2010年9月23日木曜日

職場諸要求について

 9 月22 日、本年度の職員労働組合の職場諸要求を当局に対して提出、改善と回答を要求しました。職場諸要求は、毎年度、職員を巡る様々な課題・問題について取りまとめ、一括して要求するものです。
 内容は以下の通りです。今年度は、第1 期中期目標・中期計画期間の終了と次期中期目標・中期計画の策定を前に様々な問題が寄せられたこともあり、例年に比べ盛りだくさんな内容になりました。それだけ本学が多くの課題を抱えているということの証左でもあります。
 回答があり次第、また皆様にお知らせします。

2010 年9 月22 日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 本多 常高 様
横浜市立大学職員労働組合
委員長 登坂 善四郎

職場諸要求に関する要望書

 市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。
 横浜市立大学職員労働組合は、上記目的を達成するための労働環境改善に向けた職場諸要求について、以下の通り取りまとめをおこないました。本学は、法人化時の混乱と不完全な制度設計、その後の運用の混乱等から未だに抜け出せず、教育研究のみならず経営面でも数多くの課題を抱えています。第1期中期計画期間の終わりと次期中期計画期間の始まりを迎え、今、改めるべきを改めなければ本学の高等教育機関としての諸能力(特に金沢八景キャンパスにおいて)が危険なレベルにまで低下することを強く懸念します。
 ご検討をいただき、10 月22 日までに改善に向けた回答をいただけますよう、ここに要望します。

Ⅰ.職場環境・職員参加

1.働きやすい職場環境と職員参加の拡大について
 国立大学法人制度・公立大学法人制度の発足か6年が過ぎ、大学を巡る環境は一層厳しさを増している。高等教育機関としての総合的な経営力が問われる中、特に本学においては、大学法人制度の想定を超えたレベルの設置者による直接コントロールの強化・拡大と極端なトップダウン型経営の導入により、従前より公立大学の弱点とされていた事務局機能や適切なトップダウンとボトムアップの組み合わせが不可欠な教育研究の改善等において深刻な問題を抱えている。
 本来の公立大学法人として、大学の全職員が大学の民主的な運営と教育研究への取り組みに積極的に関われる環境整備と職場内におけるコミュニケーションの拡充が重要であり、教職員間のコミュニケーションを高めながら、多くの大学職員の理解と協力体制のもとに、大学教育への取り組みが進むよう運営の改善と取り組みを要望する。

2.超過勤務への対応について
 昨年来、手当圧縮等の要請からくるものと思われるが、超過勤務の抑制が行われている。もちろん、超過勤務自体は削減することが望ましいが、その方策は多く個人の努力に帰せられており、組織としての合理的・効率的なマネジメントの遂行という観点が薄く、事実上のサービス残業の強制につながりかねないものとして強く懸念する。業務と残業の実態について把握と公表を行うと共に、現場の職員の要望に基づき、私立大学に比べ著しく非効率的と思われる事務局内部の意思決定や業務執行のプロセスの効率化に努めるよう要望する。

Ⅱ.人事制度等

3.任期制の廃止について
 現在、医療技術職を除く全職員に適用されている任期制に関しては、その法的根拠は曖昧であり、国会においてもその問題点が指摘されている。
 第1 期中期計画期間の終わりを迎え、大学としての長期的な人事政策としても、職員の積極性やインセンティブを高める効果はかならずしも期待できず、法人化後絶えることのない職員の病気休職や退職に象徴されるように、かえってマイナスの影響の方が大きいことが明らかになったと考える。
 大学の本来の目標である、質の高い教育研究の実現のためにも、本学の第1 期中期計画期間の実績、民間企業の人事政策での教訓や他大学の実態を踏まえ、任期制を廃止、より適切な人事政策を検討するよう要望する。

4.契約職員・嘱託職員雇い止め制度廃止について
 契約職員、嘱託職員の多くは、実質的には不足する正職員の業務を担っており、雇い止めの強行は大学自身の経営力、大学間競争力にマイナスの影響を与えずにいられない。競争的環境の下、高等教育機関としての活動レベルの維持・向上に必要な人的資源の確保に悩む多くの地方国大が制度の撤廃や弾力的運用に動く中、本学においては、医療技術系の嘱託職員に関してのみ例外規定を活用した雇用の延長が認められているが、このような弥縫策ではなく、雇い止め制度自体を撤廃するよう要望する。

5.業務評価の適切な運用と本人公開の維持・改善について
 各職場における実際の業務評価の運用は、透明性の問題、客観性の確保など、その困難性が民間企業の多くの失敗事例を始めとして、広く指摘されているところである。
 人事運用の失敗は、職場のモラール・業務能力の深刻な低下を招くばかりでなく、職員間の反目や間違いを指摘できないような非生産的な職場環境を生み出す温床となることも危惧される。
 評価制度の適切な運用、特に評価の客観性を担保するための評価者に対する専門的トレーニング及び評価の透明性を担保するための本人に対する一層詳細な評価情報(判断根拠に関する評価者の記述等)の公開を行うよう要望する。

6.紛争処理手続きにおける客観性の確保について
 本学におけるハラスメントや人事等に関する紛争処理に当たる委員会等は、基本的に学内者のみで構成されており、外部の弁護士等の客観的な第3 者の参画が想定されていない。全員任期制という制度下においては、一般の教職員にとっては学内の幹部のみで構成される組織に対して各種の訴えを起こすこと自体ためらわれるケースがあり、紛争処理における客観性の確保、ひいては風通しのよい良好な職場環境の確保のために、これらの委員会等に客観的で大学及び設置者に利害関係を持たない第3 者を加えるよう制度の改定を行うことを要望する。

7.契約職員の規程上への適切な位置づけについて
 これまでも職員組合が指摘してきたように、契約職員については、関係規程上に位置づけがなく、「公立大学法人横浜市立大学契約職員雇用要綱」なる根拠・手続きの不明な一枚の文書がその存在、雇用条件等の根拠となっている。このような状態はもちろん異常であり、規程上に明確に位置づけるよう要望する。また、その際、8 時30 分から5 時15 分までの勤務時間、週5 日間勤務で残業もあるという雇用条件の契約職員を非常勤職員として扱うのはいかなる意味においても無理があり、当然、常勤職員として位置づけるよう要望する。

8.大学専門職制度の堅持と評価の客観性、透明性の確保について
 大学専門職制度は、本学の法人化に当たって大学職員の高度化、専門化の試みとして紛れもなく国内大学において先進的な取組であったが、実際には市派遣幹部職員によって制度運用段階で事実上存在しないか、単なるプロパー職員管理職に関する身分であるかのように変質させられ、さらに次期中期計画においては制度自体を消滅させ、職員制度を地方公務員制度に同一化させるがごとき動きが見られる。大学専門職制度を堅持すると共に、その評価に当たっては、制度設計の趣旨に則り、その専門分野に関する業績・経験を有し、専門的見地から客観的に評価しうるものを参加させるなど、客観性・透明性を確保するための措置を取るよう要望する。

9.職場の職員配置内容を明確にすること
 職場の人員体制の明示は、労働環境を守る観点からも基本事項にとなる重要な問題である。職員の配置や配属のあり方においては、他大学等の調査をおこなうと共に、具体的に業務の実態を比較検討し、適切で働きやすい配置内容となるよう、提案と説明を要望する。
  • 各職場における職員の配置状況と内容の実態について、明確に組合に説明・提案するよう要望する。
  • 職員配置の変更に当たっては、組合協議事項であり事前に提案をおこなうよう要望する。

10.職員の配転基準の明確化について
 職員の配置基準についての骨格を明示するとともに組合と事前に協議するよう要望する。職員配転に当たっては、職員のキャリア形成を図る観点からも、中・長期的な視点のなかで仕事に取り組めるような配転等の基準を要望する。

11.派遣社員の対応について
 各職場における派遣社員の配置においては、その必要性や運用の効果と課題を見極め、職場内で十分な論議をおこなうとともに、慎重な対応を要望する。また、職場における変更事項として、変更が生じた場合には組合に事前提案をおこなうよう要望する。

12.教室業務に係る出張手続きについて
 医学部教室における業務出張について、大学の出張として認められないケースがある。事故の際の取扱等の問題もあり、大学の業務として事務手続き上も位置づけるよう要望する。

Ⅲ.コンプライアンス

13.コンプライアンス重視の経営の確立について
 法人化以後、学位授与等を巡る問題などで本学のコンプライアンスが問題となった。その一方で労働三法を始めとする労働関係法規に関する法人化以降の本学の対応の問題は、社会的には明らかになっていないため批判を受けるようなことにはなっていないが、非常に問題のある状態が続いている。最近数ヶ月の有給休暇の時間単位取得にかかる労基法の改正に対する対応や育児休業・介護休業等に関する法改正に対する対応に現れたように、法人化された大学においては(地方公務員法等ではなく)基本的に民間企業と同様の労働関係法規が適用されるにもかかわらずそもそも関係法規をきちんと読んでいないと思われるケースや、民間の雇用の基本的ルールである「契約」という概念を理解していないのではないかと思われるケースなど、法人化された大学の運営の前提となる法的リテラシーに関して担当部署、市派遣幹部職員等の理解には危惧を覚えざるを得ない。本来の意味でのコンプライアンス(法令に則った組織運営)を徹底させるよう要望する。

Ⅳ.給与等

14.給与システム等人事システムの信頼性の確立について
 今年度の2度に渡る職員組合のチェックオフに関する誤り(職員組合とは何の関係もない付属病院教員が何故か職員組合員として登録、問題発覚の翌月も同様のミスが繰り返され、しかも原因は最終的に組合に対し明らかにされていない)や福浦キャンパスの臨床系教員の諸手当について間違いが頻発しているなどの状況は、給与システム等人事システムの信頼性に対し不安を覚えさせるものである。以上の2つのケースについては当事者の組合や教員側が気づけば是正可能な問題ではあるが(もちろん本来あってはならないミスである)、一般的な月々の給与・手当等の支給額が正確かどうかなどは各教職員にとって確認の困難な問題であり、信頼しうるシステムの存在は教職員が安心して業務に取り組むための大前提である。給与システム、給与等の処理に関する作業手続き等人事システムの信頼性の確立を要望する。

Ⅴ.入試業務

15.昼食時間中の拘束性の高い入試業務においては、従事者に弁当を支給することについて
 入試の実施に際しては、安全・公正な実施環境の保持のため、関係者の不要な外出を制限しまた実施時間割の関係から、関係者が試験本部等の限られた場所と時間において、拘束性の高い状態で昼食を取る必要がある。
 昨年度、弁当の公費負担が認められず、関係者から私費負担で代金を徴収して対応したが、このような金銭管理を担当者が行わなければならないことは好ましいことではなく、従事者に対し弁当の支給を行うよう要望する。

Ⅵ.施設整備

16.施設整備・管理に関する体制の整備
 金沢八景、福浦キャンパス等における施設の整備や管理体制は整理されておらず、日常的な施設設備の利用や管理、将来に向けた適切な整備において問題がある状態となっている。権限と責任を明確化した体制の整備を行うよう要望する。

17.福浦キャンパストイレの洋式化について
 福浦キャンパスの医学科の建物は、一部整備が行われたものの、洋式トイレの比率が少ない状況にある。学生利用への配慮を含め、引き続きトイレの洋式化を図るよう要望する。

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学務・教務課窓口時間の延長に伴う勤務体制の試行について(回答)

 9月15日、当局より職員組合に対して、学生サービス向上のため、学務・教務課の学生対応窓口を18時15分間までとし、そのために職員の一部を9:15~18:15のずらし勤務とする試行を行いたいという旨の申し入れがありました。 
 学生サービスの向上の必要性に関しては職員組合としても異論はなく、また、一部職員の1時間のずらし勤務ということであれば労働強化につながる危険性も低いと判断し、試行については了解する旨の回答を行いました。ただし、運用段階での問題の発生を予防することと、実は当局説明の数時間後に、横浜市において同様のずらし勤務の打診が市の関係組合に対し非公式に行われていたことが明らかになり、その点についての対応もあり、9項目について改善・留意を求めました。具体的な回答書の内容は以下の通りです。
 また、関係部署の職員の方で、この試行により何か問題が発生したような場合は、ご遠慮なく職員組合にご相談ください。

平成22年9月22日
横浜市立大学職員労働組合
委員長 登坂 善四郎

学務・教務課窓口時間の延長に伴う勤務体制の試行について【回答】

 9月15日付で提案のあった学務・教務課窓口時間の延長に伴う勤務体制の試行については、本学における学生サービスの改善に関しては職員組合としても必要性を認めており、関係一部職員の勤務時間の1時間のずらしという限定された範囲での労働条件の変更であり基本的には労働強化にはつながらないものと予想されることから、試行提案について了解します。
 ただし、職員組合が従前から指摘しているように本学の労働環境、特にプロパー職員を巡る問題や労働関係法規等に関するコンプライアンスの状況、さらに、今回の試行が法人設置者である横浜市におけるずらし勤務の試行の問題と時期を同じくしている点等に鑑み、以下の諸点について改善・留意するよう求めます。

  • 実施時期について、終期が定められていないが、検証を前提とした試行においては期限を定めて行うことが基本と考える。来春よりの試行になる鶴見キャンパスは別として、八景キャンパスについては年内一杯で試行を終了させる等、期限を明確にすべきである。
  • 試行の結果に関する検証に関しては、関連部署等に関する匿名でのアンケート等を行うと共に、アンケート結果を含めその詳細を学内に公表すること。また、正式導入については、過半数代表者及び職員の職域を代表する職員労働組合と協議、合意に達すること。
  • ずらし勤務の該当者について、いつごろまでに、どのような手順で決定するか等の手続き面を具体的に示すこと。
  • 嘱託職員、契約職員に関しては、勤務時間は雇用契約書・労働条件通知書において定めていることから、今回の試行に関係するこれら職員に関する取扱は、関係法令・関連学内規程等に則り適切な手続きを行うこと。
  • ずらし勤務となる職員の休憩時間については、管理職が責任を持ってその確保を行うこと。
  • 残業の取扱について、ずらし勤務でありながら急遽8時半出勤が必要となったケースなども含め、適切な対応を図ること。
  • 育児短時間勤務・部分休業等を取得中の職員に関しては、制度の趣旨に則りその取扱を行うこと。
  • 個々の事情のある職員についての配慮は、確実に行うこと。
  • 事情によりずらし勤務に応じられない職員について、評価・再任において不利な取扱を行わないこと。
以上

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関東地区大学教育研究会開催のお知らせ

 10月2日(土)午後、本学金沢八景キャンパスにおいて、大学教育学会関東支部による第27回関東地区大学教育研究会が開催されます。「共通教育のマネージメント」をテーマとしたシンポジウムと自由研究発表が行われます。非会員でも参加費を払えば参加可能です。詳細は、http://www.daigakukyoiku-gakkai.org/activity をご覧ください。

 参加を希望する方は、なるべく9月25日(土)までに組合副委員長でもある出光さん naoki(アット)idemitsu.info まで①氏名 ②所属 ③懇親会への参加の有無を添えてお申込ください。

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11月までの職員組合への連絡について

 9月24日(金)から10月一杯まで、組合の書記さんが事情により休暇を取られる関係で基本的に電話・FAXでの職員組合への連絡は出来なくなります。ご注意ください。連絡は電子メールないし各キャンパスの執行委員までお願いします。

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2010年9月2日木曜日

次期中期目標・中期計画に関する横浜市長への申し入れ

 4月14日付職員組合ニュース【公開版】で皆様にお知らせしたように、職員組合では次期中期計画の検討に関し、様々な問題点があると共に労働組合、一般教職員の意見が反映されていないことは看過できないとして、理事長に対し4月5日「次期中期計画に関する意見書」を提出し、特に法人経営に関する部分について6項目の問題点を指摘しました。しかし、残念ながら職員組合の指摘は当局によって黙殺され、問題点はそのまま残ったまま計画策定の事実上の終了を迎えようとしています。

 これについて、横浜市立大学職員労働組合のもうひとつの顔である横浜市従大学支部の親組織である横浜市従も、市大の現状には問題がありこの件についてこのまま放置するのは望ましくないという認識から、今回、横浜市従中央執行委員長名で次期中期目標の決定権、中期計画の認可権、そして法人に対する広範囲で強大な監督権を有する林横浜市長に対して次期中期目標等に関する申し入れを行うこととし、8月30日、市大を管轄する都市経営局に対し説明及び申し入れを行いました。内容的には、職員組合が大学理事長に対して提出した意見書の内容をほぼ踏襲していますが、市長及び市の関連当局が大学の現状についてどの程度正確に認識しているか疑わしい点も考慮し、前文の部分を変更、法人化後の市大の状況、問題点について大幅に説明を加えてあります。

 回答内容については、回答あり次第、皆様にまたお伝えします。

2010年8月30日
横浜市長 林 文子 様
横浜市従業員労働組合
中央執行委員長 菅野昌子
大学支部支部長 登坂善四郎

公立大学法人横浜市立大学 次期中期目標に関する申し入れ

 横浜市政の発展と市民サービスの向上に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

 ご承知の通り、横浜市立大学は、前市長によるイニシアティブの下、強引な行政主導により平成17年4月に公立大学法人化されました。本来は、日本の大学改革における先導者の一人であった慶応大学教授 故孫福弘氏が理事長として法人化後の大学の運営に当たるはずでしたが、法人化を前にした段階で孫福氏が急逝、制度設計も不十分な状態に終わり、以後の制度設計と法人化後の運営は事実上、市派遣幹部職員の手に委ねられました。それ以降、教育研究・大学経営に関して専門性を欠く市OB、市派遣幹部職員主導の大学運営により、教育研究、大学経営の双方で混乱が続き、他大学関係者・高等教育研究者・文科省関係者等の高等教育関係者、またジャーナリズムにおける横浜市立大学の評価も低下を続けています。

 横浜市従大学支部においても、市派遣一般職員組合員および法人化後新たに採用されたプロパー職員組合員の権利の保護、健全な職場環境の確保を目指し活動を続けていますが、市派遣幹部職員とプロパー職員間の事実上の上下関係、医療技術職を除くプロパー職員全員への任期制の導入、複雑な職員制度、市派遣幹部職員の大学経営に関する専門的知識の不足から来る非合理的、非効率的な指揮命令、市派遣幹部職員の労働関係法制に関する知識・認識の不足による雇用関係トラブルの続発等々の問題が山積しており、これらに起因するプロパー職員のモラールの低下、退職者やメンタル的要因による休職者の続発など、極めて厳しい状況が続いています。

 大学法人の中期目標の決定に関しては、地方独立行政法人法において「中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、当該公立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮しなければならない」とされていますが、実際には「大学法人の意見」とは、上記のように市派遣幹部職員等市関係者―大学経営、教育研究いずれの領域においても専門家ではない―を中心にしたごく一握りの“大学関係者”の意見であり、実際に大学の活動の大半を担い、数十年にわたって大学で活動し、あるいはそうなるであろう一般教員、プロパー職員はその意見を伝える機会もありません。また、この点は、中期目標に基づく次期中期計画の策定についても同様です。

 横浜市従大学支部は、このような有効な経営計画の策定に必要な専門的知識を欠いた少人数のトップダウンによる策定作業の進行に危惧を抱き、本年4月5日、法人理事長宛に「次期中期計画に関する意見書」を提出しました。しかし、その後の検討状況を見る限り、残念ながら大学支部の意見は大学当局により完全に黙殺されたものと考えざるを得ません。

 日本の高等教育を巡る環境は極めて厳しいものがあり、今後さらに悪化が予想されます。教育、研究、大学経営、さらに地域貢献・地域連携といった総ての面で、時にトレードオフの関係にある様々な課題への対応を、減少する資源を活用しつつ達成することが求められています。しかしながら、市OB、市派遣幹部職員による、大学法人制度の趣旨に全く反した民間流経営ならぬ公務員流大学経営という現在の横浜市立大学のあり方は、このような高度で複雑な経営課題への対応を困難なものとしています。このまま、現行次期中期目標案及びそれに基づく計画案によってさらに6年間の時間を重ねた場合、高度化、専門化の試みが続くプロパー大学職員と教員との協働、さらには経営陣のトップダウンと一般教職員のボトムアップの組み合わせにより改革を進める国立大学や私立大学との競争力格差は決定的なものとなることを強く懸念します。

 市民の共有財産である横浜市立大学を発展させ、市民の中により良く根付いた存在とするためにも、公立大学法人の設置者である横浜市の首長として大学法人に対する監督責任と法人の人事・財務・評価等の広範かつ強力な権限を有し、また大学法人の意見に配慮しつつ次期中期目標の策定を行う権限を有する共に、法人が作成する次期中期計画に対する認可権を持つ貴職におかれては、大学法人制度の本来の趣旨に基づく大学運営を行うよう市派遣管理職の主導下にある法人を監督すると共に、以下のような現行中期目標・中期計画において明らかになった問題点を踏まえ、広く一般教員・プロパー職員の意見を聴き、これに配慮した中期目標の決定並びに中期計画の認可に当たるよう要望します。

1.大学の教育研究、経営の向上には教員・職員の密接な協力による大学の運営が不可欠になっているが、現在の案はそのような教職協働の見地を完全に欠いており、これを盛り込むこと。

2.市派遣職員及び医療技術職を除く全職員に対する任期制の導入は、優秀な職員の確保や職員のモラールの維持の面で問題があり、また、任期制と表裏一体の関係にある評価制度についても度々問題が発生している。これら制度が大きく関係すると思われる度重なる職員のメンタル面での問題からの休職や退職者の続発等は到底無視しえないものであり、制度に関する再検討を盛り込むこと。

3.プロパー職員の採用について、わずか数年間で大量の新卒、第二新卒者の採用が行われているが、このような極端な採用行動は、20年後、30年後の組織のあり方(職員の年齢構成、処遇等)についての懸念を抱かせる。また、職員の能力育成に関して、大学職員には地方公務員とは全く異なる課題が課せられているという点が認識されているかどうかも不明である。独自の社会的役割と課題を持った大学としての中長期的な観点に立った固有職員の採用、育成を行うこと。

4.非常勤職員制度に関し、制度の実態の検証を行うと共に必要であれば改善を行うことを盛り込むべきである。その際、短期的な人件費に係る視点からのみ判断するのではなく、大学の中長期的、総合的な経営力の維持・向上という観点を考慮すること。

5.20年ほど前までは、大学職員の業務の多くは、先例の踏襲や教授会の決定事項の遂行など定型的な処理が可能なものであったが、このような状況は既に終わり、今や大学職員は、急激な変化を迎えている大学という独自の社会的役割と課題、特色を持った組織体の経営の担い手としての能力の高度化と専門化を求められている。本学の大学専門職制度は、このような状況の変化に対する国内大学では初の先進的な取組の試みであったはずだが、実際には、法人化直後からこのような大学を巡る経営上の課題に対する知識・認識を欠く市派遣職員によって制度運用が骨抜きにされ、むしろ国レベルでの中央集権体制を前提としたジェネラリスト志向の強い地方公務員制度に同化させるが如き動きが進められている。現在公表されている次期中期計画関連文書に至っては、大学専門職という言葉自体含まれていない。大学専門職制度の堅持と本来の趣旨に則った運用を行うこと。

6.市派遣職員の段階的削減が現行中期計画同様盛り込まれているが、現行中期計画での市派遣職員の解消から内容が後退し、大学支部に対する大学当局の説明では、市派遣職員の解消は見直し、次期中期計画では市派遣職員削減の数的目標は設けないとのことであり、市派遣幹部職員が大学の経営を直接掌握する現状が恒久化される懸念が出てきた。現在、企画、財務、人事といった経営中枢部門の管理職の大半は市派遣幹部職員によって占められているが、本学の場合、事務局の実質的な権限、影響力は他の国公立大学に比べ非常に強く、大学のパフォーマンスに大きく影響することから、専門性を欠く市派遣幹部職員によるこれらのポストの占有の継続は大学経営上望ましくない。大学法人制度の趣旨に則り、原則として早期に市派遣幹部職員の引き上げを行うと共に、それまでの間、異動及び(大学の教育研究、経営に関する専門的な)研修を活用し、適切な人材の確保に努めるべきであり、このような方針を明記すること。

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学生生活アンケート結果について

 8月末、学内に「学生生活アンケート結果の検討・活用」というメールが発信され、昨年度学生に対し行ったアンケート結果がYCU-Netに掲載された旨の連絡がありました。このような内容が学内に広く公開されること自体、これまでの本学ではあまり考えられないことでしたが、市長の交代で風向きが少し変わったのか、あるいは認証評価を受けた以上、これまでのような「知らしむべからず」という姿勢をそのまま維持することは困難になったのか、それともこれまでは単に作業上の余力がなかったのか等、その辺りは不明ですが、ともあれ、このような情報自体が学内にきちんと公表されるに至ったことは歓迎すべきことです。

YCU-net 掲示板 (学内限定)

 ただし、公開された内容自体、特に自由記述の内容は喜んでいられるようなものではありません。ここに書かれている問題の少なからぬ部分が、職員組合や教員組合がこれまで指摘してきた問題、あるいは問題に起因するものです。特に、個人的にはカリキュラムに対する不満を非常に問題視せざるを得ません。法人化後の本学の、特に八景キャンパスにおける教育上の特色として掲げていた様々なキーワード、スローガンはある程度の視野、知識を持った大学関係者から見れば内実を伴わないか、単独では実施上有効な結果をもたらさないものであることは明らかでした。しかし、いわば消費財としての大学教育という面から見れば、住宅などと同じで普通一生に一度しか購入しないものであり、その上、教育の評価は住宅の評価よりもさらに難しく、学生にとっては自分が受けている教育の質について(クラスの人数やゼミの競争率、施設などの評価を除けば)評価することは簡単ではありません。それにも拘らず、これだけの不満が寄せられているということはよほどの問題があると考えるべきなのです。

 いつの間にか横浜市大がジャーナリズムに取り上げられることも少なくなってきました。神奈川県内の大学として取り上げられるのは横浜国大であり、公立大学の中で取り上げられるのも(やや特殊な存在ですが)国際教養大であり、あるいは首都大であり、横浜市大が含まれることは滅多にありません。要するに教育ジャーナリズムにおいて、取り上げるほどのものでもない大学という評価が定着しつつあるのです。

 組合の声に当局が耳を傾けないことは珍しいことではありません。しかし、学生の声に耳を傾けない大学に将来があるとは思えません。いままで、問題はない、あるいは多少の問題はあったがそれも解決したなどと言っている人達には是非耳を傾けてほしいと思います。そして市長や市当局にも、市関係者からではない情報に気づいてほしいと思います。残された時間はもうあまりないかもしれないのですから。

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