2011年4月20日水曜日

職場集会開催のお知らせ

 新年度第1回の職場集会を以下の日時で開催しますので、お知らせします。

八景キャンパス: 5月18日(水) 12:05~12:55
 (本校舎1階 職員組合事務室の隣の組合会議室)

福浦キャンパス: 5月19日(木) 12:05~12:55
 (臨床研究棟2階 A209号室)

 非組合員の方の参加も歓迎します。本学の労働環境や労使関係、大学職員としてのキャリア形成等に関心をお持ちの方、一度覗いてみてみませんか。飛び入り参加も可能ですが、5月16日(月)までに参加の申込をいただいた方には、組合でお弁当を用意します。事前申込は ycu.staff.union(アット)gmail.com までお願いします。


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医学部長解任問題

 先週4月16日の新聞各紙に、本学の医学部長が郵便で解任を通知され、それに対して医学部長は横浜地裁に地位保全の仮処分を申し立てた、という記事が掲載されました。

【神奈川新聞】 任期半ばの学部長解任は不当、横浜市大医学部長が地位保全求める/横浜地裁

【毎日新聞】 横浜市大:解任通知受け医学部長、地位保全申し立て

【読売新聞】 学部長解任「理由ない」

 各紙の記事を照らし合わせても情報量は僅かで、かつ大学側は取材に対して事実上回答を拒否しているため、詳細も事実関係の如何もろくに分かりませんが、職員組合がかねてから懸念、指摘していた問題と関連してくる可能性もあり、疑問点等について記しておきたいと思います。

 まず、2学部しかない学部の一方の長が、それも郵送による通知で解任を宣告され、それに対して仮処分を申し立てるという、どう考えても異常な事態であるのに、これまでのところ学内には一切何の情報もありません。人事の発効日である5月1日以降も何の説明も無いとしたら、いくら本学のいわゆる部局長人事が上からの一方的な任命によるものだとしても、いささか問題だと思われます。

 次に、報道によれば、学部長側は次期理事長の擁立を画策したと疑われたのが原因ではないか、という趣旨の説明をしていますが、本学の場合、地方独法の公立大学法人に関する規定の理事長と学長を別にする場合の手続きにより、理事長は市長によって一方的に任命される存在です。大学にも市にも「理事長選考委員会」だの「理事長候補推薦委員会」だのといった類の組織は存在していないはずです。総ては市長の一存で決定されるものであり、論理的には、次期理事長を擁立しようとするなら、最終的には市長自身に働きかけるしかありません。そんなことが起こった、あるいは起ころうとしていたのでしょうか。

 3番目に、職員組合としては関心を持たざるを得ないのですが、学部長に郵送された解任通知書には、解任の理由として「理事長に対する背信行為及び法人に対する信用失墜行為」が挙げられていたと各紙の報道には書かれています。

 本学における教職員に対する各種処分の際の事実上のガイドラインとして機能していると思われるものとして「懲戒処分の標準例」という文書が存在していますが、この文書は、横浜市の同種の文書に幾つかの項目を大学独自に付け加えて、一昨年平成21年の年末に職員組合に対して提示されたものです。職員組合では、特にこの大学独自に加えられた項目のうち、まさに今回理由として使われたという「信用失墜行為」について、その意味するところが曖昧で恣意的な運用が可能であること、「信用失墜行為」に対する処分が懲戒解雇から戒告までと、いわば総ての処分があり得るとされていて基準も明確でなく、教職員は「信用失墜行為」という曖昧な言葉で懲戒解雇のリスクにさらされ、組織内の正当な言論の自由までが脅かされる危険性があることを懸念し、平成21年12月22日付で理事長に対して質問書を提出しました。

YCU Staff Union:「懲戒処分の標準例に関する質問書」(2009/12/24)

 これに対して、平成22年5月7日にようやく回答が寄せられましたが、その内容は、まず「信用失墜行為」とは何を指し誰が判断するのかという問いに対しては、「倫理規程に反しなくても、信用失墜させた場合は懲戒処分となり、理事長からの付議に基づき、懲戒審査委員会で処分の要否や内容の審査を行った上で、最終的には理事長が発令する」、また、具体的にどのような行為がどの処分に当たるのか、基準は何かという問いに対しては、「信用失墜に至る具体的事案の個々に対する基準はない。個別の処分内容については、基本事項の各項目に照らし判断することになる」という、要約すれば経営側が総て判断するとしか言っていない回答でした。

YCU Staff Union:「懲戒処分の標準例に関する質問書」に対する回答(2010/5/12)

 今回の学部長解任劇が、職員組合が1年以上前に危惧した事態の始まりなのか、懸念を抱きつつ、今後の情報を待ちたいと思います。


【追記】
横浜市大医学部長解任、「全く身に覚えなし」
地位保全を求め仮処分を申立、弁護士が事の経緯を語る
2011年4月18日 橋本佳子(m3.com編集長)


横浜市大医学部長の解任、「人事裁量権の逸脱」
全国医学部長病院長会議の有志が声明、
「大学のガバナンスが機能せず」
2011年4月21日 橋本佳子(m3.com編集長)


横浜市立大医学部長解任で、裁判所が和解勧告
「現時点では、新医学部長の発令はしていない」
2011年4月28日 橋本佳子(m3.com編集長)


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2011年4月15日金曜日

東日本大震災に伴う業務への影響について

 今回の震災で被害にあわれた方、また、御家族等が被災された方には深くお見舞い申し上げます。

 本学に関しては、直接的な被害は生じなかったものの、首都圏の他大学同様に計画停電の開始以降、教職員の通勤や停電と復帰に伴う施設・設備への対応などで業務体制への影響が生じています。どうやら今回の計画停電は一旦事実上の終了となるようですが、冷房による需給の逼迫が予想される夏場の見通しは、依然不透明な状況です。

 既に職員組合で直接把握できる範囲においても、ある部署で勤務体制に問題が生じている懸念があることから、人事課に対して確認と対応を求めているところですが、それ以外でも問題があるような場合、遠慮なく職員組合までご相談ください。今回の震災の影響は長期に渡ることは確実であり、職員、特に全員が何らかの任期制の下にあるプロパーの事務系職員に対しては安全配慮義務が軽視される傾向がある職場ですので、職員組合としても注意を払っていきたいと考えています。

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被災学生への支援と公立大学

 今回の震災では、直接の被害を受けた東北、茨城の各県の公立大学に止まらず、それ以外の公立大学においても被災地出身の在学生、新入生に対する支援が課題となっています。

 この問題では、既に多くの国立大学、本学も含めた公立大学、私立大学で授業料や入学金の免除、大学によってはさらに支援金の給付などの支援が行われることが報道されています。

 ただ、これらの措置のうち、学費の減免措置に関して少し気になる点もあります。

 設置形態の如何に関わらず、学費の減免には裏づけとなる財源が必要となります。国立大学・私立大学の場合、内部資金や独自基金などとは別に、文科省による学費減免のための支援があり、今年度予算については、国立大学・私立大学あわせて昨年度から約38億円の増額、合計約274億円の支援が行われることになっています(4月12日の新聞各紙の報道によれば、今回の震災を受け、更に約6千人分の授業料減免と約5千人分の無利子奨学金貸与用として約80億円が補正予算で追加されるとのことです)。これに対して、公立大学には国からの支援はなく、自己資金と設置自治体からの援助で手当を行う必要があります(なぜ公立大学だけが文科省の補助の対象外なのかという問題は、公立大学のあり方や存立基盤を考える上では非常に重要ですが、とりあえず今回は措きます)。

 公立大学の場合、大阪市大、首都大などを除けば殆どの大学が中小規模で、大学自身の財政上の余裕は元々余りありません。また、設置自治体からの交付金は、自治体財政が悪化する中、①そもそも教育という事業は費用対効果がわかりにくい、②さらに教育分野の中で見ても、高等教育は初等中等教育とは異なり、制度上、自治体にとっての義務的な事業ではない(たとえあえて自ら設置した大学であっても)等、自治体が行う他の業務との間での予算配分上の競争という点からは必ずしも十分な額は望めない、まして学費免除のための上積みなどは…というのが大方の状況でしょう。被災地である岩手、宮城、福島などの公立大学は別として、被災地以外の公立大学においては、被災地出身学生への学費免除措置は、その対象学生がある程度の数になった場合、経営的に余裕のない私学同様に「ない袖は…」ということになりかねません。

 その一方で、財政的な負担をあまり伴わずに出来る被災学生への支援措置という点で、山口県立大学及び公立大学協会が注目すべき対応を打ち出しています。一部の国立大学、私立大学でも同様の措置が発表されていますが、山口県立大学が、他大学の被災学生に対して、試験料、入学料、履修料を免除の上、科目等履修生として受け入れ、学生の在籍大学において取得単位として認められるよう働きかけるという対応を3月28日に表明しました。さらに、公立大学協会が山口県立大学の対応を受けて加盟校に対して同様の措置を取るよう呼びかけ、30大学がこれに賛同した模様です。また、公立大学協会は国大協、私大連に対しても連動を呼びかけたとのことです。

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20110329-OYS1T00206.htm
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720110401ecac.html
(菊池芳明)

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(訂正):中教審答申「グローバル化社会の大学院教育」と産経新聞の誤報(?)、あるいは「バスに乗り遅れるな」

 前回の組合ニュースで書いた中教審の大学院教育に関する答申についての記事ですが、非常に初歩的な間違いをやらかしてしまいましたので訂正します。

 答申内容の具体化に向けた事業として「博士課程教育リーディングプログラム」の紹介をしましたが、この採択件数について、「オールラウンド型17件、複合領域型10件、オンリーワン型5件」と書きましたが、正しくは「全17件 オールラウンド型2件、複合領域型10件、オンリーワン型5件」です。単に、最初に出ている合計採択件数をオールラウンド型の採択件数と読み間違えて、そのまま気づかなかったようです。

 因みに、局別の詳しい予算資料を見ると、オールラウンド型は1件当たり3億円、複合領域型は1件当たり2億5千万円、オンリーワン型は1件当たり1億5千万円が計上されています(実質半年で!)。さらに支援期間は最大7年とされていますから、予定通りにいけば、この事業に採択された大学院とされなかった大学院の7年後の格差は、投資額から見る限り相当大きなものとなるでしょう。

 答申が意図し、「博士課程教育リーディングプログラム」が誘導・促進しようとするアメリカ型大学院への転換がそう簡単にいくかどうかについては、前回疑問点等を書いてみましたが、しかし、この予算額、支援期間から見る限り、文科省自身は相当本気で、一部の厳選された大学院においてこの方向を進めるつもりのようであり、これは言い換えれば大学院における機能分化が政策的に強力に推進されることを意味しています。民主党の参院選の敗北に加えての今回の震災で、予算自体は成立したとは言え、それが本当に実施されるのかは不透明になってしまっていますが、文科省がいわば大学の機能分化を、内部組織や教育課程のあり方まで含め、文科省自身の設計図に基づいて本格的に推進しようとした最初の年ということになるのかもしれません。
(菊池芳明)

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