2010年8月7日土曜日

育児・介護休業等に係る制度改正について

 7月4日職員労働組合ニュースでお知らせした、改正育児・介護休業法に対応した制度改正については、職員労働組合として検討を行い、関連の規程案、規則案及び労使協定案に関し20数箇所(複数個所にわたり同様の問題があるものを個々にカウントした場合は30箇所以上)にわたる問題点があるとの結論に達したため、8月4日、当局に対し、文書で見解の表明を行いました。

 量が多いため、ここで見解文書自体の紹介は行いませんが、内容的には、①法人化後に採用された(医療技術職を除く)全教職員に対して任期制が適用されていることから、任期をまたぐ形での休業の取得等任期制に関わる部分については、基本的に厚労省の法令解釈に則り、教職員の休業等の取得をできる限り促進するよう、恣意的、場当たり的な法解釈や制度の設計・運用を行わない、②常勤職員と非常勤職員について、前者は基本的に横浜市の制度に準じ法令を上回る内容となっているのに対し、非常勤職員に関しては法令の定める最低限の内容という2重の基準となっているが、合理的な根拠がない限りこのような差別的な取扱を行うべきではなく、非常勤職員に関する制度の内容は常勤職員と同一とすべきである、という2点を最大の柱として、意味不明箇所の確認、法令の引用の誤りや法令に定められた内容の抜け、記述の矛盾等、さらに協定書案が労使協定により定める部分だけでなく、関連規程・規則案の内容の一部を抜き出した妙に長文で分かりにくくかつ中途半端なものとなっている点などです。

 なお、この内容については、八景・福浦の両キャンパスの労使協定締結の当事者である過半数代表者より職員労働組合の見解について知りたいという要望があったため、説明を行い、職員労働組合の主張は妥当な点が多いという反応を得ています。このため、両キャンパスについては、労使協定の締結に至る過程で職員労働組合の見解に沿った修正が俎上に上ることになりそうです。

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職場集会の開催と職場諸要求の取りまとめについて

 前回お知らせした八景、福浦の両キャンパスでの職場集会の開催ですが、下記の通り、日時、場所が確定したのでご紹介します。議題は、今年度のこれまでの活動報告と今年度の職場諸要求の取りまとめ内容についての意見交換です。組合員の方には、奮ってご参加くださるようお願い申し上げます。また、組合員以外の方の参加も大いに歓迎します。8月23日(月)までに参加の事前申込をされた方には組合でお弁当を用意します。

日時:八景キャンパス 8月25日(水)12:10~12:50 組合会議室
    (1号館1階職員組合事務室の隣)
   福浦キャンパス 8月26日(木)12:10~12:50 A209セミナー室

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NPMと大学法人評価

 来年度以降、大学評価がまた面倒なことになりそうです(何のことかピンときたアンテナの高い方、ぜひ組合に加入して一緒に大学の諸々の問題に取り組みましょう。何のことか分からないが、今のままでは大学職員としてまずいと思っている方もどうぞ)。

 大学評価に関しては、国立大学法人、公立大学法人の場合、公的なものとしては、大きく2つの「評価」が存在しています。

 第1は大学基準協会、学位授与・大学評価機構等による認証評価、第2が国立大学法人制度、公立大学法人制度にビルトインされている中期目標、年度計画等に関する評価です。

 前者は、日本におけるその源流をたどると、アメリカのアクレデテーション団体を範として1947年に大学間の自主的な団体として結成され、正会員としての加盟に際して「適格判定」を行うという大学基準協会の活動にたどり着きます。認証評価が法的に義務付けられ、その基準や審査に文科省の意向が反映されるようになった時点で“アクレデテーション”としてはいささか怪しげなものとなってしまった感もありますが、元々はあくまでも大学という業界内部の、大学人による自主的な改善や質的保証のための取組でした。その意味では、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)改革の一環として、大学行政における規制緩和とセットとなって、いわば事前規制の代償措置としての役割を果たすことを法的に強制されるに至るというこの20年ほどの経緯は、アクレデテーションの本来の意味からは不幸な展開だったといえるかもしれません(ただ、1947年の大学基準協会の結成以降、法的に強制されるまでの50年余り大学は何をしていたのかという批判は甘受しなければならないと思います)。

 一方、国立大学法人制度、公立大学法人制度にビルトインされている評価制度は、そもそも国立大学法人制度が独立行政法人制度から枝分かれし、公立大学法人制度が地方独立行政法人制度の一部であることに端的に示されているように、当初からNPM型改革の(政治的な)一つの道具という性格を持っています。

 ただし、NPMと政策評価の関係の現状については、政策評価論の専門家からは異論もあるようです。日本における政策評価論のパイオニアであり、第一人者である同志社大学の山谷教授は、2000年前後から始まった我が国における中央省庁、地方自治体の政策評価制度の整備に大きな役割を果たした方ですが、近年、国・地方の政策評価の状況について厳しい評価を下すようになっています。

 山谷教授によれば、日本語で言う「評価」は様々な意味を持つ上に、評価理論で言う「評価」は価値判断を含まない情報提供のツールであるのに、日本では価値判断の活動を評価と呼ぶ傾向があり、これが日本における「評価」の混乱を招くことにもつながっているが、それが理解されていないとされます。その結果、例えば「評価によって意識を改革する」といった過大な期待を担わされたり、その期待が実現されないと「評価は役に立たない」といった非難を浴びせられたりすることになっていると指摘します。

 NPMと政策評価との関係については、評価には様々な種類があり、それぞれその目的や使い方が異なっていて、NPMに適合する「評価」はアウトプットを対象とした“performance measurement”であるのに、パブリック・セクターにおける勉強不足から“program evaluation”や“policy evaluation”(特にそのアウトカム志向)と混同され「成果」主義に向かったとされます。

 ただでさえ用語や概念のややこしい分野で、説明もなしにこれだけでは何を言っているのかわけが分からないだろうとは思いますが(私自身、この分野は10年ほど前に政策系の学部・大学院カリキュラム作りに携わった時以来で、概念・用語を思い出すのに苦労しました)、用語解説をやっているときりがないので、関心を持たれた方は、後述の参考文献をご覧になっていただくとして、ここでは、その分野を代表する研究者、それも実務志向も充分持ち、実際に様々な省庁・自治体の制度設計や運用に協力した人が、パブリック・セクターは不勉強で、その結果、NPM型改革における政策評価は混乱状態にある、と言っていることを覚えておけば充分でしょう。最後に、この点について、山谷教授が学術論文としては率直に過ぎるのではとすら思える表現もまじえて問題点を要約している部分を紹介しておきます。

 一つ明言できるのは、「悪影響」が発生したことである。すなわち、①NPMの視点でアプローチする評価は、いくつかの場合によっては新たなフィクションづくりのツールとして機能することがある。②また業績評価に対する理解不足、政治の関与の在り方についての認識の混乱が大きな課題になっている。③NPM型改革とわが国で言われているものは、国際的に見れば実は既に1960年代から存在したものであり、また、予算制度と評価制度との連携をはじめとするわが国で新しいアイデアと宣伝される改革も、既視感にまみれている。④評価と業績測定を混同した結果、非常に粗雑で幼稚な文書が評価書を僭称して氾濫している。

山谷清志(2009:3頁)

 参考文献

 山谷清志(2010)『公共部門の評価と管理』晃洋書房
 山谷清志(2006)『政策評価の実践とその課題 ―アカウンタビリティのジレンマ』萌書房
 山谷清志(2009)「公共部門における「評価」―政策評価とNPM型業績測定―」日本評価学会『日本評価研究第9巻第3号』

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