2016年11月30日水曜日

市職員と大学固有職員の住居手当の格差 月額10500円に拡大 第3報: 今年度給与確定交渉結果 固有常勤職員住居手当の取り扱いについて合意

昨日11月29日、当局側と交渉の結果、今年度の給与の取り扱いについて、固有常勤職員の住居手当を除き横浜市人事委員会勧告に基づく横浜市の改定に準じた改訂を行うことで以下の通り合意しました。

  1. 市派遣職員に関しては、①扶養手当について配偶者以外の扶養親族(扶養親族でない配偶者がある場合及び配偶者がいない場合における扶養親族のうち1人を除く)に係る月額手当を500円引き上げ6500円に、②住居手当については、39歳以下(厳密には40歳に達する日以降の最初の3月31日まで)の職員の住居手当を月額18000円から1600円引き上げ19600円に、それぞれ引き上げる。
  2. 固有常勤職員に関しては、扶養手当について市派遣職員と同様の引き上げを行う。
  3. 固有常勤職員の住居手当の取り扱いについては、継続協議とする。
  4. 市派遣職員および固有常勤職員の特別給(ボーナス)については、0.1月分引き上げ年間4.35月分とする。
  5. 期末特別給(ボーナス)の支払いは12月9日(金)、市派遣職員の扶養手当、住居手当、固有常勤職員の扶養手当の改定に関しては、4月に遡って行い12月21日(水)にこれまでの差額分の調整を行う。

前回11月21日の組合ニュース(公開版)では、経営審議会の決定として、法人の財政難を理由として固有常勤職員の住居手当は引き上げを行わないという方針をお伝えしましたが、今回の交渉では、この点につき決定せず、引き続き労使交渉を行うこととなりました。

厳しい状況であることに変わりはありませんが、組合としては引き続き、法人化時の労使合意及び同一職場において同一業務に従事する職員の給与は同一であるべきであるという一般原則に基づき市と同様の引き上げを求めるとともに、すでに現時点で月額8500円の格差が生じており、法人としての常勤固有職員の住居手当の在り方に関する考え方 ― 横浜市において20代、30代の住居手当を昨年度2倍に、今年度さらに引き上げ月額19600円としたことは、若手職員の住居費にかかる負担に対して手当の額が不十分であることを認めその是正を図るという姿勢を取っていることを意味します - を組合に対し示すように求めていきます。

なお、交渉の詳細についてはお近くの職員組合執行委員にお尋ねください。

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2016年11月18日金曜日

市職員と大学固有職員の住居手当の格差 月額10500円に拡大 第2報: 市大における対応方針

前回11月4日のニュースでは、設置者である横浜市の人事委員会の勧告内容について紹介しましたが、今回はそれを受けての公立大学法人横浜市大としての対応についてです。

17日(木)に経営審議会が開催され、市大として以下のような方針が当局側から提案され了承されました。
  1. 概ね横浜市人事委員会勧告に則り改定を行う
  2. 具体的には、月例給については、まず扶養手当のうち配偶者以外の扶養親族(扶養親族でない配偶者がある場合及び配偶者がいない場合における扶養親族のうち1人を除く)に係る月額手当を500円引き上げ6500円に
  3. また、市派遣職員について、39歳以下(厳密には40歳に達する日以降の最初の3月31日まで)の住居手当を月額18000円から1600円引き上げ19600円に
  4. ただし、法人固有職員の住居手当については、法人の財政状況が見通せないため当面改定を見送り、現行の月額9500円で据え置く
  5. 特別給(ボーナス)について、年間0.1月分引き上げ年間4.35月分とする。
  6. 月例給(扶養手当及び市派遣職員の住居手当)については平成28年4月1日に遡って適用、特別給(ボーナス)については、年間引き上げ分を年末支給時に反映
*厳密には公立大学法人の場合、経営審議機関はあくまでも審議機関にすぎず、法人としての決定権は理事長にあり私学の理事会の様な最高意思決定機関ではないのですが、通常、経営審議会に提案される時点で理事長の意向を反映しない内容になることは考えられず、また、理事長という個人単位の決定は、例えば私学の理事会の様な組織による決定と異なり、決定内容・時期が明確に組織全体に示されるとは限らず判らない点が多い(このあたりは個人に最高意思決定権を付与して、かつ意思決定の公示方法が定められていない場合に起こりうる問題の一つと言えるでしょう)ので、ここでは経営審議会の決定を以てとりあえず法人の方針と見なすことにします。
前回の組合ニュースで予測したように固有職員の住居手当については市人事委員会勧告を反映しない方針が明らかになりました。扶養手当に関しては市と同様となりましたが、住居手当の月額格差が1万円以上にまで拡大することは、法人化時の「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意に照らして容認できるものではなく、今後、引き上げを求め交渉を行って行きます。

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公立大学をめぐる国家財政システム 終わりの始まり?(2)

前回は、地方交付税制度について、財務省が「トップランナー方式」という「歳出効率化に向けた業務改革で他団体のモデルとなるような改革を行っている団体の経費水準を基準財政需要額の算定基礎とする取組み」を導入しようとしており、「公立大学運営」も平成29年度以降にその対象とされることになっているという情報をお伝えしました。

それを受けて、今回は公立大学における「先進的な自治体が達成した経費水準」の事例について紹介する予定でしたが、その前にそもそも地方交付税交付金を通した公立大学に対する国費投入の仕組については、国立大学、私立大学関係者はもちろん、公立大学関係者にすら良く知らない人がいる(そのこと自体、このシステムが国立大学、私立大学に対する補助金とは大きく性格を異にしていることを反映しているものです)ことから、まず、ごく簡単に地方交付税とその中での「公立大学運営」に関する費用について説明することにし、公立大学における「先進的な自治体が達成した経費水準」の事例については、稿を改めて次回以降でご紹介したいと思います。

さて、地方交付税交付金を通した公立大学への国費投入ですが、国立大学法人運営交付金、私立大学等経常費補助金とは、①そもそも設置自治体に対する交付金であり、各公立大学(法人)に直接交付されるわけではない(投入自体が間接的)、②地方交付税交付金は使途を特定されない一般財源であり、前回紹介した分野別の学生1人当たりの単位費用にしても金額の算定のための単価に過ぎず、設置自治体に単位費用相当額を公立大学に渡す義務はなく、他の用途に使用しても何の問題も無い(自治体には交付金相当額を大学に渡す義務はない)、③地方交付税交付金は、自治体の「想定される収入額」の「必要と想定される支出額」に対する不足分を交付するもので、東京都のように制度発足以降ずっと受け取っていない自治体、横浜市のように交付税交付金が歳入に占める割合はせいぜい数%に過ぎない自治体、歳入の半分以上を交付税に依存する自治体など、実際に交付される額、割合は千差万別である(そもそも想定される収入額との差額分だけが交付されるもの)、などの点で大きく異なっています。

具体的には、各自治体に実際に交付される交付金は、①政府が想定する「基準財政需要額」(「各地方公共団体の合理的かつ妥当な水準における財政需要」総務省「平成27年版 地方財政白書ビジュアル版」)から②政府が想定する「基準財政収入額」(「標準的な地方税収入×基準税率(75%)+地方譲与税等」総務省「平成27年版 地方財政白書ビジュアル版」を引いた額ということになっています。

地方交付税交付金はこのような性格を持つため、必ずしも各公立大学の経営に直結するわけではなく(例えば、首都大学の場合、東京都は地方交付税不交付団体なので地方交付税制度がどうあれ直接的には無関係)、設置団体経由であることから、運営費交付金のうち、一体いくらが地方交付税交付金から大学に入っているのかも分かりません(お金に色は付いていないので)。

しかし、例えば公立大学協会の計算では、基準財政需要額を公立大学の運営に要する経費と見做して実際の各設置自治体の負担額と比較してみた場合、基準財政需要額を上回る額を大学に投じている自治体が42%、ほぼ同程度の額を投じている自治体が13%、下回っている自治体が45%となっており、平均としては概ね地方交付税交付金の公立大学運営に必要と想定するレベルの額が投じられていると考えられます(「公立大学ファクトブック2014」P30)。また、大正大学の水田健輔先生の最近の論文(「公立大学に関する財政負担」『IDE』第580号)でも、公立大学セクター全体としては地方交付税の交付額がほぼ総額大学に支払われていると指摘されています。

このように、地方交付税交付金において定められている単価が(平均あるいはセクター全体としては)公立大学運営に実際にも相当程度反映されているような状況においては、公立大学運営に関する単価が引き下げられると、それにより設置自治体から公立大学への交付金も削減、大学経営に影響する可能性は無視できません。特に設置自治体財政の地方交付税交付金への依存度が高い場合、その可能性は高くなるでしょう。

また、直接的な交付税交付金の金額への影響にとどまらない問題もあります。国立大学がまず政府の必要に応じ設置され、その国立大学による人材供給と社会的需要の差を基本的に私立大学が埋めてきたという日本の高等教育システムの特徴から、公立大学は設置自治体自体からその存在意義を疑問視されたり、財政負担を問題視されたりすることが度々あり、財政悪化時にそれが国立への移管論や廃止論として噴き出してきました。このような土壌が単価引き下げによって刺激され、設置自治体の政策やマインドへ影響するという可能性もあります。

さて、次回は具体的な「先進的な自治体が達成した経費水準」の実例についてご紹介します。公立大学は多くの面で国立大学に準じているはずだという国立大学の視点や、公立大学は税金で国立大学並の経営環境を与えられており不公平だという私立大学の視点からするとびっくりするような数字をお示しすることになります。

(菊池 芳明)

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2016年11月4日金曜日

市職員と大学固有職員の住居手当の格差 月額1万円以上に拡大 - 横浜市人事委員会勧告 -

既に新聞報道等でご承知の方も多いかと思いますが、10月12日に法人の設置者である横浜市の人事委員会から今年度の横浜市の職員給与に関する勧告が行われました。大学に派遣されている横浜市職員の方はもちろん、住居手当の改定問題で度々お伝えしてきたように、法人固有職員についても「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という法人化時の労使合意により、市人事委員会の勧告はその処遇に大きく影響するものです。

市人事委員会の勧告は、国の人事院勧告と同様、民間給与との較差(横浜市の場合は横浜市内の民間事業所が比較対象)に基づき行われるもので、今年度の勧告の内容は以下のようなものです。

  • 月例給について、市内民間給与との較差455円を埋めるため、扶養手当及び住居手当を改定
  • 具体的には、扶養手当については、配偶者以外の扶養者にかかる手当月額を500円引き上げ月6500円に、住居手当については40歳未満の職員の月額18000円を1600円引き上げ月額19600円に
  • 特別給(ボーナス)については、市内の民間支給割合4.36月と市の現行の支給割合4.25月の格差を埋めるため0.1月分引き上げ4.35月に
  • 実施は、月例給については平成28年4月から、特別給については条例の公布日から
月例給について、民間給与との較差を埋めるための方法が支給対象者が限定される手当の改訂であるという点で問題があると思われますが、そのあたりは横浜市の組合にお任せするとして、固有職員の組合員を抱える職員組合として問題になるのは、法人化時の合意の例外として市との較差が発生してしまっており、来年度以降の取り扱いが交渉事項となっている住居手当が今年度も引き上げられることになるという点です。

昨年来、固有職員の住居手当の改訂を巡る問題については度々組合ニュースでも取り上げてきました。

http://ycu-union.blogspot.jp/2015/04/blog-post.html
http://ycu-union.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html
http://ycu-union.blogspot.jp/2016/07/blog-post_94.html
http://ycu-union.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

要約すると、法人化時の「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意に関わらず、市での「40歳未満の住居手当は9000円から18000円に引き上げ、40歳以上は廃止する」という改訂について、法人固有職員の平均年齢が20代で大半の固有職員が引き上げ対象となり、法人財政が悪化する中、負担が大きいため引き上げは行わないと当局側が主張、これに対して組合側が合意に反するとして交渉を求め、最終的に今年度に関しては、市での9000円には遠く及ばないものの10月以降500円の引き上げを行うという事で決着したものです。

もちろん組合としては満足できる内容ではなく、「法人財政の悪化」を唱えつつ、来年度から始まる第3期中期計画では大規模な組織の新設、改廃が予定されているなど、整合性のとれた合理的な経営戦略が存在するのか、特に固有常勤職員だけでなく教員についても任期制を廃止、人件費が文字通りの固定費となった現在、数年で入れ替わる横浜市OB、市派遣の経営者、管理職に責任ある長期的な経営が可能なのか、疑問を持たざるを得なくなる成り行きでした。

今回の市での改訂により、横浜市職員と大学の固有職員の住居手当の差は月額で1万円を超え10,100円(横浜市19600円、大学9500円)へと拡大します。月額500円の値上げでさえ、1年半余りの交渉、しかも労基署による検査と厳しい指導と重なるという外部的要因もあってようやく勝ち得たものであり、今回の横浜市の引き上げを固有職員の処遇に反映させることは容易なことではないと予想されます。また、扶養手当の取り扱いについてもどうなるか、現段階では不明です。

組合としては、当然、法人化時の「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意に拠って引き上げを要求していくことになりますが、27年度の法人決算がどうやら本当に赤字に転落したらしいこと、
http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/corp/finance/pdf/H27FinancialReport.pdf
これまでの交渉経緯からも明らかなように、法人固有職員、少なくとも一般職員の処遇には当局側としては高い優先順位を付けてはいないことから、厳しい交渉になるでしょう。9月9日付の組合ニュース(公開版)でも最後に書いたように、労働組合の交渉力の源泉は組合員数です。固有職員の現状と将来について、これで良いと考えていない人には、改めて組合加入を呼び掛けてこの稿を終わります。

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