年5日分までの時間単位での有休の取得が可能ですが、この点に関し、当の契約職員には周知されていない模様であり、肝心の当事者が知らないのでは制度改正の意味がなくなってしまいます。

 このように、今回の制度改正については、①そもそも労使協定に基づかない点で労基法に定められた手続きに則っていない、②嘱託職員について「事業の正常な運営との調整」の観点、また勤務実態に照らし制度の対象に含めることが適当である可能性が高い、と職員労働組合として判断します。

 今後、当局に対し、労使協定に基づかない制度改正は違法であることを指摘し、上記②について実現するため協議を求めていきます。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2010年6月9日水曜日

第3回勉強会のお知らせ

 先日開催した第1回、第2回勉強会に続いて、6月23日にプロパー職員を念頭に置いた第3回の勉強会を開催します。今回は、大学図書館を巡る動向と本学の図書館の状況について取り上げます。大学図書館については、近年、電子ジャーナル化の進行や学生の学習支援機能の再認識、アウトソーシングの進行などその環境と機能に関して大きな変化が起こっています。内容等の詳細は以下の通りです。組合員以外の方の参加も大いに歓迎します。

第3回勉強会
 日時: 6月23日(水)12時15分~12時45分
 場所: 八景キャンパス 商文棟5階 小会議室
 テーマ: 「大学図書館の課題と本学図書館の現状」
 発表者: 登坂善四郎(学術情報センター/職員組合委員長)

*6月21日(月)までに事前の参加申し込みをされた方には、組合員、非組合員に関わらず組合でお弁当をご用意します。ycu.staff.union(アット)gmail.com までご連絡ください。

最近の高等教育関係学会における大学職員論と公立大学職員

 現在、日本の高等教育に関する研究の中心となっている学会は、日本高等教育学会と大学教育学会ですが、今年度の両学会の大会が先日、相次いで開催されました。両学会とも学会員は教員が大半で職員は少数ですが、近年、大学職員の重要性の増大を反映して職員に関する部会が開催されることが多くなっています。今年度も双方の学会で職員に関する部会及びラウンドテーブルが開催されました。このうち大学教育学会の職員に関するラウンドテーブルに参加してきたので、少し紹介しておきたいと思います。

 近年の高等教育関係学会での大学職員論は、18歳人口の減少等に起因する外部環境の悪化や大学改革への政策的圧力、情報化や国際化への対応などの必要からの業務の高度化・拡大要請への対応として、職員の「高度化」や「専門化」、さらには地位の向上を、主としてアメリカの大学における(基本的に教育や大学経営に関する修士以上の専門教育を受けている)専門的職員の在り方を参照基準として議論するという形で展開されてきました。

 今回のラウンドテーブルも基本的にそれらの延長上にあるもので、現在、大学教育学会が行っているSDに関するアンケートについての途中経過、アメリカの専門的大学職員に関する紹介、日本の大学職員の専門性に関する調査・考察などが報告されました。

 これに対して東北大学の羽田教授から、関連分野の研究蓄積に基づかない大学職員論は、専門性の上昇、それによる地位の上昇という思考の隘路に陥っているのではないか、という指摘がありました。そして、①前提としてまず大学における権限配分の再編をどうするかという議論が必要で、それを受けてどのような職員を育成するかが明らかになる、②これまでのオールラウンド型からプロフェッショナル型職員への移行条件は何なのか、③職員の専門職化は供給要因なのか需要要因なのか、④今後続く職員の人件費削減の方向性の中で職員の専門職化を進めることは可能なのか、という問題提起がなされました。

 もうひとつ、司会から、公立大学は特殊な問題を抱えているからという趣旨の発言があり、それを受けて複数の公立大学関係者から、プロパー職員の地位の問題や大学の様々な問題に関して自治体出向職員の理解を得ることの困難さなどについての発言がありました。ここに端的に現れているように、一般的に日本の大学職員論が(それが適切かどうかは別として)教員との関係を軸として展開されているのに対し、大学数で1割ほどを占める公立大学に関してのみ、職員論は自治体職員といういわば大学の外部にある要因との関係を軸として展開されるという特殊な様相を示しています。その意味では、公立大学職員論は上記のような一般的な(あるいは国立大学・私立大学における)大学職員論とは基本的な条件で異なっており、それをそのまま援用するだけでは不十分で、一般的な大学職員論とは別に(あるいは並行して)、公立大学関係者の手で独自に検討が行われる必要があると言えるかもしれません。

★日本高等教育学会 

★大学教育学会

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ