2010年10月22日金曜日

育児・介護休業等に係る労使協定締結等について(続報)

 度々お伝えしてきた改正育児・介護休業法に関する労使協定について、当局側より協定書の提供がありましたので、皆様にご紹介します。

 その前に2点ほど改めて注意すべき点について触れておきます。

 第1に、この労使協定書の第1条第2項(4)に「非常勤職員にあっては、子が1歳に達する日から1年を経過する日までに雇用契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと」とありますが、これは法令に従えば「更新されないことが明らかであること」の誤りで、協定書の記述では法令とは意味が反対になってしまっています。第1条第2項は「育児休業をすることができない」場合の条件を挙げている項目ですので、「任期更新がされないことが明らかでない場合」には育児休業を認めないでは意味が通りません。

 因みに規程上では、この部分は「非常勤職員の育児・介護休業等に関する規程」の第2条第1項(3)において、育児休業をすることができる条件として「更新されないことが明らかでないこと」とされていて、こちらについては法令の趣旨どおりとなっています。言い方を変えれば労使協定書と規程では意味が反対になってしまっています。

 すでにお伝えしたところですが、職員組合はこのような本来労使協定に盛り込む必要のない項目を(しかもどのような基準で加えたり加えなかったりしているのかもよく分からない)加えること自体に反対し、労使協定には法令上協定で定めるとしている項目だけを取り上げ、その他については規程、規則で定めて、その内容について法令との齟齬がないか精査するよう求めてきました。その理由の一つは、まさにこのような誤りが起こるであろうことを懸念してのことです。必要のない協定書本体と規程の双方に条件を記載し、しかもわざわざ片方は「取得できる条件」、もう片方は「取得できない条件」として記述しているのですから、誤りが起こる可能性は当然高くなります。

 職員組合では、法令との内容の齟齬については規程、規則においてチェックし、協定書本体については(このような誤りを防ぐ意味でも)不要な項目は加えないよう求めていたので、このようなわざわざ規程とは反対の記述の仕方をした部分の誤りまではそもそもチェックしていません。前回組合ニュースでもお伝えしたように、制度の利用を予定、検討している方には、協定書、規程、規則の関連部分総てをご面倒でも確認するよう、改めて呼びかけます。

 第2に、基本的に厚労省の法令解釈に則り制度設計及び運用を行うよう求めましたが、これが容れられなかったことにより、制度の運用、適用において教職員が不利益をこうむる可能性があります。

 例えば、育児短時間勤務について、労使協定第5条第1項(2)ウで短時間勤務の対象外になる場合として「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事するもの」が挙げられています。この部分は、厚労省の「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の9(3)における例示を見ると、国際線等の客室業務員等の業務などが挙げられていて、単にその部署が忙しいから育児短時間勤務の取得は認められない、といった運用を行うことが想定されているわけではないことがわかります。しかし、このような原則の確認は行われず、法人化後の本学の職場環境、当局の人事政策を考慮すると、「忙しいのだから認められない」と言って、短時間勤務の確保のための対応や努力は何ら行わずに申出を却下するケースなども十分に考えられます。

 また、任期の更新をまたいで育児休業などを取得する場合、厚労省の「育児休業や介護休業をすることができる期間雇用者について」(期間雇用者という言葉は言われてみると随分と不安定そうで不安を招く言葉ですが、事実我々は期間雇用者なのです)を見ると、雇用契約の期間が例えば3年で、契約が切れる1年前から育児休業を2年間取った場合、新たな契約期間3年間の最初の1年は引き続き育児休業期間、その後2年間は復帰して勤務、ということになります。


 ところが、当局側が主張している職員任期規程の第4条によれば、このような場合、次の任期については、とりあえず育児休業を取っている1年は再任となりますが、それ以後については「育児休業となる前の期間、育児休業の期間及び休業前の再任の回数を考慮し決定する」とされていて、どうなるかは休業を取得する教職員の側には分からない、当局側の決定次第ということになってしまいます。


 このように、厚労省の法令解釈に則った制度設計・運用がなされる保証がない状況下、様々な問題が発生する可能性が残ってしまっています。

 ただ、ここで一つお断りしておかなければなりませんが、基本的に厚労省の法令解釈に則り制度設計及び運用を行うべきである、という職員組合の見解は、あくまでも、今回の育児・介護休業等の取得に関する厚労省の解釈が育児・介護休業等の取得を促進するという観点に立っていて同意できる点が多く、当局側によるこれまでの本学での人事制度の設計・運用よりは遥かにましである、という認識からのものであり、厚労省の法令解釈を絶対基準とする、というものではありません。例えば、この問題について教員組合との意見交換の中で、休業期間は任期に加えないという考え方もあるのではないかという話もありました。このような厚労省の法令解釈や法令の基準を超えた水準の確保を要求することも問題によっては当然ありうると思います。今回の育児・介護休業等に関する問題では、職員組合が最初に指摘した問題点を巡る議論に終始し(しかもその多くは受け入れられませんでした)、これまでのところ、残念ながらそのような細部に渡る議論や合意といったレベルまでは至らないという結果になってしまっています。

 では、以下から労使協定書の本文になります。因みに、この文書自体は金沢八景キャンパスのものですが、他のキャンパスに関しても本文は全く同じとのことです(ただし、福浦キャンパスについてのみ、この文書から第17条の部分が除かれています)。

公立大学法人横浜市立大学職員の育児・介護休業等に関する労使協定書

公立大学法人横浜市立大学理事長 本多常高 と、金沢八景地区の職員の過半数を代表する者 山田俊治 とは、公立大学法人横浜市立大学職員就業規則第44条及び公立大学法人横浜市立大学非常勤職員就業規則第30条に基づき定められる育児・介護休業等について、次のとおり協定する。

(育児休業の対象者)
第1条 育児のために休業することを希望する職員であって、3歳に満たない子(非常勤職員にあっては1歳に満たない子)と同居し養育する者は、この規程に定めるところにより育児休業をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、次の職員については育児休業することは出来ない。
(1) 継続雇用1年未満の者
(2) 休業の申し出があった日から起算して、1年以内に退職することが明らかな者
(3) 1週間の所定労働日数が2日以下の者
(4) 非常勤職員にあっては、子が1歳に達する日から1年を経過する日までに雇用契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

(育児休業の期間等)
第2条 育児休業の期間は、原則として子が3歳に達するまで(非常勤職員にあっては1歳に達するまで)を限度として、育児休業申出書に記載された期間とする。

(育児休業している職員の賃金等の取扱い)
第3条 育児休業期間は、無給とする。

(育児部分休業制度)
第4条 職員で小学校就学の始期に達するまでの子(非常勤職員にあっては3歳に満たない子)と同居し、養育する者は、理事長に申し出て、所定勤務時間の始め又は終わりにおいて、1日を通じ30分単位で2時間を超えない範囲で必要な時間を休業できる。ただし、次のいずれかに該当する職員からの申し出は拒むことができる。
(1) 1日の所定労働時間が6時間以下である者
(2) 労使協定によって所定労働時間の短縮措置を講じないと定められた次の者
ア 勤続1年未満の者
イ 週の所定労働日数が2日以下の者
2 部分休業取得期間は、無給とする。

(育児短時間勤務)
第5条 職員で小学校就学の始期に達するまでの子と同居し、養育する職員は、理事長に申し出て、所定勤務時間を短縮することができる。ただし、次のいずれかに該当する職員からの申し出は拒むことができる。
(1) 1日の所定労働時間が6時間以下である者
(2) 労使協定によって所定労働時間の短縮措置を講じないと定められた次の者
ア 勤続1年未満の者
イ 週の所定労働日数が2日以下の者
ウ 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する者
2 短縮する勤務時間は別に定める。
3 請求期間は、1月以上1年以下で、子が小学校就学の始期に達するまで引き続き延長することができる。
4 育児短時間勤務をしている時間については、報酬は支給しない。

(介護休業の適用対象者)
第6条 要介護状態にある家族を介護する職員は、介護休業をすることができる。
2 前項の「家族」の範囲は、次のとおりとする。
(1) 配偶者、父母、子、配偶者の父母
(2) 同居し、かつ、扶養している次の者
祖父母、孫及び兄弟姉妹
3 第1項の「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり、常時介護を必要とする状態をいう。ただし、同項の規定にかかわらず、次の職員については介護休業することは出来ない。
(1) 引き続き雇用された期間が1年未満の者
(2) 申し出の日の翌日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな者
(3) 1週間の所定労働日数が2日以下の者

(介護休業の期間等)
第7条 介護休業の期間は、介護を必要とする対象家族1人につき、原則として、連続する6月の期間内までとし、最初に申し出た日から1年以内の期間で120日(非常勤職員にあっては、93日まで)(勤務を要しない日及び休日を除く。)までとする。
2 前項にかかわらず、次の各号に定める事情が発生した場合は、終了予定日を待たず当該期間は終了する。
(1) 対象家族が死亡したとき
(2) 介護を行っていた職員が負傷し又は疾病等により介護が困難になったとき
(3) 介護を行っていた職員が産前・産後休業、育児休業又は新たな介護休業に入ったとき
(4) その他介護休業に係る家族を介護しないこととなったとき
3 介護休業の適用は原則として対象家族1人につき要介護状態ごとに1回とする。

(介護休業の単位)
第8条 介護休業の単位は、1日、半日又は1時間(非常勤職員にあっては、1日又は半日を単位)とし、1時間を単位とする介護休業は、1日を通じ、始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続した4時間の範囲内とする。

(介護休業期間中の賃金等の取扱い)
第9条 介護休業期間中は、無給とする。

(育児・介護のための時間外労働の制限)
第10条 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員が当該子を養育するために申し出た場合には、当該申し出をした職員の業務を処理するための措置を講ずることが著しく困難である場合を除き、1か月について24時間、1年について150時間を超えて時間外労働をさせることはない。
2 前項の規定は、日常生活を営むのに支障がある者を介護する職員について準用する。この場合、前項中「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員が当該子を養育するため」を、「要介護状態にある者の介護その他の世話を行う職員が、当該世話を行うため」と読み替えるものとする。
3 前2項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する職員の育児のための時間外労働の制限の申し出は拒むことができる。
(1) 引き続き雇用された期間が1年未満の者
(2) 1週間の所定労働日数が2日以下の者
4 次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、制限期間は終了するものとし、当該制限期間の終了日は当該各号に掲げる日とする。
(1) 家族の死亡等制限に係る子を養育又は家族を介護しないこととなった場合
当該事由が発生した日
(2) 制限に係る子が小学校就学の始期に達した場合
子が6歳に達する日の属する年度の3月31日
(3) 申出者について、産前産後休業、育児休業又は介護休業が始まった場合
産前産後休業、育児休業又は介護休業の開始の前日

(育児のための所定外労働の免除)
第11条 3歳に満たない子を養育する職員が当該子を養育するために申し出た場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。
2 次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、制限期間は終了するものとし、当該制限期間の終了日は当該各号に掲げる日とする。
(1) 子の死亡等免除に係る子を養育しないこととなった場合
当該事由が発生した日
(2) 免除に係る子が3歳に達した場合
当該3歳に達した日
(3) 申出者について、産前産後休業、育児休業又は介護休業が始まった場合
産前産後休業、育児休業又は介護休業の開始の前日
3 第1項の規定にかかわらず、次の職員からの所定外労働の免除の申し出は、拒むことができる。
(1) 継続雇用1年未満の者
(2) 1週間の所定労働日数が2日以下の者

(育児・介護のための深夜業の制限)
第12条 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員が当該子を養育するため又は要介護状態にある家族を介護する職員が当該家族を介護するために申し出た場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、午後10時から午前5時までの間(以下「深夜」という。)に労働させることはない。
2 前項にかかわらず、次の職員は深夜業の制限を申し出ることができない。
(1) 引き続き雇用された期間が1年未満の者
(2) 申し出に係る家族の16歳以上の同居の家族が次のいずれにも該当する者
ア 深夜において就業していない者(1ヶ月について深夜における就業が3日以下の者を含む。)であること。
イ 心身の状況が請求に係る子の保育又は介護をすることが出来る者であること。
ウ 8週間(非常勤職員にあっては、6週間)(多胎妊娠の場合にあっては、14週間。)以内に出産予定でないか、又は産後8週間以内でない者であること。
(3) 1週間の所定労働日数が2日以下の者
(4) 所定労働時間の全部が深夜にある者
3 次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、制限期間は終了するものとし、当該制限期間の終了日は当該各号に掲げる日とする。
(1) 家族の死亡等制限に係る子を養育又は家族を介護しないこととなった場合
当該事由が発生した日
(2) 制限に係る子が小学校就学の始期に達した場合
子が6歳に達する日の属する年度の3月31日
(3) 申出者について、産前産後休業・育児休業又は介護休業が始まった場合
産前産後休業・育児休業又は介護休業の開始の前日

(子の看護休暇)
第13条 子の看護休暇は、9歳に達する日(非常勤職員にあっては、小学校就学の始期に達する日)以後の最初の3月31日までの間にある子(子に準ずる者も含む。)を養育する職員が、当該子の看護(負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話を行うことをいう。)のほか、当該子の疾病予防のための予防接種や健康診断を受けさせるため、勤務しないことが相当であると認められる場合、当該休暇年度において、5日まで(当該子が2人以上の場合は10日まで)取得することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次の職員については、看護休暇を取得することはできない。
(1) 継続雇用6か月未満の者
(2) 1週間の所定労働日数が2日以下の者
3 子の看護休暇は有給(非常勤職員にあっては無給)とする。

(子の看護休暇の取得単位)
第14条 子の看護休暇の取得単位は、1日又は1時間(非常勤職員にあっては、1日又は半日)とする。1時間単位で取得する場合は、1時間を超える部分については15分刻みで取得できることとする。

(介護休暇)
第15条 介護休暇は、負傷、疾病、身体上若しくは精神上の障害又は老齢などにより、2週間以上にわたり日常生活を営むのに支障がある者(以下「要介護者という」の介護その他の世話を行う職員が、当該世話を行うため、勤務しないことが相当であると認められる場合、当該休暇年度において、5日まで(要介護者が2人以上の場合は10日まで)取得することができる。
2 前項の「要介護者」の範囲は、次のとおりとする。
(1) 配偶者、父母、子、配偶者の父母
(2) 同居し、かつ、扶養している次の者
   祖父母、孫及び兄弟姉妹
3 第1項の規定にかかわらず、次の職員については、介護休暇を取得することはできない。
(1) 継続雇用6か月未満の者
(2) 1週間の所定労働日数が2日以下の者
4 介護休暇は有給(非常勤職員にあっては無給)とする。

(介護休暇の取得単位)
第16条 介護休暇の取得単位は、1日又は1時間(非常勤職員にあっては、1日又は半日)とする。1時間単位で取得する場合は、1時間を超える部分については15分刻みで取得できることとする。

(協議)
第17条 この協定の遂行にあたって、運営上の問題が生じたときは、横浜市立大学及び金沢八景地区事業場の双方で誠実に協議する。

(有効期間)
第18条 この協定の有効期間は、平成22年6月30日から平成23年3月31日までとする。

   平成22年6月30日

   公立大学法人横浜市立大学
   理事長 本多 常高

   横浜市立大学教員組合
   委員長 山田 俊治

 前回の組合ニュースでも触れましたが、この制度について、疑問等がある方は職員組合までご相談ください。非組合員の方でももちろん構いません。ただ、最初に触れたように、本学における制度設計・運用と厚労省の法令解釈との間にはずれがあり、その辺りについての実際の取得の際の問題については、非組合員の方に対してできることは、労働組合としての制度上の限界から組合員に対するものとは違ってきてしまうかもしれません。できればこの際に組合にご加入いただければ組合としても大いに助かります。今回の交渉でも明らかなように、組合員の数の多寡はどうしても当局との交渉力に影響します。一人でも多くの方が組合に加入することが結果的に職員全体の権利や立場を守ることにつながります。よろしくお願いします。


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2010年10月7日木曜日

育児・介護休業等に係る労使協定締結等について

 数回にわたってお知らせしてきた改正育児・介護休業法に対応した学内の制度改正についてですが、先週、最後まで残っていた福浦キャンパスについても労使協定が結ばれ、法改正に対応した育児休業、介護休業、育児短時間勤務、子の看護休暇、介護休暇等の利用が可能になりました。

 労使協定に関しては、総てのキャンパスで労使協定を締結、労基署に提出後に人事より職員組合に対して協定本文のデータの提供を受ける約束になっていますが、10月7日時点ではまだ連絡がありません。データの提供があり次第、改めて皆様には組合ニュースでその内容をお伝えしますが、今回はとりあえず、関連の情報と注意すべき点についてお知らせします。

 まず、育児休業・介護休業等については、これら各キャンパスにおける労使協定以外に、常勤職員の場合、職員就業規則と横浜市立大学職員の育児・介護休業等に関する規程、横浜市立大学職員任期規程非常勤職員の場合、非常勤就業規則と横浜市立大学非常勤職員の育児・介護休業等に関する規程が関連の規則、規程となります。ただし、10月7日時点では制度改正に対応して新設・改正されたものはwebの規程集上にはまだアップされていません。また、他の問題と同じく、契約職員に関しては常勤職員として扱うよう求めましたが、結局非常勤職員としての扱いとなってしまっています。

 今回の制度改正に関しては、これまで職員組合ニュース上で、多くの問題点が含まれていること、また、八景キャンパスと福浦キャンパスに関しては労使協定の締結に当たる両キャンパスの過半数代表者が職員組合の見解にほぼ同意する形で当局と交渉を行っていることをお伝えしてきました。結果的には、当局側は職員組合及び八景、福浦の両キャンパス過半数代表者による問題点の指摘に対して、ごく一部の法律の引用上の明白な誤りを除いては修正には応じず、また、厚労省の法解釈に則った制度運用等を行うことを確認する補完文書の作成にも同意しなかったため、労使協定及び関連の規則、規程には多くの問題点が残っています。

 このため、これらの制度の利用を考えている方、予定している方には、特に以下の点について注意することをお勧めします。

各キャンパスの労使協定(キャンパスによって異なっている可能性があります)と関連の規則、規程のうち、自分の利用しようとしている制度の該当部分総てに目を通して下さい。これら関連文書の記述は一部重複し、逆に一部はどこかの文書にしか書かれていないものがあります(この辺りについても整理・修正を要求したのですが)。ある文書だけを見て判断すると、本来利用可能な制度を利用できないと思ってしまうようなこともありえます。

改正育児休業・介護休業等に関する法令及び法令に関する厚生労働省の解釈のうち、自分が利用しようとしている制度の関連部分についても面倒ですが出来るだけチェックして下さい。具体的には、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(抄)」、「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」、「通達(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について)」、「育児休業や介護休業をすることができる期間雇用者について」などで、これらは総て以下の厚生労働省の「育児・介護休業法の改正について」というページからダウンロードできます。ただし、ご覧になれば分かりますが、これら総てを合わせるとページ数は100ページを軽く超えます。プリントアウトするよりは画面上で検索をかけて必要部分をチェックする方がいいと思います。このような複雑でわかりにくいものに制度の対象者が直接当たる必要がない様、職員組合としては問題点の修正と厚労省の法解釈に則った制度運用を行うという原則の確認を行いたかったのですが、残念ながら結果は前述の通りです。特に、常勤の教職員が任期をまたいで育児休業等を取得しようとする場合の取扱(例:3年任期であと1年で任期が切れる人が、現在1歳の子供が3歳になるまで育児休業を取得しようとする場合)などは、当局側の「横浜市立大学職員任期規程」における解釈と厚労省の「育児休業や介護休業をすることができる期間雇用者について」等での解釈は相当な違いがあり、注意が必要です。

以上も含め、制度の利用に関し質問・相談等のある方は、職員労働組合までご連絡ください。ただ、職員組合でも手順としては上記の①、②のチェックを行う点は全く同じですので、即答は難しく、お時間をいただくことになると思います。


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相次ぐ固有職員の退職と欠員不補充の問題

 平成17年の法人化以降、固有職員の採用を進めて来た本学ですが、法人化時の混乱と不完全な制度設計、その後の運用の混乱等、労働条件・職場環境の悪化にともない、教職員の退職が相次いでいます。また、年度途中で退職者が出た場合にも、すみやかな人員の補充等の適切な対応はなされず、多くの現場に負担を強いる状況になっています。

 この度も、アドミッションズセンターの固有職員が8月末をもって退職して他大学へ転出しましたが、その欠員の補充がなされないまま、1ヶ月の時が過ぎています。退職の2ヶ月前に申し出があり、十分な時間があったにもかかわらず、また現場からの強い要望にもかかわらず、未だに具体的な対応の様子が見られません。

 アドミッションズセンターでは、昨年も年度途中での固有職員の退職がありましたが、臨時の人材派遣によるその場しのぎの対応しかなされず、非常に負荷のかかる業務を強いられました。

 人員がだぶついている状況ではない事は明白であるにもかかわらず、退職者の業務内容の詳細を報告させるなど、だたでさえ欠員によって繁忙化した現場に対して余計な負担をかけるような要求もおこなわれ、およそ現場の苦労を考えているとは思えない対応がなされています。

 まるで、退職者を引き留めなかった現場に責任があり、その尻ぬぐいは現場ですべきとでも言うのでしょうか? まったくもって、ひどい話です。

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第4回大学人サミットやまなしカレッジ2010

 10月23日(土)、24日(日)、山梨学院大学で「第4回大学人サミット」が開催されます。「大学人サミット」は、3年前に山形大学を会場に「大学職員サミット」という名前で始まり、全国の大学職員を中心に学生や教員も加わる形で毎年開催されてきましたが、今年度からは「大学人サミット」と名前を変え、国公私立という設置形態の別や、教員、職員、学生という立場の違いを超えて広く大学について語り合おうという趣旨で開かれるものです。

 公立大学関係者では、筆者の前任校でもありますが岩手県立大学が毎年「大学自慢コンテスト」という企画で発表している他、公立大学協会の事務局長もコメンテーターとして参加しています。プログラムの詳細等については、会場校である山梨学院大学のウェブサイトの「第4回大学人サミット やまなしカレッジ2010のご案内」をご覧ください。

 参加申込の期限(9月24日)は既に過ぎていますが、まだ申込は可能だそうです。

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良い中期目標?悪い中期目標? 国立大学法人の場合

 本学の中期目標・中期計画に関しては、過去の職員組合ニュースでお伝えしたように、4月5日に本学理事長宛に意見書の提出を、さらに8月30日には上部組織である横浜市従の委員長と連名の形で横浜市長宛に申し入れを行いましたが、前者については残念ながらあっさり黙殺され、後者については返答待ちの状況で、現段階ではこれ以上できることはあまりなさそうです。そこで、今回は少し視点を変えて、本学より1年早く法人化されたため、既に第2期の中期目標・中期計画期間に突入している国立大学法人の中期目標、その「基本的な目標」部分の事例について紹介したいと思います。

 中期目標自体は、国立大学法人も公立大学法人も設置者(国立大学法人の場合は文部科学大臣、公立大学法人の場合は設置自治体の長)が大学の意見を聴いた上で決定するものであり、国立大学法人の場合、総て文部科学大臣が決定するのだからどれも似たようなものになるのでは、と思われるかもしれませんが、各大学の意見は相当程度尊重されているのか、結構大学により違いがあります。

 と言っても、旧帝大は何から何まで全部やりますというフルセット型であまり参考にはならず、また、単科大学も、旧帝大とは逆に教育研究分野が単一であるがゆえにミッションや投入しうる経営資源が限定されていることから、ここでは地方国大について取り上げたいと思います。ただし、地方国大についても全部見るのは大変なので、ここならいいものになっているのでは、という幾つかの大学と何をやっているのかさっぱり聞こえてこないな、という大学を幾つか眺めてみた結果についての紹介です。先入観なしで見てもらった方がいいだろうということで、大学を特定できる情報は伏せてあります。

(A大学)
 国立大学法人A大学(以下「A大学」と称す。)は、我が国の先端科学関連の研究や産業の拠点の一つである○圏○部に立地する特徴、さらには農業の活発な地域としての特色を生かし、人文・社会科学、理学、工学、農学、教育学の各分野における高等教育と、基礎・応用両面にわたる多様な研究活動、さらにそれらを基礎として地域貢献を行う総合大学として大学の統合性を強め、同時に3キャンパスの立地を生かして多彩に発展することを目標とする。

教育
 A大学は、世界水準の教育を行う大学としての機能を発揮し、教育に重点をおき、総合力を生かして一貫した教養教育と専門教育を行い、豊かな人間性と幅広い教養をもち、国際感覚を身につけた職業人を育成する教育を行う。また、大学院教育を重視し、より幅広く豊かな学識を持ち、持続可能な社会と自然保全の担い手を育成する教育を行い、高度専門職業人や研究者を養成する。

研究
 A大学は、世界水準の研究を行う大学としての機能を発揮し、サステイナビリティ学研究やフロンティア応用原子科学の研究、個々に育成された先進的研究など、多様な学術研究を組織的に創出・育成して、国際的な水準の成果を発信する。研究の継承と発展の観点から、若手教員と大学院生の育成を積極的に行う。

地域連携・国際交流
 A大学は、高い社会貢献機能を有する大学として、地域と連携した教育と研究を推進し、その成果を積極的に社会に発信し還元して、地域の教育・文化の向上、環境保全、産業振興、地域社会の発展に寄与する。教育と研究の成果を広く国際社会に向けて発信し、国際的な交流と共同研究を推し進め、特にアジアとの国際交流を推進する。

(B大学)
 B大学は,地域に立脚する総合大学として,教育,研究,社会貢献を一体的に推進し,「A大学憲章」(平成17 年3月制定)に謳う「学生中心の大学」「地域にあって輝く大学」の実現を目指す。第二期中期目標期間においては,(1)学生の人間的成長に重点をおいた教育の推進,(2)地域の発展に貢献できる国際性を備えた人材の育成,(3)特色ある先端的研究拠点の形成・強化を重要課題として,以下に各領域の基本目標を掲げる。

  1. (教育・学生支援) 全学的に一体感のある教育改革を推進し,正課教育及び正課外教育において学生の主体的・協同的な学びを充実させる。
  2. (研究) 環境・生命に関わる世界レベルの研究を一層活発に展開するとともに,質の高い多様な研究を進展させる。
  3. (社会貢献) 地域連携・産官学連携を強化・拡充し,地域活性化に資する人材育成と学術研究を推進する。
  4. (国際化・国際貢献) 国際社会で活躍できる人材を育成するとともに,アジア,アフリカ拠点国への教育研究支援を進める。
  5. (管理運営・組織) 大学の自律性を高めるために,不断に組織運営の改革を図るとともに,人材育成マネジメントを充実させる。
  6. (キャンパス基盤整備) 地域の「知の拠点」にふさわしい,機能性,安全性を備えた教育研究環境を創出する。
  7. (財政) 自己収入の増加及び経費の抑制によって,財政の健全性を維持・向上させる。
  8. (附属病院) 地域医療の中核機関として,医療の質の向上に努めるとともに,経営の安定化を図る。
 さて、皆さんはどのように感じられたでしょうか。少し情報を追加すると、この2つの大学はB大学が医学部を持っていることを除けば、学部数や分野、規模等、いずれもほぼ似通っていて大きな違いはありません。

 A大学の場合、この部分だけを見る限りでは、まるで事務局のスタッフが最初に作成した当たり障りのない検討用の下案がそのまま最終案になってしまったような印象を受けます。どの大学にもあてはまりそうな文章で、優先順位や重点目標、具体的な方向性・内容などがここからは殆ど読み取れず、どの程度まで自大学を巡る外部環境・内部環境について正確に認識し、どの程度の熟度で検討がされたのかも、ここに含まれる情報からは判断できません。

 次に、B大学については少しだけ詳しく見てみたいと思います。  例えば1.(教育・学生支援)の部分では、主体的・協同的な学びを正課教育だけでなく、正課外教育も含めて充実するとしています。これは3行目にある「(1)学生の人間的成長に重点をおいた教育の推進」(下線部筆者)という重要課題に対応して、その実現に必要な適切な方策を大学が理解し、選択して実行しようとしていることがはっきりとしたメッセージとして表現されています。FDに関しある程度の知識や経験を持つ人であれば、「主体的・協同的な学び」という表現から幾つもの授業方法や授業形態、カリキュラムの構成が頭に浮かぶと思います。

 2.(研究)についてはどうでしょうか。挙げられている2つの分野は、B大学では既にCOEや科学技術振興調整費などに採択されるなどして実績を挙げているものです。それを一層推進する方針が示されています。さらにこれらの重点研究分野に力を入れる一方で、「質の高い多様な研究」という表現で、それ以外の大学の抱える研究分野の研究活動を維持・発展させることも表明しています。環境・生命という2本の木が周囲に何もない状態で立っているのではなく、広い裾野を持った研究活動を大学として維持するという選択が示されています。このあたりも教育と研究の関係や基礎研究と課題解決型研究に関する論争などを踏まえた上での決定であることを感じさせます(もっとも、意地の悪い見方をすれば国立大学にありがちな学部の縦割り、独立性から来る横並びの結論が書かれているだけ、という可能性もありますが)。

 3.(社会貢献)に関しては、「地域連携・産官学連携を強化・拡充」というのは地方国大としてはありきたりな表現ですが、「地域活性化に資する人材育成と学術研究」という部分については、B大学は国立大学の中でもユニークな活動を色々と行っていて、各種の競争的資金も獲得しています。これも実績に基づき、それをさらに発展させることを表明している部分です。

 もう一つ、4.(国際化・国際貢献)ですが、これについても複数の競争的資金を獲得するなどの実績があります。ただし、資金やマンパワーがものを言う分野であり、旧帝大や一部私大などに比べればどうしても量的には見劣りがしてしまい、他の分野とは違って、影が薄い印象を受けます。これに関しては「アジア,アフリカ拠点国への教育研究支援を進める」という方向性を打ち出して、4月以降、早々にアジア地域の自治体との協定に基づく行政官や大学教員等の受入れを行うなど、実際に特色のある取組に着手しています。

 5.(管理運営・組織)については、「人材育成マネジメントを充実」とありますが、これも既に数年前からSDについて独自の取組に着手していて、裏づけのないことを書いているわけではありません。

 このあたりにしておきますが、要するにB大学については、挙げられている項目やそこで使われている単語・表現等から見て自大学を巡る外部環境・内部環境について相当なレベルでの理解と分析が行われて、その上で、合理的と思われるような選択がなされ、かつ実施についても相当の裏づけがあること、言い換えれば戦略的な判断と決定が行われているらしいことが、たったこれだけの文章からも伺えます。

 一方、A大学に関しては、そういったことは紹介した部分からは全く判断できません。もっとも、それがイコール戦略を欠いていることの現われだとまでは言いきれませんが。単に中期目標という文書には反映されていない可能性(学部間の対立etc.で)や戦略計画の策定に慣れていない結果(この点に関してはどの国立大学、公立大学も条件は同じですが)である可能性なども考えられます。また、個人的にはそもそも大学法人の中期目標・中期計画という枠組みは、必ずしも戦略計画の策定や表現に向いているとはいえない部分があるのではないかとも思っています。

 それでも、6年間の基本的な方向性を定める文書の、そのまた基本的な部分でこれだけの熟度の違いがあるというのは、6年後の成果の違いについての懸念を抱かせずにはいられません。GPなどの実績から、地方国立大学間に相当の格差が生まれつつあるのではないかという印象は持っていましたが、その一部は戦略立案能力の差に起因しているのかもしれないと疑わせる事例です。  最後に、ある公立大学の中期目標案の「基本的な目標」を掲載しておきます。こちらの判断については皆様にお任せすることとします(とは言うものの、語尾が命令形というのは、らしいと言うか珍しいと言うか……。正しく日本唯一ではあるでしょうが)。
(C大学)
 C市立大学は、知識基盤社会の進展の中で、C市が有する大学として、発展する国際都市・Cとともに歩み、市立大学の国際化を進め、グローバルな視野をもって活躍できる人材を育成すること。
 研究成果や知的財産を活用してC市を始めとした大都市の抱える課題、C市民の生活に密着した課題等に対して積極的に取り組むこと。
 この2つの目標を実現するため、「教育重視・学生中心・地域貢献」という基本方針のもと、C市立大学の自主的・自律的な運営と更なる発展を目指して、第1期中期目標期間中に整備した組織・体制の強化と、教育・研究を一層活発に進めるための取組について具体的な中期目標を定める。
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11月までの職員組合への連絡について(再掲)

 9月24日(金)から10月一杯まで、組合のアルバイトの書記さんが事情により休暇を取られる関係で、基本的に電話・FAXでの職員組合への連絡は出来なくなります。ご注意ください。連絡は電子メールないし各キャンパスの執行委員までお願いします。

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