2015年11月5日木曜日

第6回 「大学職員としての能力向上とネットワーク - 学会、研究会、社会人大学院 -」 のご案内

職員組合主催「大学職員基礎講座 -大学と社会に貢献できるプロフェッショナルとなるために-」の第6回 「大学職員としての能力向上とネットワーク - 学会、研究会、社会人大学院 -」開催について、ご案内します。

この連続講座は、最初の案内にも書いたように横浜市立大学における「職員研修の大学職員の固有性に係る領域の欠如」を補う目的で企画したものですが、職員がその業務に係る知識、能力を向上させるための場は別に自大学内に限られるわけではなく、最近は学外にも多くの機会と場が存在しています。

例えば、法人化後の初代理事長予定者であった孫副氏が初代会長を務めた職員が中心の大学行政管理学会、30 年以上の歴史を持つこれまた職員が中心となった高等教育問題研究会(FMICS)、桜美林大学 大学アドミニストレーション研究科を始めとする大学職員の養成・高度化を目的とする大学院、更にはこれらの大学院やセンター(e.g. 筑波大学 大学研究センター)などにより提供されている非正規プログラムなどです。

学内における人材育成システムは、個別大学の経営方針や経営能力に左右されざるを得ませんが、これら学外での機会はどの大学の職員にも広く開かれているもので、所属大学による学習機会の差は(個別大学の学内人材養成システムの差よりは)大きくはありません。

今回は、これら大学職員の知識、能力向上のための組織団体、教育プログラムについて紹介します。

11月18日(水) 12:15~12:45
金沢八景キャンパス 職員組合事務室

11月25日(水) 12:15~12:45
福浦キャンパス A104教室



* 資料準備の都合上、開催日の前々日までに ycu.staff.union(アット)gmail.com までお申し込みください。

* 事前にお申し込みいただいた方には、組合員・非組合員に関わらず組合でお弁当を用意します。

* 組合事務室は9月16日から本校舎の西側に移転しています。詳しくは http://ycu-union.blogspot.jp/2015/09/916.html をご覧ください。

* 福浦キャンパスの会場が同じ場所がなかなかとれず毎回違っています。 ご注意ください。

* 組合員以外の方は、資料代として50円ご用意ください。


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ドラッカー 『マネジメント』より

悪い組織の症状

「まず第1に、頻繁に見られる症状は、マネジメント階層の増加である。(中略)階層の増加は、組織内の相互理解と共同歩調を困難にする。目標を混乱させ、間違った方向に注意を向けさせる。数理的な情報理論によれば、一つの中継点の追加によって、伝達される情報は半減し、雑音は倍増する。」

「第2に多くみられる症状は、組織構造に関わる問題が頻繁に発生することである。(中略)典型がメーカーにおける製品開発活動である。マーケティング部門は、それが自分たちの仕事だとする。研究開発部門も自分たちの仕事だとする。(中略)同一の問題が何度も起こるのは、典型的職能や「ラインとスタッフ」などの昔ながらの組織論を考えもなしに使うからである。(中略)繰り返し出てくる組織構造上の問題を、紙の上で、小さな箱の絵を機械的に動かすことによって解決しようとしてはならない」

「第3に、同じように多く見られる危険な症状が、要となる者の注意を重要でない問題や的外れの問題に向けさせることである。(中略)縄張り争いはもちろん、態度、礼儀、手続きに関心を向けさせるようでは、人は間違った方向へ進む。」

「あまりに大勢の人間を集める会議を開かざるを得なくなることである。これが第4の症状である。(中略)トップマネジメントの数人は別として、マネジメントの人間の多くが、自らの時間の4分の1近くを会議に使うようでは、組織構造が悪いというべきである。会議が多すぎるということは、仕事の分析が十分でなく、仕事の大きさが十分大きくなく、仕事が真に責任を伴うものになっていないことを表している。」

「第5に、組織の間違いは、調整役や補佐役など実際の仕事をしない人たちを必要とするようになることに現れる。活動や仕事が細分化されすぎている証拠である。あるいは、活動や仕事が明確な単一の成果に焦点を合わされることなく、あまりにいろいろなことを期待されている証拠である。」

慢性病

「今日多くの組織、特に大企業が組織病という病いにかかっている。組織中で組織構造を気にしている。常にどこかで組織改革を行っている。(中略)次から次へと組織改革が試みられる。(中略)これもまた悪い組織の典型である。組織病は、組織構造の基本をおろそかにしたときに発症する。(中略)組織改革は気軽に行ってはならない。組織改革は、いわば手術である。たとえ小さなものであっても、手術には危険が伴う。安易な組織改革は退けなければならない。」

ドラッカー,『マネジメント(中)』, 上田惇生訳, ダイヤモンド社, 2008 年, P236-242


  • 原著は 1973 年出版。古典は大事、というべきか、それとも原理、原則は大事というべきか(そして滅多に守られない)。

  • 企業組織を念頭にしたものなので、大学、特に教員組織にそのまま適用するのは間違いのもと、服用注意。事務局、あるいは経営陣と事務局を対象とする場合は有用。ただし、もっと初歩的なレベルでの問題として説明可能な場合も多い。
(菊池 芳明)

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2015年10月7日水曜日

第5回 「大学職員に必要な“業界知識”(3) -日本の公立大学の特色と危機- 」のご案内

職員組合主催「大学職員基礎講座 -大学と社会に貢献できるプロフェッショナルとなるために- 」の第5回 「大学職員に必要な“業界知識”(3) -日本の公立大学の特色と危機- 」開催について、ご案内します。

前回、前々回は大学の設置者に関わらない共通の問題について取り上げてきましたが、今回は自治体等によって設置される「公立大学」について、歴史や制度、現在の高等教育システムにおけるポジションなどから、その特色と将来について考えてみたいと思います。

日本の公立大学数は、新制大学の発足以降、昭和の間は30数校で推移を続けてきましたが、平成に入ると新たに設置が相次ぎ、平成27年度では86大学と国立大学と同数、大学全体に占める比率では約11%になっています。

この「公立大学セクター」を構成する個々の大学を見ていくと、例えば入学定員ではわずか20人の情報科学芸術大学院大学から1500人を超える首都大学東京まで、設置自治体の人口では3万余の都留市から1000万を超える東京都まで、非常に多様性に富んでいます。上で「自治体『等』によって設置される」と書きましたが、大学の設置者も、自治体、一部事務組合、自治体によって設立された公立大学法人、自治体によって設立された広域連合によって設置された公立大学法人(!)と様々です。そして、特に自治体の制度設計、運用の裁量の余地の大きい公立大学法人制度の導入は、各公立大学の在り方に大きな差異をもたらしています。

例によってごく限られた時間なので、全体を概観するのではなく、いくつかのポイントに絞って話を進めたいと考えています。

10月14日(水) 12:15~12:45
金沢八景キャンパス 職員組合事務室

10月28日(水) 12:15~12:45
福浦キャンパス A103教室



* 資料準備の都合上、開催日の前々日までに ycu.staff.union(アット)gmail.com までお申し込みください。

* 事前にお申し込みいただいた方には、組合員・非組合員に関わらず組合でお弁当を用意します。

* 組合事務室は9月16日から本校舎の西側に移転しています。詳しくは http://ycu-union.blogspot.jp/2015/09/916.html をご覧ください。

* 都合により福浦キャンパスでの開催までの間隔が2週間開いています。ご注意ください。

* 組合員以外の方は、資料代として50円ご用意ください。


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2015年9月10日木曜日

組合事務室移転について(9月16日より)

 来週9月16日(水)に組合事務室の移転を行います。移転先は本校舎の事務棟部分の一番奥、右側になります。事務棟の廊下に直接面しておらず、数メートルほど奥に引っ込んでいて若干分かりにくいかもしれません。また、作業に伴い16日は組合事務室との連絡が取れなくなります。ご注意ください。


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海外の試験問題から

○ 1952年から1973年の日本における経済成長の概要と成長の原因について述べよ

(ベトナム社会主義共和国 高校卒業・大学入学統一試験 2015年)

○ 次ノ命題二関シ思フ処ヲ述ベヨ

「組織並ビ二実地ノ経営ハ研修ガ為ノ教材二ハ非ズ」

○ 次ノ法則ノ名称ヲ記シ、適否ニツイテ論ゼヨ

「“ライン”ノ仕事量ハ同一ナルト雖ドモ、“スタッフ”ハ 5.17~6.56%ノ割合デ年々増大スルモノナリ」

(Miskatonic University Graduate School of Business & Law 1935年)


○ 各文について、最近10年間の政府事業で最も該当すると思われる事例を記せ

「何がしたかったのかはわかるが、やりたかったことというのはその程度なのか?」
「どうしてそうなるのかはわかるが、そうするしかないものなのだろうか?」
「何がしたかったのかはわかるが、どうしてこうなったのかはわからない」
「どうしてこうなったのかはわかるが、何がしたかったのかはわからない」
「こうするしかなかったのはわかるが、そこまでしてやる理由がわからない」
「こうするしかなかったのはわかるが、まさか本当にやるとは思わなかった」
「必要なのはわかるが、そこまで沢山作る理由がわからない」
「何がしたかったのかも、どうしてこうなったのかもわからない」

(Streeling University Graduate School of Psychohistory 1992年)

(菊池 芳明)

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2015年8月18日火曜日

残業等に関する本年度の労使間の協定(36協定)について

本年度の時間外労働及び休日労働に関する労使協定、いわゆる36協定が各キャンパスで締結されました。

本来、労働は就業規則に定められた時間のみ行うもので、1週間40時間・1日8時間という法定労働時間を超えて労働者を働かせることは出来ません(「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」労働基準法第32条)。

ただし、業務の偏りなど、やむを得ない事情の場合に対応するため、使用者と過半数組合ないし過半数代表者との間で協定を交わし、行政官庁に届けることによって労働時間の延長や休日労働を行わせることが認められています(労働基準法第36条)。これがいわゆる36協定です。

しかしながら、最初に書いたように、本来、労働は就業規則に定められた時間のみ行うもので、この条文の本来の趣旨は、手当と引き換えに時間外労働・休日労働を無制限に認めるというものではありません。時間外労働・休日労働は、あくまでも必要最小限にとどめられるべきもので、労使がこのことを十分意識した上で36協定を結ぶべきであるとされています。その意味で、36協定は時間外労働・休日労働の手当ての額を定めるためのものではなく、労働者の健康と権利を守るために時間外労働・休日労働を必要最低限にとどめるために結ぶものといえます。

法人化直後数年間の本学は、36協定を結んでいたのか、あるいは仮に結んでいたとしても過半数組合や過半数代表者の意見を徴し、その意見書を添付する等、法令上の要件をきちんと満たしていたのかどうかもよく分からないような状態でしたが、その後は少なくとも36協定自体は締結されています。

しかし、その協定が本当に守られているのか、また、そもそも協定の内容が当の教職員にどこまで周知されているのか(周知されていない36協定は無効になります)、心もとない状況が続いていました。特に前者については、最近の数年間、職員組合からも指摘と改善を求め続けてきましたが、当局側が明確な回答を行おうとしないという状態でした。

昨年度、鶴見キャンパスに労働基準監督署の調査が入り、相当厳しい指導が行われたようで、それ以降、当局側の対応も、少なくとも担当者レベルでは変化しました。協定自体の内容の教職員の周知に関しても、今回初めて、就業規則を学内ネットに掲示するという方法で教職員への周知を図る旨、職員組合の問い合わせに対しての回答がありました。

とはいうものの、36協定の存在と上に書いたような本来の趣旨について理解している職員は極めて少数と思われる状況のため、組合としても独自に本年度の八景キャンパスの36協定について紹介することにしました。なお、36協定については、労働基準法の定めにより「事業所」を単位として結ぶこととされており、本学の場合、各キャンパスごとに個別に、過半数組合が存在する場合はその代表者と、過半数組合が存在しない場合、個別に教職員によって選ばれた過半数代表者と当局側との間で締結されることになっています。基本的な内容は同じですが、他のキャンパスの教職員の方はYcu-net上で確認してください。

もっともポイントとなるのは、この協定の締結により、①法人は教職員に対して「1日4時間」、「1か月45時間以内」、「1年360時間以内」の超過勤務を行わせる権限を与えられること、②また、例えば年度末における経理業務や一般入試期間における入試業務のような、業務の性格上、どうしても短期に業務が集中するやむを得ないものに関しては、「労使の協議を経て」、「1か月60時間まで」、「1年540時間まで」、「ただし1年に6回まで」、前記の制限を超えて時間外労働をさせることができる、という点などです。繰り返しますが、①で書いた時間が本来の延長が許される範囲で、一部のやむを得ないケースに関してのみ、「労使の協議を経て」(労使の協議を経ていない場合は無効です)、②の時間までの延長が許されるというもので、これが上限になります。

その他の条項も全て重要なものなので、一通り目を通してください。そして、もし、この協定に反するような勤務をさせられているような職員の方がいらっしゃいましたら、組合までご相談ください。


時間外労働及び休日労働に関する労使協定書

公立大学法人横浜市立大学(以下「法人」という。)と金沢八景キャンパス事業場の職員の過半数を代表する者(以下「八景キャンパス事業場過半数代表者」という。)は、労働基準法第36条第1 項に基づき、時間外労働及び休日労働に関し、次のとおり協定する。

(定羲)
第1条 この協定において「時間外労働」及び「休日労働」とは、次に掲げる労働をいう。
(1) 時間外労働とは、法定労働時間を超えて行う労働及び勤務を要しない日に行う労働をいう。
(2) 休日労働とは、法人職員就業規則第40条に規定する休日に行う労働をいう。

(時間外労働・休日労働を必要とする場合)
第2条 法人は、次のいずれかに該当するときは、時間外労働又は休日労働を命ずることができる。
(1) 対外的事由により、法定労働時間内にその業務の実施が不可能なとき
(2) 入学試験、就職等の学生支援業務が集中し、法定労働時間内の勤務では処理が困難なとき
(3) 入学試験関連業務を行う必要があるとき
(4) 契約等により時期の限られた業務を実施する場合であって、作業を予定どおり進捗又は完了させるとき
(5) 専門的な技術、知識、経験等を必要とする業務を行う場合であって、その業務の処理を他の職員に代替させることができないとき
(6) 災害又は災害発生のおそれのある時など、臨時に作業を行う必要があるとき
(7) 各種システムの運用、操作等を行わなければ法人の運営に支障がでるとき
(8) 緊急を要する施設管理・補修のための業務を行う必要があるとき
(9) 決算に関する計算及び書類作成を行う必要があるとき
(10) 月内、期末等の経理事務等が繁忙なとき
(11) 各種行事又は会議の資料作成及びその他行事・会議開催に係る業務を行う必要があるとき
(12) その他前各号に準ずる事由が生じたとき

2 職員は、正当な理由がある場合には、時間外労働及び休日労働を拒むことができる。

(時間外労働及び休日労働を必要とする業務の種類及び職員数)
第3条 時間外労働及び休日労働を必要とする業務の種類及び職員数は次のとおりとする。
(1) 事務系職員 111 人
(2) 技術·医療技術系職員 5 人
(3) 医務系職員 6 人
(4) 技能系職員 0 人
(5) 教員 l23 人
(6) 非常勤職員 80 人

(延長することができる勤務時間数)
第4条 この協定によって延長することができる勤務時間数は、次のとおりとする。
(1) 1日につき4時間
(2) 1か月につき45時間以内
(3) 1年につき360時間以内

(勤務させることができる勤務を要しない日及び休日数)
第5条 この協定によって延長できる、勤務を要しない日及び休日(以下「休日等」という。)数は1か月につき4日以内とする。

(休日等勤務の時間数の限度)
第6条 前条の規定により休日等に勤務させることができる時間数は、1日の休日等につき8時間以内とする。ただし、必要と認められる場合には第4条第1項第1号で定める1日の延長時間の範囲内において延長することとするが、第4条の各号の延長時間には算入されない。

(限度時間を超える時間外労働)
第7条 法人は、第2条第1項各号に掲げる業務に従事する職員のうち、一時的又は突発的に第4条に定める限度時間を超えて業務を行う必要がある場合には、労使の協議を経て1か月60時間、1年につき540時間まで時間外労働を行わせることができる。ただし、限度時間を超えて時間外労働を行わせることができるのは、1年に6回までとする。なお、延長時間が1か月45時間を超えた場合の割増賃金率は2割5分とする。

(育児又は家族の介護を行う職員の時間外労働等の制限)
第8条 第4条、第5条及び前条の規定にかかわらず、育児又は介護を行う職員が請求した場合に は、法人職員の育児・介護休業等に関する規程第20条、第20条の2及び第21条の規定により、時間外労働及び深夜勤務を制限する。

(有效期間)
第9条 この協定の有効期間は、平成27年4月1日から平成28年3月31日までとする。


平成27年4月1日

公立大学法人横浜市立大学 理事長 二見 良之

八景キャンパス事業場過半数代表者 内山 英穂


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第4回「大学職員に必要な“業界知識”(2) -“大学改革”の動向-」のご案内

職員組合主催「大学職員基礎講座 -大学と社会に貢献できるプロフェッショナルとなるために-」の第4回「大学職員に必要な“業界知識”(2) -“大学改革”の動向-」開催について、ご案内します。

前回の教育関係法令と並んで、「外部環境」に関する情報として最も重要なものとして高等教育政策の動向が挙げられますが、近年はあまりにも多くの施策が、それも場合によっては整合性のとれないまま、かつ短期間に実施されているため、多くの大学は目先の個別施策への対応に追われています。中には自分が何をやっているのかもよく分からなくなってしまっている大学もあるのではないでしょうか。大学問題や教育問題に関する言説に正確でないものもしばしば含まれていることも、問題を一層複雑にしています。限られた時間なので、全体を十分に説明することは到底無理なのですが、いくつかのポイントに絞って、問題の整理を試みたいと思います。

なお、今回は八景キャンパスのみの開催となりますが、他キャンパスの方の参加も可能なように夜間に実施することにしました。また、会場となる組合会議室については、金沢八景キャンパスにおける組合事務室の移転の関係で職員組合としての利用はこれが最後になる予定です。


8月26日(水) 18:00~18:30
金沢八景キャンパス 組合会議室(組合事務室隣り)


*資料準備の都合上、なるべく開催日の前日までに
ycu.staff.union(アット)gmail.com までお申し込みください。

*組合員以外の方は、資料代として50円ご用意ください。


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2015年7月8日水曜日

第3回「大学職員に必要な“業界知識” (1) -教育関係法令の基礎-」 のご案内

 職員組合主催「大学職員基礎講座 -大学と社会に貢献できるプロフェッショナルとなるために-」の第3回「大学職員に必要な“業界知識”(1) -教育関係法令の基礎-」について、ご案内します。

これまでも指摘し、職場諸要求等でも当局側へ改善の要求を続けている課題ですが、公立大学の弱点の一つとして、職員の人材育成の問題が指摘されています。横浜市立大学でも、例えば新採用職員研修については、法人化当初は 2 日程度しか行われておらず、職員組合の度々の要求もあって徐々に期間が延びて 1 週間以上になりましたが、民間大企業や大手私大に比べればまだまだ短期間です。何よりも内容が社会人としての一般的内容や事務処理手続きに関するもの、自治体職員向けのものが多く、大学職員として最も肝心な「大学」の「職員」としての固有性に係る研修は不十分なままです。

今回、その点をカバーすることを目指して、全体タイトルを「大学職員基礎講座 -大学と社会に貢献できるプロフェッショナルとなるために-」として連続講座を企画しました。平日の昼休み、30分程度の気軽に参加できるものとしてみました。内容的には、経験年数 5 年程度までの若手職員を想定したものとしています。

金沢八景キャンパス: 7月8日(水) 12;15~12:45 ゼミ21教室(本校舎2階)

福浦キャンパス: 7月15日(水) 12;15~12:45 A209 教室

*八景、福浦両キャンパスで開催しますが、内容は同じです。

*資料準備の都合上、それぞれの開催日の前々日までに ycu.staff.union(アット)gmail.com までお申し込みください。

【7/2追記】 事前にお申し込みいただいた方には、組合員・非組合員に関わらず組合でお弁当をご用意いたします。

*組合員以外の方は、資料代として50円ご用意ください。

参考までに第1回、第2回(こちらについては新採用職員の方のみを対象に実施、既に終了しています)及び第4回以降に予定している内容についてご紹介しておきます。

(参考)
第1回 大学と大学職員を取り巻く環境 -大変動期の日本の大学- (終了)
第2回 大学という組織の特色と職員の専門性 -他の組織と何が違うのか?- (終了)
第3回 大学職員に必要な“業界知識”(1) -教育関係法令の基礎-
第4回 大学職員に必要な“業界知識”(2) -“大学改革”の動向- (予定)
第5回 大学職員に必要な“業界知識”(3) -日本の公立大学の特色と危機- (予定)
第6回 大学職員としての能力向上とネットワーク -学会、研究会、社会人大学院- (予定)
第7回 公立大学という職場で働き続けるために -権利と義務とセーフティネット- (予定)

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2015年6月25日木曜日

期末手当(6 月期)に関する要求と回答について

本年度の期末手当(6 月期)に関して以下の通りの要求を行っていましたが、先日、当局側よりの回答がありました。財政状況、東日本大震災への対処を理由とした国家公務員の一時的給与減額に同調する形で行われた横浜市での職員給与減額に連動し昨年度は減額となっていましたが、減額期間の終了に伴い以前の水準に戻ることになります。また、最近の組合ニュースで度々触れていましたが、法人化時の「法人固有職員の処遇は市に準じる」という合意について、その維持が危ぶまれる兆候が出てきていますが、今回については特段の問題はありませんでした。

具体的には、大学の一般職員(大学専門職を除く)、横浜市派遣職員、法人嘱託職員に対して 2.0 月分が 6 月 30 日に支給される予定です。

2015年5月20日
公立大学法人横浜市立大学
理事長 二見 良之 殿

横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

期末手当(6月期)に関する要求書

期末手当について、下記の通り要求します。本学職員および家族の生活の維持、向上並びに職員の士気向上の観点からも誠意ある回答をお願いします。


要求額 2.5月以上
支給日 6 月下旬
対象  契約職員を含めた本学職員

以上



2015年6月15日

回答

一般職員(大学専門職を除く。)及び派遣職員については、期末手当 1.25 月分、勤勉手当 0.75 月分の合計 2.0 月分を、嘱託職員については、期末手当相当額 2.0 月分を、それぞれ 6 月 30 日に支給することといたしたい。


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2015年6月17日水曜日

第2回 「大学という組織の特色と職員の専門性」 当日資料(参考)

前半 大学職員の学びと成長
出光 直樹

1.大学職員の専門性

★ジェネラリスト vs スペシャリスト ?

★定期異動の功罪
  • コミットメントを控える刹那的な仕事へのスタンス
  • ではもし、定年まで同じ部署に勤めることになったとしたら?
★非営利組織の特殊性
  • 営利組織に比べて、組織内部の環境変化は乏しい傾向。
★職場外部の学会・研究会・専門職団体の役割

★大学や大学院等での修学
  • 桜美林大学大学院 大学アドミニストレーション研究科
    平日夜間・週末開講の通学課程と通信教育課程を開設。
    科目等履修生制度もあり。
  • 東京大学大学院 教育学研究科 大学経営・政策コース
    週末と集中講義を中心に開講。
★日本の大学における、事務系職員の当面の専門性の姿は?
  • 大学リテラシー・高等教育リテラシーをベースに、ある程度の異動経験を積みながら、総合性と専門性のバランスを取っていく形か?
  • 専任職員の可半数が、何らかの職場外のネットワークに加入するようになる事が理想か。

2.出光が加入している学会・研究会など

各団体のWEBサイトへのリンクは http://www.idemitsu.info/profile.htm に。

FMICS・高等教育問題研究会(幹事1994- ) 年会費6,000円
(ほぼ毎月例会)

大学教育学会(理事2009-2012、代議員2015-) 年会費10,000円
(第37回大会 2015年6月6日(土)~7日(日):長崎大学 / 2015年度課題研究集会 、2015年11月28日(土)~29日(日): 岩手大学・岩手医科大学)

関東地区大学教育研究会(幹事2000-) 年会費1,000円
(第32回研究会 2015年9月26日(土):日本大学理工学部駿河台校舎)

オセアニア教育学会(理事2000-) 年会費5,000円
(第19回大会 2015年12月19日(土)・20日(日):東北大学)

初年次教育学会(理事2009-2011) 年会費5,000円
(第8回大会 2015年9月3日(木)~4日(金):明星大学)

大学史研究会 年会費5,000円

日本高等教育学会 年会費10,000円
(第18回大会 2015年6月27日(土)~28日(日):早稲田大学早稲田キャンパス)

IDE大学協会 年会費10,000円

大学マネジメント研究会 年会費10,000円
(各種研究会を随時開催)

大学行政管理学会 年会費10,000円
(第19回定期総会・研究集会 2015年9月5日(土)~6日(日):関西大学 / 各種研究会は随時)

日本リメディアル教育学会 年会費4,000円
(第11回全国大会 2015年8月28日(金)~30日(日):北星学園大学)

日本教育社会学会 年会費11,000円
(第67回大会 2015年9月9日(水)~10日(木):駒澤大学)

高等教育研究会 年会費5,000円
(各種研究会を随時開催)

…自分でもちょっと多すぎだとは思いますが、これがあってこその専門性の担保。


後半 人的構成から見た大学という組織の特色
菊地 芳明

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2015年6月10日水曜日

第1回 「大学と大学職員を取り巻く環境 -大変動期の日本の大学-」当日資料(参考)

前半 大変動期の日本の大学
菊地 芳明




後半 高大接続改革のゆくえ
出光 直樹

1.平成26(2014)年12月22日中央教育審議会答申 「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革について」のインパクト

★2つの新テストの導入
  • 平成31(2019)年度の夏頃に「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を新たに実施。
  • 平成32(2020)年度に現行のセンター試験を廃止し、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を導入。
  • どちらも複数回実施、CBT方式の導入検討、記述式の採用、総合型の問題の採用など、大きな変革を伴う。
★最終答申が出る前の2014年8月に全国普通科高等学校長協会が実施したアンケートでは、「基礎学力テスト」に対しては、複数回実施も含めて比較的肯定的な意見が見られるが、現行のセンター試験に変わる「学力評価テスト」については否定的評価が高い。
  • 出願資格としての性格の試験であれば複数回の受験機会は受験生にとって負担軽減につながる。しかし、主たる選抜指標に用いられる試験の複数回実施は、受験生にとっての負担軽減にはならない。
 

2.諸外国に比べると、日本においては大学入試の「選抜」機能にのみ焦点があてられ、「学力把握」の仕組みの形成が不十分。

★中等教育(高等学校)の修了資格試験が制度化されているヨーロッパ諸国。

★SATやACTといった標準テスト、高校内で大学レベルの授業科目が履修できるAdvanced Placement など、様々な学力評価指標が存在するアメリカ。



<平成26年12月22日中央教育審議会答申 「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革について」より>

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2015年4月9日木曜日

「嘱託職員の処遇に関する要求書」と法人固有職員(常勤職員・嘱託職員)の処遇に関する重大な問題について

過去、当局側への要求や当局側提案への回答、その他の問題で折に触れて紹介してきましたが、法人の固有職員の処遇に関しては、法人化時の「横浜市職員に準じる」という労使合意が存在し、市職員の処遇の変動があるたびに、その合意に基づき、基本的に大学における労使交渉を経て市と同様の変更が行われてきました。

しかしながら、法人化以降10年に渡って続いてきた、この労使合意に基づく法人固有職員の市職員に準じた処遇という原則に関して、最近になって当局側の対応に不審な点が見受けられるようになってきました。

具体的には、まず、昨年秋に横浜市において市職員の住居手当に関する大きな変更が決定され、組合としては当然、当局側から提案があるものと考えていたところ、「対応について検討しているのでもう少し待って欲しい」という反応が返ってくるばかりで具体的な提案が出ないまま年度末に至ってしまったという問題がありました。3月に入ってようやく、①市派遣職員については市職員と同様とする、②固有職員については別途協議とする、という提案がありましたが、その際に、当局側から「固有職員の処遇は市に準じるという合意については承知してない」という趣旨の発言がありました。この点については、3月24日に組合から文書を示すことで法人化時にそのような合意があったことを当局側も認めましたが、10年に渡り当該合意を前提とした労使交渉と人事制度の運用がなされてきたにもかかわらず、今頃になって「知らない」などと言う発言が出てくるのは不思議な話です。

また、3月に市において14年ぶりの嘱託職員の賃金の引上げ等の処遇改善が決定しましたが、こちらについても当局側からは何の提案もないため組合から確認したところ、「市に準じた措置を取りことは考えていない」ということだったため、3月25日に急遽、市と同様の改善を行うよう要求書を提出しました。

上記の2つの問題について、市派遣職員の住居手当の取り扱いについては市と同様とすることで既に同意しましたが、それ以外については、今後、労使交渉を行って決めて行くことになります。具体的な内容もさりながらが、法人化後の固有職員の処遇に関する原則となっていた「法人固有職員の処遇は市に準じる」という合意に関する当局側の対応が怪しくなってきたことは非常に重大な問題であり、次項で紹介する職場集会で、この問題の経緯や背景について職員の皆さんに情報提供を行うことにしました。固有職員の皆様には、ぜひ参加くださるようお願いします。

なお、一連の文書のうち、嘱託職員に関する要求書について以下に紹介しておきます。

2015年3月25日
公立大学法人横浜市立大学
理事長 田中 克子 殿

横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

嘱託職員の処遇に関する要求書

本学嘱託職員の処遇について、法人化時における「大学職員の処遇は市職員に準ずる」とする労使合意に基づき、横浜市における嘱託職員の処遇をめぐる交渉妥結内容を反映し下記の通りとするよう要求します。

  1. 現行報酬から0.23%(最低保障月額300円・日額25円)の引き上げを行うこと
  2. 横浜市と同様の条件で育児休業制度の新設を行うこと。
以上

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職場集会開催のお知らせ (4/22、23)

職場集会を以下の日時で開催しますので、お知らせします。

八景キャンパス: 4月23日(木) 12:05~12:55
(本校舎1階 職員組合事務室の隣の組合会議室)

福浦キャンパス: 4月22日(水) 12:05~12:55
(医学研究棟1階 A104号室)

上記の通り、横浜市における住居手当変更及び嘱託職員の処遇改善の法人固有職員への反映の問題を中心に、前回の職場集会以降の組合の活動状況の報告、各職場の近況、課題についての情報交換等を予定しています。非組合員の方の参加も歓迎します。飛び入り参加も可能ですが、4月17日(金)までに参加の申込をいただいた方には、組合でお弁当を用意します。

事前申込は、ycu.staff.union(アット)gmail.com までお願いします。

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2015年2月6日金曜日

「高度専門職」の大学設置基準への位置づけについて(3) -「高度専門職」から「専門的職員」への変更とメンバーシップ型雇用における「専門性」-

前回の年末の組合ニュースで、「いくら大学設置基準という省令の改正であっても本当に年度内に制度化が可能なのか、少々疑わしくなってきました」と書きましたが、年が明けてみると本当に年度内には間に合わなかった、どころか制度自体が竜頭蛇尾になりかねないような混沌とした状況になってきたようです。ということで前回の予告では昨年12月5日の大学教育部会における3人の参考人の方のうち、残るURAの方(当日の自己紹介では「元教員で現在はURA」と言われていたと思うのですが、アップされた文科省側の紹介では肩書は「教授」になっています ???)については、すでに公開されている当日資料をご覧ください。

1月15日に開催された今期最後の大学教育部会では、年度内の大学設置基準の改正による第3の身分としての「高度専門職」の創設の事実上の見送り、検討の次期部会への先送りと、現段階での制度のイメージ -①名称は「高度専門職」から「専門的職員」へと変更、②「専門的職員」の具体的な内容については、文科省がガイドラインを作成し例示するが、採用区分、勤務形態、キャリア・トラック等々の具体的な在り様は各大学の個別の判断と運用にゆだねる- の提示がありました。最終的な結論は27日の大学分科会での議論に委ねられましたが、肝心の設置基準の改正案が全くできていないのでは大学分科会としても先送り以外の選択肢はなく、次期の中教審大学分科会大学教育部会への検討の先送りが決定されました。いずれも会議資料は既に公開されています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/015/gijiroku/1354541.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/1354760.htm

このような結末になったのは、教員に相当近い、米等の大学における一部の専門職(修士以上の学位を持ち、研究活動も行い、独自の職能団体が存在して人材養成や資格認定、研修なども行う)と同様のものから、現在の日本の大学職員とあまり大きな違いはないような(ジョブ・ローテーションの運用の多少の変更でも対応できそうな)あり方までの、様々な関係者のイメージを整理し、最終的に法令を始めとする高等教育システムに整合的な形での制度設計を提示することができなかったことに主たる原因があるように思われますが、せっかく制度設計までの時間的余裕が生まれたことなので、以下、特に職員との関係において少し問題の整理を試みてみたいと思います。

まず、日本の大学の職員を巡る状況について確認すると、①護送船団方式の下、長期に渡って大学経営を取り巻く環境は安定的であり、一般的には「経営能力」が大学の存続のためにクリティカルな問題とはなりませんでした。また、②そのような外部環境に加え、大学という組織の特性の一つ、教員と職員という2つの異なる性格の集団が存在し、大学の存在目的である教育研究活動そのものを担うのは教員で、上級幹部や経営者も基本的に教員集団から選ばれていたのに対し、職員は組織の維持のための多分にルーティン的な業務の担い手であり、その地位、権限は限定的なものであったことなどから、能力という意味でもそう高度なものは求められない傾向が長く続いてきました。

しかし、外部環境は伝統的なマーケットである18歳人口の継続的な減少、冷戦の終了による国際システムの変容、国家財政の悪化、教育政策の領域にまでNPM的な思考・手法が持ち込まれたこと等々で激変し、これに応じる形で大学の「経営能力」の向上、その担い手の一つである職員の役割の拡大や能力の向上が求められるようになりました。

ここで問題になるのは「職員の能力向上」や「専門性の向上」とは具体的に何なのかという点です。

まず、職員の全般的な、あるいは一般的な能力向上という問題については、上記の様な外部環境の激変への一般的な意味での対応の必要性、そして大学独特の問題としての、教員という学内で優越的な役割を果たしてきた集団との関係に影響されていた(ある意味いびつな)能力水準の是正という面もあると考えられます。この問題に関しては、今回、問題となっている法制度上「第3の職種」を創設する云々との直接的な関連性は実は希薄です。SD(一般的な「研修」という呼び方でも別に構わないと思いますが)等の職員の能力向上のための組織活動・支援の強化と適切な評価等で対応できる、あるいは対応すべき問題です。

問題は、その範囲では収まらない、減少する経営資源と高度化する社会や政治からの大学への要求の狭間で必要になってきた新たな業務や従来よりも高度性を求められるようになった業務、まさに今回の制度改正の検討の当初において対象とされた問題にどう対応するかという点です。

最初に、「職員との関係において少し問題の整理を試みてみたいと思います」と書きましたが、この問題については、職員と教員では実は相当に問題の認識や対応に関する発想が異なってくる可能性があります。実際、大学教育部会等での大学教員・教員出身の委員の発言や前回の組合ニュースで紹介した職員系の参考人の見解などにそれは色濃く反映されていたように思います。具体的には、「専門的能力」という言葉(以後はこの用語に絞って話を進めます)の意味するところが教員と職員では大きく違ってくるのではないかと考えられるのです。

職員の場合、基本的に大多数はいわゆる「ゼネラリスト」であり、その点では大手企業を中心とする民間企業のサラリーマン、そして官公庁の公務員と同様です。特定のジョブを対象として雇用契約を結ぶのではなく、「組織」の一員となるという雇用契約を交わし(公務員の場合、厳密には「任用」ですが)、その組織内の全てのジョブが自身の業務の対象になりうる可能性があり、実際に数年で様々な業務(部署)のローテーションを繰り返します。

このような雇用労働の在り方は実は日本独特のもので、他の先進国を含め日本以外の国では特定のジョブを対象として雇用契約を結ぶのが普通です。その点を非常に明快なモデルとして提示しているのが労働政策研究・研修機構統括研究員である濱口桂一郎氏で、近年の著作で日本独特の雇用システムを「メンバーシップ型」、日本以外では一般的な雇用システムを「ジョブ型」と呼んで、雇用契約の在り方をキーとして両者の違いを鮮やかに浮き彫りにしています。そして、「メンバーシップ型」雇用のもとでは、「長期雇用慣行」、「年功賃金制度」、「企業別組合」という、いわゆる3種の神器の他、「定期人事異動」もまた制度的補完性を構成する要素の一つとなっています(「メンバーシップ型」、「ジョブ型」の詳細については、近年の濱口桂一郎氏の一連の著作をご参照ください。ほぼ毎年、新書が出版されているので手軽に読むことが出来ます。非常勤講師をしている大学の学部学生向けに書かれたという『日本の雇用と労働法』あたりが概観するには手頃かもしれません)。このようなシステムのもとでの個々の労働者の能力の捉え方は、必然的に「ジョブ型」のもとでのそれとは大きく異なってくることになります。


様々な職務を一定期間で転々とするのですから、特定の職務を継続することによる知識や経験の蓄積といった分かり易い能力の向上とは別の「能力」の説明が必要になります。それが近年の「成果主義」の発想とは対照をなす、具体的な職務とは切り離され、潜在的能力を重視する「職務遂行能力」であり、年齢や勤続年数に伴い上昇するものと仮定されていました。また、組織の独自の慣行や人間関係への適応までも含んだ「企業特殊的技能」という表現もあります。

これに対して、大学教員という存在は日本では数少ない「高度に専門的な」「ジョブ型」の典型と言えます。自分の専門分野について、通常、学部の専門課程以来10数年かそれ以上の期間の「修行」-体系化された膨大な知識の習得とブラッシュアップ、それを前提としたオリジナルな研究の追求、他の研究者との議論等-を経てようやく1人前の研究者として「ギルド」への加入が認められることになります。このような人々が「専門的能力」と言った時にイメージするのはまさに自身の経てきたキャリアの在り方そのもので明快です。

ですが、「メンバーシップ型」の場合は「専門」という言葉を定義すること自体が難問になります(ある地方公共団体で職員の人事ローテーションについて「我々は3年で異動した分野の専門家になる」という言葉を聞いたことがありますが、これでは「専門家」の定義の敷居が低すぎると思われます。それにその定義に従ったとしても、丁度「専門家」になったあたりで次の部署に異動してしまうのですから、結局「専門家」はその部署にほとんど存在しないことになります)。

とは言うものの、「メンバーシップ型」の組織において「専門性」への考慮がまったくなかったかと言えばとそうではなく、企業では「専門役」や「調査役」と呼ばれるポストが、官公庁では「総括整理職」、「分掌職」と呼ばれるポストが存在しています(実際にそれがどう機能しているか、何のために使われているかはさておき)。さらに注目すべきこととして、近年、海外との競争にさらされている企業において、正社員については「メンバーシップ型」を死守しつつも30代後半辺りから一定の分野、部門内においてキャリアを積むようになる、という人事システム上の変化が起こっている(そうしないと「専門家」から成る海外企業に負けてしまうから)そうです。

さて、ここで最初の「高度専門職」をめぐる議論に立ち戻りたいと思います。

一般的な職員の能力向上については、既に述べたとおり、「第3の職種」の創設、制度化などは別に必要のない問題で、完全に各大学の個別の行動で対応することができます。

「専門性」を持った職員ないし「第3の職種」という問題に関しては、「メンバーシップ型」の職員から見た場合と「高度に専門的な」「ジョブ型」である教員から見た場合で人材像に相当な違いが出てきそうです。そして、今回の大学分科会、大学教育部会における検討は、少なくとも途中からこの両者が入り混じってしまったように思います。また、実際に現状ではこの両方へのニーズが存在しているのではないかと考えられます。

前者、職員から見た(あるいは職員をベースとした)「専門性」を持った職員ないし「第3の職種」については、民においても官においてもある程度の「専門性」を確保するためのポストが従来から存在しており、かつ、注目すべき変化として、海外企業との競争にさらされている民間企業において人事ローテーションをこれまでより限定して運用することにより専門性を確保しようとする動きが出てきているようでした。「ゼネラリスト」である職員に対しある程度の「専門性」を付与することは、これらに倣うことで十分に可能なように思えます。そして、それは現在の人事システムの運用の範囲で実現可能であり、別に法令改正を待つ必要などない、あるいは法令改正ができなくても構わないことを意味しています。この種の人材の必要性が重視されるならば、「第3の職種」のための法令改正の必要性は曖昧になるでしょう。

これに対して、教員から見た(あるいは教員に近い)「専門性」を持った職員ないし「第3の職種」の場合、現在の法制度下、しかも「メンバーシップ型」に対応した職員制度をベースにしては実現は困難ではないかと思われます(教員に大部屋での共同作業という「メンバーシップ型」の仕事のやり方を強制し、キャンパス外での活動にも一々組織の事前決裁を義務付けたらどうなるか考えれば分かり易いと思います)。昨年12月5日の大学教育部会におけるURAの方の説明も一つの傍証になるでしょうし、国立大学において既に雇用されているこの種の専門家が基本的に教員であり、職員ではないことも間接的にそれを裏付けていると思います。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/015/gijiroku/1353929.htm

ということで、私見では法令改正を行わなければ実現が困難なのは、教員に相当近い意味での「高度専門職」で、「ゼネラリスト」である職員にある程度の「専門性」を付与することは、現在でも各大学の人事システムの運用の変更で可能と考えます。しかし、大学分科会、大学教育部会で示された次期での検討のための「今後の方向性(イメージ例)」を見る限りでは、両者が混乱したまま検討が行われるのではないかと懸念せざるを得ません。また、名称が「高度専門職」から「専門的職員」へと変更されたことは、一般的にそれが職員の一種として解釈される可能性を高め、教員に相当近い意味での「高度専門職」の実現を、ゼネラリスト文化及びその慣行との関係から困難とさせるのではないかという点も懸念されます。「高度専門職」そのものとして構想されたはずの横浜市立大学における「大学専門職」がわずか数年で事実上廃止された(機能しなくなった)原因の恐らく一つに、設置者である基礎自治体における強固な「ゼネラリスト文化」の存在があったことを思い起こせば杞憂とは言い切れないだろうと思います(これらについて詳述することは現在の本学の状況では困難ですが)。また、戦後の中央省庁の人事システム改革の鍵となるはずだった「職階制」の実施が官僚側の抵抗により阻止された経緯なども同様にそのような可能性を想起させます(この点につき、大森彌東大名誉教授はその著書『官のシステム』で「これは、免疫学でいう『異物排除』に近かったかもしれない」と述べています)。


4月からいよいよ学長のトップダウンが極端に強化されたガバナンスの在り方が全大学に対して法的に強制され、機能し始めることになっています。万能のスーパーマン学長でもない限り、それを支えるスタッフの資質、能力は大学経営上非常に重要な問題となるはずですが、拙速な学校教育法改正と対になる今回の大学設置基準の改正の先送り、そして議論の混乱がどのような結果につながるかは、残念ながら現時点では霧の彼方であり、懸念しつつ次期中教審大学分科会、大学教育部会の検討を見守るしかなさそうです(もっとも一般的な意味での職員の能力向上とゼネラリストである職員に対して一定以上の「専門性」を付与することに関しては、繰り返しますが、別に国の対応を待つまでもなく個別大学の経営者の意思と能力により実現可能です)。

さて、以下続く、とするかどうかはまだ決めていないのですが、だいぶ長くなりましたので今回はこの辺で。
(菊池 芳明)

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職場集会開催のお知らせ (2/18、19)

職場集会を以下の日時で開催しますので、お知らせします。

八景キャンパス: 2月19日(木) 12:05~12:55
(本校舎1階 職員組合事務室の隣の組合会議室)

福浦キャンパス: 2月18日(水) 12:05~12:55
(医学研究棟 A209号室)


前回の職場集会以降の組合の活動状況の報告、耐震改修後の組合事務室問題に関する当局側修正提案への対応、各職場の近況、課題についての情報交換等を予定しています。非組合員の方の参加も歓迎します。飛び入り参加も可能ですが、2月13日(金)までに参加の申込をいただいた方には、組合でお弁当を用意します。

事前申込は、ycu.staff.union(アット)gmail.com までお願いします。

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