2016年4月23日土曜日

職場集会開催のお知らせ (5/18、19)

本年度第1回の職場集会を以下の日時で開催しますので、お知らせします。

八景キャンパス: 5月18日(水) 12:05~12:55
(本校舎 職員組合事務室)

福浦キャンパス: 5月19日(木) 12:05~12:55
(医学研究棟1階 A103号室)

住居手当変更及び嘱託職員の処遇改善を巡る団体交渉の詳細とその後について等、最近の組合の活動状況の報告、各職場の近況、課題についての情報交換等を予定しています。非組合員の方の参加も歓迎します。飛び入り参加も可能ですが、5月13日(金)までに参加の申込をいただいた方には、組合でお弁当を用意します。

事前申込は、ycu.staff.union(アット)gmail.com までお願いします。

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2016年4月18日月曜日

本年度の学習会(職員組合SDプログラム)の概要と第1回のご案内

 先週お伝えしたように3月31日に大学設置基準が改正され、FDと並んでSDが各大学に対して義務化されることになりました(施行は来年4月1日)。

公立大学の例にもれず、本学もSD、特に大学職員の固有性に係る領域のSDがきわめて弱体で、長年にわたり職場諸要求等で改善を求め続けてきました。昨年度、いつまでも要求だけしていてもらちが明かないということで、組合執行委員のうち2名が大学専門職の学務准教授で大学経営に関連する教育研究経験もあるというアドバンテージを活かし自分たちでやってしまうことにして、「大学職員基礎講座-大学と社会に貢献できるプロフェッショナルとなるために-」という全体タイトルで7回にわたるプログラムを実施しました。具体的な各回のテーマは以下の通りでした。

第1回 大学と大学職員を取り巻く環境
-大変動期の日本の大学-

第2回 大学という組織の特色と職員の専門性
-他の組織と何が違うのか?-

第3回 大学職員に必要な“業界知識”(1)
-教育関係法令の基礎- 

第4回 大学職員に必要な“業界知識”(2)
-“大学改革”の動向- 

第5回 大学職員に必要な“業界知識”(3)
-日本の公立大学の特色と危機- 

第6回 大学職員としての能力向上とネットワーク
-学会、研究会、社会人大学院- 

第7回 公立大学という職場で働き続けるために
-権利と義務とセーフティネット-

今回の大学設置基準改正を受け、今年度はさらにプログラムを拡充します。

全体のタイトルは「職員組合SDプログラム」として、昨年度実施した講義スタイルでの「大学職員基礎講座」に加え、大学に関する特定のトピックについて、あまり構えずにラフな感じで情報の共有や意見交換などを行う「SDセミナー」を新設、2本立ての構成にします。

  • 職員組合SDプログラム
    • 大学職員基礎講座(講義スタイル)
    • SDセミナー(ラフなゼミスタイル)

新設する「SDセミナー」ですが、毎回、メディアで話題になっているものなど、大学に関連する特定のトピックスを取り上げ、情報の共有とそのトピックに関して気楽に議論してみる、というスタイルのものです。とりあえず、第1回については、ある地方大学についての情報を素材に、大学を巡る様々な話題、問題に関し無料で利用できる情報ソースと、その利用にあたっての注意点などを話題にする予定です。日時、場所等が確定次第、この組合ニュース【公開版】でお知らせと募集を行います。平日の昼休みに開催していく予定です。

「大学職員基礎講座」に関しては、大学職員としての必要最低限の知識のインプットという講座の目的からあまり手を入れる余地はないので、この1年の高等教育政策の変化等を反映、修正するだけで基本的に昨年度と同様の内容になります。一般の大学での新採用~経験年数5年程度の層を念頭にレベル設定していますが、特に受講者の特定などは行わないので、上記の昨年度の内容をご覧になって、関心を持った、よく知らないからといった方に参加いただければと思います。こちらは、原則として平日夜の開催にします。

早速ですが、「大学職員基礎講座」の第1回を以下の日程で行います。上述のように、基本的に昨年度のものに最低限の修正をした内容となりますので、昨年度に既にご参加の方にはご注意ください。

なお、「大学職員基礎講座」については、学内の事務職員に限定せず、広く学内外の方に公開することにしました。業務上の知識等を必要とされている学内外の関係者の方、大学や大学職員の現状に関心のある方等のご参加をお待ちしています。

「大学職員基礎講座」
第1回 大学と大学職員を取り巻く環境
-大変動期の日本の大学-

日時:4月27日(水) 18:00~18:40
場所:金沢八景キャンパス 職員組合事務室

*資料準備の都合上、開催日の前々日までに ycu.staff.union(アット)gmail.com までお申し込みください。
*組合員以外の方は、資料代として50円をご用意ください。

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3つのポリシー策定義務化に関する学校教育法施行規則とガイドラインの不整合とその影響

 昨年度中に法令による義務化とガイドラインの策定・公表が行われることになっていた3つのポリシー(ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシー)について、法令の方は学校教育法施行規則の改正が3月31日に、ガイドラインについては4月1日に公表がなされました。ただし、学校教育法施行規則の改正部分の施行は来年度、平成29年4月1日となっていて、この1年は各大学が検討と策定や改訂を行うための猶予期間とされています。

ガイドラインに含まれている内容等、検討は主として中教審の大学教育部会で行われたもので、ガイドライン自体も大学教育部会の名前で発表されています。それに対して学校教育法施行規則は省令なので、当然、主体は文科省になります。

この作成主体の異なる両者を読み比べてみると、記述が見事に異なっている部分があります。

学校教育法施行規則の改正部分、第165条の2では、3つのポリシーの策定単位について「大学は、当該大学、学部又は学科若しくは課程(大学院にあつては、当該大学院、研究科又は専攻)ごとに」となっているのに対して、ガイドラインでは「三つのポリシーは,そのような教育課程(授与される学位の専攻分野ごとの入学から卒業までの課程(以下「学位プログラム」という。))ごとに策定することを基本とすることが望ましいと考えられる。」としつつ、その次で「各大学の実情に応じて,例えば,学位プログラムごとのポリシーとは別に,全学や学部・学科等を策定単位として各ポリシーを策定することも考えられる。」と記してあります。

学校教育法施行規則の方は、法令でよくある「等」すらついていないので、策定単位は明確に「大学、学部又は学科若しくは課程」です。ガイドラインの方は、大学、学部、学科等を単位とすることも「考えられる」が、学位プログラムごとに策定することを「基本とすることが望ましいと考えられる」なので、基本は学校教育法施行規則の規定には含まれていない策定単位を推奨していることになります。

このような不整合はなぜ生じたのでしょうか?

現在の日本の大学設置基準等の関係法令は、学部、学科の様な「教員組織」、「学生の所属組織」、「教育プログラム」の総てが一体化したあり方を前提に設計されています。それに対して、近年、教員組織から教育プログラムを、あるいは学生の所属組織・教育プログラムを分離すべき、という考え方が高等教育論の研究者だけでなく、文科省内部からも出て来ています。これらの背景には、教員組織と教育プログラムが一体のままでは教育プログラムの変更が困難で、特に現在の「大学改革」要求への対応を資源が減少する中で行わなければならないという状況下では両者を切り離さなければどうにもならない、という認識の存在があります。この辺りについては、ちょうどIDEの2016年2-3月号に徳永保元高等教育局長が「学位プログラム制の導入提案に至る経緯とその後」というタイトルで寄稿されたものが載っていて、「学位プログラム」への移行が思うように行かない中、グローバル30等々の競争的補助事業で「学位プログラム」を使用することでその普及と概念の浸透を図った等の裏面の事情が語られています。

さて、今回の大学教育部会での審議経過を見てみると、昨年11月24日の第39回の「資料1-2 三つのポリシーに基づく大学教育の実現に係る主な論点(案)」に「ポリシーの策定単位としては,学位を基本として考えることでよいか。」とあり、さらに次の第40回(12月14日)の「資料1-2 三つのポリシーの策定と運用に係るガイドライン(骨子の素案)」では「三つのポリシーの策定単位については,各大学で適切に判断すべきものであるが,その基本は授与される学位の専攻分野ごとの課程(学位プログラム)とすることが考えられる。」と書かれています。ガイドラインにおける策定単位は学位を基本とする、という方向性が、文科省主導か少なくともその賛同のもとで出てきたこと、その時期は年度末まで3,4か月という、年度末までもうあまり時間のない時期であったことが判ります。

さらに、2月17日の第42回を見ると「資料1-1 「学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン(素案)」と「資料1-3 三つのポリシーの策定・公表に関する学校教育法施行規則の改正案のポイント」が提示されています。前者では策定単位は「教育課程(授与される学位の専攻分野ごとの入学から卒業までの課程(以下『学位プログラム』という。))ごとに策定することを基本とすることが望ましいと考えられる。」としながら、「一方,各大学の実情に応じて,例えば,学位プログラムごとのポリシーとは別に,全学や学部・学科等を策定単位として各ポリシーを策定することも考えられる。」という1項が新たに追加され、後者では「当該大学,学部,学科又は課程及び大学院,研究科又は専攻ごとに」となっています。後者が実際に改正された学校教育法施行規則とは若干異なっていますが、基本的には最終的なものとほぼ同一です。

先に書いたように、現在の法令は「教員組織」、「学生の所属組織」、「教育プログラム」の総てが一体化したあり方を前提に設計されている関係で、全体の改正を伴わずに他の部分との整合を取ろうとすれば学部や学科を単位として記述せざるを得ません。2か月で学校教育法から大学設置基準等々の関連法令すべての再設計ができるわけもなく、仕方なくガイドラインの方に新たに「一方,各大学の実情に応じて,例えば,学位プログラムごとのポリシーとは別に,全学や学部・学科等を策定単位として各ポリシーを策定することも考えられる。」という1項を追加することで、既に検討が進んでしまっているガイドラインと学校教育法施行規則改正案とを辛うじて繋ごうとしたのではないかと推測できます。

この42回については実際に傍聴していたのですが、メモを見ても記憶をたどっても、この問題に関して委員の側から質問や意見は出ていなかったように思います。以前に金子元久先生が現行法令の設計思想との関係での問題を端的に指摘したことがあったと思うのですが、この回は他の議題もあり、また3ポリシーに関しても他に色々と指摘すべことがあり、もうどのみち時間が無いしという事で委員たちからスルーされたのかもしれません。部会自体は3月にもう1回開かれていますが、そちらについても同様でした。

結論としては、3ポリシーの一体的策定の義務化自体は既にスケジュールまで決まっていてやらざるを得ないという制約下、策定単位も含め、これまでの「改革」の延長上にガイドラインの検討を進めたものの、法令改正の方を詰めてみるとやはり「学位プログラム単位」とはできず、残り時間が1か月余ではどちらも変えることは出来ないので、ガイドラインに1項を追加することで両者の関連性を何とか維持、後は解釈も含め各大学に丸投げした、という事なのではないかと思います。文科省も好きでやっているわけではないでしょうが、高等教育論に関してある程度以上の知識があるか、よほど太いパイプでも持っていない限り、受け取る側はどう解釈すべきか訳が判らなくなるのではないでしょうか。あるいは、当然、法令の方が優先するのだから、矛盾することが書いてあるガイドラインはあまり真面目に受け取らなくてもいいと考えるかもしれません。それはそれで問題で、前回のSDの記事でも同じようなことを書きましたが、せめて通知には一言解説があってほしいと思います。

さて、次にこの問題の影響ですが、日本の大学教育の最も基本的な単位と思われる学科と学位が1対1になっている場合は、問題は発生しないと思われます。学科単位で定めれば、それがイコール学位プログラム単位にもなるからです。

問題はこれが1対1でない場合、例えば①1学科の中に複数のディシプリン、教育プログラムが並立、学位も複数ある場合や、②1学科の中に複数のディシプリン、教育プログラムが並立しているにも拘らず、学位は一つだけという場合、③複数学科があるにもかかわらず、教育プログラムとしての差異は小さく、学位は1つだけ、などが考えられます。設置基準の準則化、設置手続きの緩和の結果、組織とプログラムの関係の多様化(以前は教育プログラムであったはずの「コース」が教員組織、学生定員、独立性の強い教育プログラムを持つ事実上の「学科」化しているケースなど)が進んでいるので、ディシプリンと学位と教育プログラムがきれいに一体化しているようなケースはむしろ少数派になっている可能性すらありそうです。学位の数があっという間に700を超えてしまった現状からはあながち懸念とは言い切れないと思います。

具体的な事例を一つ挙げておきたいと思います。

本学、横浜市立大学の国際総合科学部は、法人化時に国際文化学部、商学部、理学部の3学部を1学部に統合したものです。さらに学科についても1学科としてしまいました。ここで学位も例えば「学士(教養)」とか「学士(学術)」とか「学士(学芸)」とかで一本化していれば、良し悪しはともかくとして一貫性はあるものとなっていたはずです。しかし、実際には学科の下が非常に複雑なものとなっています。

まず、国際総合学部国際総合学科の下には「学系」という単位が存在しています。法人化時に同時に作られた研究組織であるらしい「研究院」(現在は「学術院」)には「学群」という単位が置かれているので、筑波大学の名称を借りてきた可能性が大です(私自身は法人化後の赴任で、法人化当時の資料も無くなっているので具体的にどのような検討の結果なのかは判りません)。ただし、筑波と教員組織、教育組織の名称が逆になっている理由は判りません。独自性を主張したかったのか、あるいはどうでも良かったのか……。それに、筑波や法人化時に追随した他の国立大学が「学群」、「学系」等を従来の学部・学科に替わる組織としているのに対し、学部学科を残した上で、わざわざその下に埋め込んだ理由もよく判りません。

学系以下の組織については、法人化時と現在と若干違っているので、現在のものについて学位の対応関係と併せて見ると、以下の通りになります。

1.国際教養学系(旧国際文化学部の流れを汲む人文系中心の学際系)
人間科学コース:学士(国際教養学)
社会関係論コース:学士(国際教養学)
国際文化コース:学士(国際教養学)

2.国際都市学系(法人化後に新設された学際系)
まちづくりコース:学士(学術)
地域政策コース:学士(学術)
グローバル協力コース:学士(学術)

3.経営科学系(旧商学部の流れを汲む)
経営学コース:学士(経営学)
会計学コース:学士(会計学)
経済学コース:学士(経済学)

4.理学系(旧理学部の流れを汲む)
物質科学コース:学士(理学)
生命環境コース:学士(理学)
生命医科学コース:学士(理学)

伝統的な観点から一番判りやすいのは、コースがディシプリン単位で編成され学位も対応している経営科学系でしょう。ただし、普通は学科である組織単位が「コース」であるため、今回の3ポリシー策定義務化との関係では単位をどうするかが問題になります。学校教育法施行規則の規定に則れば学科単位ですが、そもそも国際総合科学部は国際総合科学科の1学科しかないので、それだけでは完全に不十分で、下位の単位についても合わせて別途ポリシーを作成する必要が出てきます。経営科学系の場合、コース単位で見てみると実際にはディシプリン単位の学科相当なので、コース単位までポリシーを作ればきれいなものが作れるでしょう。

それに対して、国際都市学系の場合、基本的にコース単位までおろしても学際系、ただし、まちづくりコースと地域政策コースは学問的には隣接していて、それに対してグローバル協力コースは内容的には他の2者より離れています。しかしながら、学位は学士(学術)で1本です。学位プログラム単位ではポリシーとして情報が不足しそうで、かといってコースはいずれも学際系で、かつコース間の学問的距離が違っています。

国際教養学系と理学系に関しては、人文学、理学という大くくりで構わない、という話になるのであれば、学位もそれぞれ一つですし、学系を基本単位とすることも考えられます。ただし、だとすれば各コースの意義は?といった話が出て来るかもしれません。

さらに、学部全体として、これらの学系ごとに学系-コース-学位の関係性が異なっている点をどうするか、という問題もあります。全体の整合性云々を言いだした場合、収拾がつかなくなる可能性もありそうです。

何かパンドラの箱を覗いたというか、某国産超弩級戦艦の艦橋を眺めているようなというか、これ以上はやめた方が良さそうな気がしてきたので、ここまでにします。今回の学校教育法施行規則とガイドラインに関しては、他にも「一貫性を担保しなければならないのは結局3つなのか、2つなのか」、「数年後に、認証評価に当たってガイドラインが硬直的に適用されることは本当にないのか」、「幾つもの国立大学が法人化時に学部学科に替わり学群、学系、学域、学府等々の組織・名称を採用し、それらは学校教育法においても常例である学部以外の組織として位置付けられているにも拘らず、なぜ今回の施行規則では大学、学部、学科、課程のみとして『等』も付いていないのか」等々、色々疑問はあるのですが、その辺はまた機会があればという事で。

(菊池 芳明)

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2016年4月8日金曜日

固有職員の処遇を巡る交渉状況について

ちょうど1年ほど前になりますが、組合ニュース【公開版】(2015年4月9日)で「『嘱託職員の処遇に関する要求書』と法人固有職員(常勤職員・嘱託職員)の処遇に関する重大な問題について」と題して、法人化時の労使合意-「法人固有職員の処遇は横浜市に準じる」-について、当局側の態度が怪しくなってきたこと、具体的には、横浜市に準じた常勤職員の住居手当の改訂及び嘱託職員の賃金の引上げ等について当局側が市と同様の改定に応じないため交渉を行っていることをお伝えしました。

また、その後、本年1月22日付の組合ニュース【公開版】での「職員賃金規程改正に関する職員労働組合の見解」において、「固有職員の住居手当については既に1年以上、職員組合との間で協議が行われているが決着に至っておらず、この間、当局側による協議の中断も長期間にわたっている。当局側の主張の裏付けとなるデータの提出が約束されているにも関わらず、この点についても未だ十分なデータの提示はなされていない。法人化時の労使合意に関わる問題であり、労使対等の原則に基づき、誠意をもって協議に臨むよう求める。」として間接的に情報をお伝えしてきました。

今回は、これらの問題についての続報になります。

まず、嘱託職員についての要求について、当局側の窓口となっている人事課から組合の要求は受け入れられないとの回答があり、その後、2月29日には固有常勤職員の住居手当に関しても、人事課長から現在の法人財政の状況から要求には応じられない旨の最終回答がありました。さらに、その際、人事課長からは「法人化後10年が経過して、経営審議会の外部委員からも法人独自の給与体系を考えてはどうかと意見が出ている」ので「人事課としても検討をスタートしている」として合意の破棄を示唆する発言がありました。直接的な要求拒否の問題だけでなく、法人化後の労使関係と法人固有職員の処遇の根幹となっていた合意自体が危うくなってきたことから、職員組合としてはこの問題を極めて重視し、法人理事長に対して3月10日付で団体交渉の申し入れを行いました。

若干、解説をしておくと、団体交渉とは、憲法第28条及び労働組合法で保障された労働組合と使用者との間でのいわば「正式な」交渉で、団体交渉において文書化された合意事項は法的拘束力を持つことになります。これに対して、それ以外の法令上の直接の根拠に拠らない交渉は一般的には労使協議と呼ばれています。

労働組合からの団体交渉の申し入れについては、労働組合法の定めにより原則として拒否は出来ないものとされており、当局側も交渉に応じたことから、3月28日、事務局長を当局側代表者として団体交渉を行いました(組合としては当局側代表者として理事長自身の出席を求めていたのですが、本学における労使交渉は理事長ではなく事務局長が対応している、という当局側の主張にとりあえず今回は譲ることとしました)。

具体的な交渉結果ですが、意外なことに最終的に拒否されたはずの住居手当の問題に関して「2か月以内に来年度の考え方について具体的に提案したい」として、改訂拒否はとりあえず今年度に関してのものであると態度が変わり、また、嘱託職員に関しては「制度の全般の見直しを行っており、その中で処遇について考えたい」という回答がありました。

組合としては、労使協議における拒否回答に基づき、700億に近い本学の財政規模からすればごく僅かなレベルの手当の引き上げ(しかも40代以上の廃止と引き換えに20代、30代については引き上げようとするもの)と、絶対額においても本当にささやかな0.23%という嘱託職員の給与引き上げがなぜ出来ないのか、財政難を言いながら一方では組織の新設や人員増を続けるなど、どのような優先順位に基づいて法人経営を行っているのか、新卒、第2新卒に極端に偏った固有常勤職員の採用を行ってきたことの責任をどう考えるのか、また、法人化時の労使合意の重さについてどの様に認識しているのか等、極端なトップダウン型経営を採用している本学における経営者の見解を質したかったのですが、当局側の態度の変更を受け、今回はとりあえず当局側の新たな提案を待ち、交渉を継続することとしました。

当局側の新たな提案があり次第、また、この組合ニュースでお知らせします。

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「専門的職員」に関する検討のその後、SD義務化、大学評価学会第13回全国大会

一昨年から昨年にかけて、中教審大学分科会及び大学教育部会を舞台に行われている「高度専門職」、「専門的職員」に関する検討の内容等について取り上げたことがありました。

「高度専門職」の大学設置基準への位置づけについて
(1)-文科省が制度化を急ぐ理由?-
(2)-「高度専門職」か「専門職」か-
(3)-「高度専門職」から「専門的職員」への変更とメンバーシップ型雇用における「専門性」-

その後1年以上の時間が経過したものの、実のところ検討はほとんど進んでいないという状態なのですが、以下、簡単に前回以降の展開についてご紹介したいと思います。

平成27年2月から始まった第8期中教審ですが、この問題についての実際の検討を委ねられた大学教育部会では、まずは実態の把握を行うべきだという話になり(大学教育部会(第36回))、その後はアンケート調査の内容、項目に関する議論を行っただけで、調査結果が取りまとめられるまでは全く審議は行われませんでした。因みに、この間、部会としての審議は、3つのポリシーに基づく大学教育の改善とそれと連動した認証評価制度の改善にほぼ集中しており、それらの審議の結果は、それぞれについての法令改正、3つのポリシーの策定及び運用に関するガイドライン、認証評価制度の充実に関する審議まとめとして3月末から4月1日にかけて相次いで発表されています。

そして、1月18日に開催された大学教育部会(第41回)において、専門的職員の国内における実態調査の結果の概要(と言っても30P近くあるのですが)に関する報告が行われました。回収数は4大が443校、短大116校で、4大に関しては半数以上、短大に関しては3分の1程度が回答しているので、この種の調査としてはこれまででは最も包括的なものと言えるでしょう。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/015/gijiroku/1366190.htm

内容については、各自でご覧になっていただく方が良いというか、文科省の説明を借りれば「現状は極めて多様であり、資格・処遇等についても確立していないことが明らかになった」というものなので、要約がなかなか難しいのですが、個人的には目に付いたのは、①予想通り、現時点で多く配置されているのは健康管理、図書、就職・キャリア形成支援で、保健師、カウンセラー、司書などの伝統的に配置されてきた専門職と20年余り続く就職難を反映して急増したキャリアカウンセラー等である、②大教センターの教員、URA等と思われる一部を除くと事務職員が多い、③現在配置している専門的職員のうち、国立、私立では図書に関して重要性の認識が低い、④国立大ではIR、研究管理、国際が今後、専門的職員を配置する分野として重視されている、⑤現状では、専門的職員には学位、実務経験を特に求めず、給与制度も独自のものを用意しないのが大勢、⑥専門性に着目して中途採用を行うケースが多いが、職員の中から育成するケースも多い、辺りでした。

この報告に対して、各委員から発言がありましたが、事務職員出身の委員からは、「調査は、専門的職員が現実には事務職員ベースであることを明らかにした。今後重視するものとしても、特定分野の専門家というよりは、大学全体を分析し提言するような分野に関心がもたれていることが読み取れる」として、当該委員のこれまでの「専門的職員(高度専門職)は事務職員ベースであるべき」という主張に沿った見解が表明されました。これに対して、高等教育論のある委員からは「調査結果からは、専門的職員があまり重視されていないのが現状であることが読み取れる。ジョブ・ディスクリプションも出来ていないのに、この段階で法令に入れるのは問題だ。職員養成の大学院も上手く行っておらず、標準化された短期の履修証明プログラム辺りから始めるべきだ」という意見が出されました。

結局のところ、一昨年度の議論の段階ですでに明らかになっていましたが、日本型ジェネラリストである事務職員と日本では少数派、世界的には標準的存在である特定ジョブに立脚する教員に近い(高度)専門職という、人材としてまったく異なる2種類のいずれを念頭に置くかで考え方が大きく食い違い、専門的職員あるいは高度専門職をそのどちらにするかという形で議論している限り、いつまでも議論は収斂しそうにないように思えます。この点については、過去記事の2回目と3回目で書いた通りなので繰り返しませんが、今回の調査結果に沿って考えれば、IRer、URA等の日本型ジェネラリストである事務職員のローテーションで済みそうもない専門職については、その「必要性」と「採用し、適切な待遇で雇用し続ける人事、財政能力」を持っている国立大学(文科省が整備を要求し、曲がりなりにもそのための予算も措置してくれる)を中心とした一部大学で整備を進め、その他の大学においては、事務職員の(ジョブ・ローテーションの在り方の見直し等を通じた)能力向上で対応していく、といったあたりが当面の現実的な解になるでしょうか。ただし、国立大学等においてジョブ型の専門的職員を「適切な待遇で雇用し続ける」というのは、現状ではかなり怪しいので、正確には「適切な待遇で雇用し続ける(べき)」と書くべきかもしれませんが。

なお、今後については、文科省から「現状は極めて多様であり、資格・処遇等についても確立していないことが明らかになるなどしたため、現時点で新たな職として法令に規定を置くのではなく、現状のより詳細な分析や情報収集、環境整備に取り組む」との提案があり、了承されているので、今年度以降もさらに調査やそれを受けた議論が引き続き大学教育部会を舞台に行われることになりそうです。

もう一つ、混迷の相を深める「専門的職員」の議論とは対照的に、SDの義務化については議論らしい議論もないまま、3月31日というまさにギリギリのタイミングではありましたが、あっさりと大学設置基準の改正が行われ公布されました。ただし施行は1年後の平成29年4月1日からで、各大学はこの1年の間にSDに関する計画等を定め、29年4月1日から実施に移すことが要求されます。

なお、この問題に関連して、2月17日に開催された大学教育部会(第42回)において、委員から「職員には教員、技術職員も含むというが、学長等のトップ層も含まれるのか?」という質問があり、それに対して文科省からは「学長等も含まれる」という答弁が行われています。世界でも冠たるトップダウン型経営形態を法律で強制するという方法まで取ったのですから、そのトップの資質は組織にとって文字通りクリティカルな問題で、人材養成は最重要課題であるはず(正直、順番が逆だろうとは思いますが、やらないわけには行きません)なので、この答弁自体は歓迎すべきものです。しかし、この条文「大学は、当該大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、その職員に必要な知識及び技能を習得させ、並びにその能力及び資質を向上させるための研修(第二十五条の三に規定する研修に該当するものを除く。)の機会を設けることその他必要な取組を行うものとする。」を読んだだけで、学長だの理事長だの理事だのも対象であるとはふつう思わないのではないでしょうか(BDという別の名称を使う場合もあるわけですし)。文科省が出したはずの通知については見ていないので何とも言えませんが、もし通知に明記されていなければ、その辺りは実際には無かったことになるのでは、という懸念も感じます。審議会の、分科会の、さらに下の部会での答弁でしかないと言われてしまえばそうなのですが、この稿をご覧になっている方には、今回の改正で言う「職員」には学長等の経営陣も含まれる旨、文科省側の答弁があったことをお知らせしておきます。

さて、最後に少し宣伝を。

1月に京都で開催された「大学職員フォーラム2015」で、「『専門的職員』、『高度専門職』をめぐる検討経緯と日本の大学職員の『専門性』」と題して基調報告を行いました。これまでの政策的経緯の概観と、日本型ジェネラリストしての大学職員という観点から「専門的職員」「高度専門職」の在り方を検討したものです。準備不足もあり、あれこれと反省点も多いのですが、主催者である高等教育研究会から来月あたりに発行される「職員ジャーナル」の第19号に当日の内容が掲載される予定です。よろしければご一読ください。
http://www.bekkoame.ne.jp/ha/shes/

また、5月14,15日に北大で開催される大学評価学会第13回全国大会「若者、地域とともに育つ大学 ~北海道から考える~」で、「大学職員と専門的職員――両者の関係と今後の課題」と題して分科会の企画に関わりました(15日午後)。 ほぼ同様の問題意識に立脚したものですが、では、海外大学の実態はどうなのかという点について、大正大の高野篤子先生から「英米の大学職員について -日本との比較的考察」というタイトルでご報告をいただきます。高野先生はその著書『アメリカ大学管理運営職の養成』で、アメリカの大学管理運営職の実態について、恐らく国内唯一の包括的で詳細な研究を発表されていて、今回は、その後の研究を踏まえアメリカに加えイギリスの管理運営専門職の状況について紹介いただく予定です。また、開催校である北大附属図書館の梶原茂寿さんからは「学術情報のオープン化時代に求められる大学図書館職員の専門性」と題して、学術情報の在り方の変化に対応した図書館職員の専門性の行方についてご報告をいただきます。図書館司書は保健師などと並んで、専門的職員だの高度専門職だのが云々されるはるか以前から学内に専門職として確立されていた数少ない存在であり、伝統的な専門職が業務を巡る環境の変化を踏まえどのように変わろうとしているのか、興味深いご発表になると思います。

なお、私自身は企画側なので発表という形ではありませんが、趣旨説明という事で通常の学会発表相当の時間で話をする予定です。「専門的職員」「高度専門職」を巡る政策的経緯については出来るだけ簡潔にして、一つは学会の方向性にも沿った形で、事務職員の地位や能力向上を巡るここ数年の政策的議論が「大学という共同体の一員」というよりは、「トップダウン型経営におけるトップの補助装置」というこれまでの位置づけとは異なる前提から出発しており、その点が事務職員の在り方に影響を与える可能性について、また、日本型ジェネラリストとしての事務職員の「能力」について、可能であれば1月のフォーラムでの発表よりもう少し突っ込んだ話をしたいと考えています(後者については、完全にこれから準備するので間に合うかどうかわからないのですが……)。

大会参加費は、非会員の方で3000円、院生・学生は1000円、懇親会費は4000円(院生・学生は2000円)で、日本高等教育学会、大学教育学会等のこの分野のメジャーな学会に比べるとかなり格安に抑えてあります。興味のある方には、是非ご参加ください。詳細については、下記の学会HPから「第13回全国大会(北海道大学、2016.5.14-15)プログラム)」をご覧ください。
http://www.unive.jp/

(菊池 芳明)

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