2017年12月27日水曜日

「嘱託職員、契約職員の移行する新職種の名称について(要求)」に対する当局側回答

11月16日付組合ニュース(公開版)でお伝えした「嘱託職員、契約職員の移行する新職種の名称について(要求)」に対して、12月20日、以下の通り回答がありましたのでお伝えします


要求内容回答の考え方(案)
1.事務系嘱託職員、契約職員から移行する職員については、正式名称を「限定正規職員」職名を「専門職」とするとのであるが、「限定正規職員」は正式名称と捨て使用するには奇妙な呼称であり、また、現行の就業規則においては「正規職員」は存在しないにも拘わらず「限定正規職員を盛り込むのは」おかしい。変更を求める。  「限定正規職員」は、労働契約法の改正等を踏まえ、新たに期間の定めのない職員の「制度」として導入するものです。
 したがって、職名は、「総合職」(正規職員・現行の常勤職員)、「専門職」(限定正規職員)、「一般職」(限定正規職員)となります。
2.病院レセプト業務等の専従となる職員について、職名を「病院専門職」とするとのことであるが、こちらについては、かねてから指摘している通り文部科学省における大学の「高度専門職・専門的職員」に関する検討や有期雇用特別措置法、入国管理における「高度専門職」の位置づけ、また本学において法人化時の大学経営の専門家として位置づけられ、制度化された「大学専門職」との関係等から疑問がある。
 ことに「大学専門職」についてはその専門的知見を尊重しない運用がなされており、今後、病院にとどまらず大学部門においても「専門職」を導入することが示唆されている状況においては、「大学専門職」の位置づけとの関係において大いに危惧を抱かざるを得ない。「大学専門職」の専門的知見を尊重しない人事・組織運用は過去において告発本の発行まで招いており、再考を求める。
 「専門職」(限定正規職員)は、「専門の知識・能力・スキルを有して特定職員においてキャリアを重ねる」という役割を担うことから「専門職」としたものです。併せて、「限定正規職員制度」の導入に伴い、職員の区分を「総合職」「専門職」「一般職」と体系化します。
 このため「専門職」は、文部科学省における「高度専門職・専門的職員」の議論や、本法人における「大学専門職」とは異なるものと認識しています。


要求事項1.に対する回答の「労働契約法の改正等を踏まえ、新たに期間の定めのない職員の「制度」として導入するものです。」「したがって~」というロジックのつながりはどういう意味がよく分かりませんが、とにかく名称としては「一般職」となり、現在の常勤職員は「総合職」となるようです。名称としては一般的なものとなり、それ自体としては「限定正規職員」よりは望ましいと思われます。今後、組合ニュース等でも名称については「一般職」あるいは「一般職(限定正規職員)」を使用することにします。

 ただ、問題は最近の組合ニュースでもお伝えしているように、処遇はこれまでと全く変わらない(しかも横浜市の嘱託職員に比べ月額給与が4万円以上低い状態)にもかかわらず、業務負担と責任をこれまでより重くしようとしているのではないかと思われる動きがあることです。労働契約法による終身雇用への転換というだけであれば「処遇が今と全く同じ」というのは、経営側のロジックとしてはあり得るのかもしれませんが、現状ですら横浜市の嘱託職員より大きく劣る処遇のまま、業務の負荷と責任だけさらに大きくする、そのための“印象操作”としての「限定正規」や「一般職」という名称の使用であれば問題です。「2017-18年度 活動方針」にあるように、当面、横浜市嘱託職員並みの給与の獲得を目指して取り組みを継続します。

要求事項2.については、当局側は、交渉中、「当面、病院以外では「専門職」は考えていないので、どうか……」というのも説得材料として挙げていたのですが、最近になって大学部門でも導入を示唆するようになり、「知財専門職」の公募も行っています(ただし、ややこしいことにこの「知財専門職」は今回の「専門職」としての雇用ではないということです)。「『大学専門職』とは異なる」という文書回答を引き出した点は成果といえますが、(交渉中の感触もそうでしたが)当局側にこの問題で変更の意思は全くないようです。

ただ、関連して一点、指摘しておくと、今や組合執行委員の2名だけになってしまった「大学専門職」である学務准教授の他にも、本学にはURA、そして今回の「知財専門職」等、文科省の検討していた「高度専門職」に該当する職が存在しています(近い将来に「IRer」も加わるかもしれません)。これらは、今回、設けられる非常勤職員の一部が移行する「専門職」とは別の存在であり、法人化時の制度設計に基づけば、本来は「大学専門職」に包摂されるはずのものですが、自らのイニシアティブによらず作られた「大学専門職制度」を嫌う市OB等の経営陣、事務局幹部により、そういった各種の人材が必要になるたびにわざわざ個別に規定を整備して設置するという非常に非効率な制度設計と運用がなされています。そういった経緯はともかくとして、本学では、今回整備・整理される「教員」、「総合職」、「専門職」、「一般職」という人事の大枠の外側に「高度専門職」に相当する複数の職が個別に存在し続けることになります。法人化後の初代理事長となる筈だった故・孫福氏の提唱していた「教員」、「(従来の)職員」、「アドミニストレーター」という新たな大学の在り方からはずいぶん遠くへ来てしまったという感慨も覚えます。

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2017年12月23日土曜日

「契約職員、嘱託職員の限定正規職員への移行について(質問)」に対する当局側回答

12月1日付組合ニュース(公開版)でお伝えした「契約職員、嘱託職員の限定正規職員への移行について(質問)」に対し、12月20日、当局側から以下の通り、回答がありました。


質問事項回答(考え方memo)
1.各部署において、来年度からの制度変更に合わせて業務整理、適正な人員配置への見直しを行うとされているが、その結果、限定正規職員の人員配置が現在の契約職員、嘱託職員の配置状況と食い違う場合、それは現在の契約職員及び嘱託職員の限定正規職員への移行に対して影響を及ぼすのか。7月の制度変更の大枠に関する合意は、「現在の契約職員、嘱託職員は基本的に全員、限定正規職員に移行する」という当局側説明を前提とするものであり、仮に人員配置の見直しが現在の契約職員、嘱託職員からの移行についてマイナスの影響を及ぼすようであれば、合意の根幹自体に関わる問題になる。  現行の契約職員、嘱託職員については、基準を満たしていれば、限定正規職員(一般職)へ転換します。
満たない場合でも現行の労働条件で「有期雇用職員」として雇用継続します。

なお、全非常勤職員を対象として、12月11日(月)及び19日(火)に説明会を開催し、限定正規職員への転換をはじめ、非常勤職員制度の見直しに関して説明します。
2.移行について「勤務実績(人事考課結果B評価以上)」との説明がなされているが、「B評価」が何時のものか、単年度か複数年度か等の説明がないが、例えば昨年度の評価のみで判断するという事なのか。また、仮にそうである場合、病気等のやむを得ない理由で評価が低くなった場合の取り扱いについてはどうなるのか。  勤務実績のB評価は直近3カ年(平成27、28、29年度)としています。
なお、勤務成績が極めて良好(A評価以上)である場合は、これを短縮し、直近2か年ないしは直近1年間の勤務実績をもって限定正規職員(一般職)へ転換することができます。
また、人事考課が行われていない場合等の取り扱いは別紙「非常勤職員制度の見直しに伴う契約職員、嘱託職員の取り扱いについて」をご参照ください。
3.平成30年4月1日時点で在職期間が3年未満の契約職員、嘱託職員について、例外的取扱いの場合を除いて「有期雇用職員」として雇用継続又は雇用終了としているが、雇用終了になる基準は何か。繰り返すが、7月の大枠での合意は「現在の契約職員、嘱託職員は基本的に全員、限定正規職員に移行する」という当局側説明を前提としたものであり、これに反する運用はあってはならないものと考える。  当初から雇用期間を定めて雇用している場合(契約期間満了)又は勤務実績が良好でないため雇用更新ができない場合を想定しています。
なお、限定正規職員への転換の考え方は上記2のとおりです。
4.上記3.で「有期雇用職員」として雇用継続となる場合について、限定正規職員への移行は、平成30年4月1日に移行する契約職員、嘱託職員と同一の基準に基づくという理解でいいか。また、その場合の在職期間については、契約職員、嘱託職員、有期雇用職員を通算するものか。  ご質問のとおりです。


(別紙)非常勤職員制度の見直しに伴う契約職員、嘱託職員の取り扱いについて
  1. 現在所属する嘱託職員の取り扱いについて
    想定質問回答
    Q1-1 現在在籍している嘱託職員の契約は、変更されるのか。

    例)H27.4.1採用した嘱託職員で、限定正規職員へ転換しない場合
    ①有期雇用職員へ一律転換:
    最大3年の雇用になるため、無期労働契約に入る前に契約終了ができるのか。
    ②現在の雇用契約を継続:
    嘱託職員として、採用日から4回更新(最大5年)
     限定正規職員への転換を希望しない職員の雇用期間は、現行制度での雇用更新の上限(更新4回:33年度で)上限まで、有期雇用職員として雇用継続できるものとします。
    ※26年度採用…30年度
    27年度採用…31年度
    28年度採用…32年度
    29年度採用…33年度(1年更新)
    Q1-2 人事考課を実施していない場合、どう判断すればいいか。
     嘱託職員の人事考課は試行という位置づけのため、人事考課を実施していない場合は、雇用更新時に相応の評価(人事考課結果B以上)をしているものとみなします。
    したがって、在職3年以上で2回以上更新している方は、限定正規職員への転換の対象となります。
    なお、期間を短縮する場合については、先にお示した考え方の通りです。
    Q1-3 障がい者雇用の職員についても取り扱いは同じか。
     現に、所属に配属されている他の嘱託職員等とほぼ同等の業務を担い、かつ勤怠等問題なければ、他の嘱託職員と同じ取り扱いとします。
    ただし、障がい者本人の障がい特性や労働能力、適性等を考慮して特定の仕事を割り当てている場合や、周囲から相当程度の支援を受けて業務を行っている場合等は、障害者雇用推進室の雇用更新の考え方に準じて判断します。
    Q1-4 嘱託職員の任期は平成30年4月でリセットされるのか。
     リセットされず、継続となります。
    例:29年4月1日採用の嘱託職員→30年4月有期雇用職員として継続
    Q1-5 平成30年度末で任期満了を迎える非常勤職員は、有期雇用職員での雇用が可能か。
     新たに有期雇用職員として雇用する場合は可能ですが、雇用期間は通算されるため、本人から無期転換の申込があった場合は、翌年度より「無期労働契約」となります。
    無期転換としないためには、クーリング期間(6か月の空白期間)が必要となります。
    Q1-6 今年度末で任期満了となる職員も限定正規職員の資格はあるのか。
     今年度末で任期満了となる職員も限定正規職員の対象となります。
  2. 休暇取得について
    想定質問回答
    Q2-1 病気休暇の取り扱いは変更するか。

    例)正規職員の場合:再付与条件あり
    非常勤職員の場合:再付与条件なし
    ※再付与条件:休暇を全て取得後職場に復帰し、復帰後引き続き3か月勤務した場合には、新たに休暇を承認することができる。
    正規職員:再付与条件あり
    限定正規職員:再付与条件あり
    有期雇用職員:再付与条件なし
  3. 現在所属するアルバイト職員の取り扱いについて
    想定質問回答
    Q3-1 アルバイトで現状5年以上となっている場合は、無期雇用の対象となるのか。ならない場合は、どのような根拠で整理しているか
     アルバイトは会計年度での雇用であり、現行の就業要綱上、更新の定めがないため、雇用期間を通算するという仕組みはありませんが、労働契約法上は通算されることから、同法第18条の規定により、同一使用人との間で有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合、労働者(アルバイト)の申込みにより、次回の更新時より無期労働契約に転換します。
    この場合、30年4月1日に雇用更新されて以降に無期労働転換の申し入れができることから、最短で31年度から現行の労働条件での無期転換になります。


上記の回答には、組合質問事項2.の「病気等のやむを得ない理由で評価が低くなった場合の取り扱い」についての説明がありませんが、口頭で「直近3年間がB以上というのはノーマルなケース」であり、「病気等のやむを得ない要因によるケースは考慮」、「個別の事情や所属長の判断に基づき総合的に判断」ことにより基本的に交渉時の「基本的に全員、限定正規職員に移行する」というスタンスに変更はないことを確認しました。

また、非常勤職員としての雇用期間が3年未満で「有期雇用職員」に移行する場合の「限定正規職員」への移行についても、同様に有期雇用職員としての雇用期限を迎えるまでにB評価が3以上になる等、機械的に3年連続でB以上とするのではなく柔軟に取り扱うことを確認しました。

今回の回答及び口頭説明で組合としては、制度全体としては、交渉時の「基本的に全員、限定正規職員に移行する」という原則が守られることが概ね確認できたものと考えますが、個別の部署により問題が発生することは考えられ得ます。来春あるいはそれ以降、スムースに限定正規職員へ移行するためにも非常勤職員の方には早めの組合への加入をお勧めします。仮に問題が発生した段階で組合に相談しても、今回のような制度変更、身分変更への猶予期間が短い場合、交渉期間が十分に取れない可能性があります。

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2017年12月19日火曜日

職員労働組合・横浜市従大学支部 2017-18年度 活動方針

12月15日、職員組合および横浜市従業員労働組合大学支部の今年度の大会を開催し、「働きやすい職場環境の確保への取り組み」等の7項目の活動方針について承認されました。財政状況の悪化等に伴い、一般教職員や学生を巡る状況は、今後さらに厳しさを増していくと予想されます。活動方針に基づき、労働組合としての社会的責務を果たしていきます。


職員労働組合・横浜市従大学支部 2017-18年度 活動方針


1.働きやすい職場環境の確保への取り組み

社会環境の激変とそれに伴う大学への要求の多様化、公的助成の削減など日本の大学を巡る環境は年々厳しさを増しています。特に横浜市立大学においては、前市長の下における法人化決定以降、全員任期制の導入、国立大学の比ではない大幅な経費の削減、市OB・市派遣幹部職員への経営権の集中による非効率な業務の増加と現場負担の増大など、国立大学法人、多くの公立大学法人に比べ非常に不安定な経営環境下に置かれることになりました。労働契約法の改正と法人化以降の取り組みの結果、固有常勤職員の任期制は廃止されたものの、それのみで固有常勤職員をめぐる諸問題が解決されたわけではなく、人材育成、人事評価、労働時間等の職場環境に関する多くの問題が残されています。また、財政の膨張を支えていた附属病院経営の悪化と今期中期計画における経営拡大方針により法人の財務状況は急速に悪化しつつあり、固有常勤職員の給与体系の変更や教員に対する給与・賞与・退職金の削減提案など、そのしわ寄せが早くも人件費に及びつつあります。雇用契約法改正による非常勤職員の限定正規職員への移行に関しても、給与の改善は伴わないままの責任と負担のみの増が懸念され、また、本当に基本的にすべての非常勤職員が以降の対象になるのかどうかについても疑念が生じています。過去の若年層に極端に偏った固有常勤職員採用と「法人財政の厳しさ」を謳いながら同時に行われている近年の経営拡大という構造的要因により、今後、法人の経営はさらに悪化することが予想されます。組合の警告に耳を傾けることなく実施されたこれらの施策のつけを、経営責任を問うことなく一般教職員、そして学生に転嫁することは容認できるものではありません。大学に働く職員の職域を代表する労働組合としてこれらの問題に取り組み、法人化時の「固有職員の処遇は市職員に準じる」という労使合意を遵守させるとともに、職員の労働環境の改善、安心して働ける職場の確保に全力を挙げます。


2.組織拡大への取り組み

法人化以降、市派遣職員の引き上げ・退職に伴う組合員の減少が続いていましたが、常勤・非常勤の固有職員の加入により減少に歯止めがかかりそうな様子も見えてきました。とは言うものの、大学にとどまっている市派遣職員は漸次退職を迎え、固有職員の組合員については、常勤職員、非常勤職員とも様々な問題を抱え、かつ多忙化により目前の業務以外に目を向けるゆとりさえ失いつつある状況で組合の維持・拡大は依然として容易ではない状況です。組合ニュース【公開版】を通じた情報提供、問題提起等によりプロパー職員の組合に対する信頼・期待は高まっていますが、これを新規組合員の獲得・組織の拡大へとつなげていく必要があります。特に、近年は新規職員の一括採用が無くなり、これに合わせて実施していた広報・勧誘活動も行われない状態が続いているため、これらの取り組みの立て直しを図ります。また、職場集会、学習会などを通じてずらし勤務の試行導入や業務の多忙化で難しくなっている組合員相互の交流を確保・促進し、組合の基盤を強固なものとします。         


3.常勤固有職員の給与体系変更、人事考課制度変更問題への取り組み

昨年度来、交渉を行ってきたこれらの問題については8月、9月に相次いで大枠で合意しました。しかし、制度の具体的設計、運用等に関しては懸念すべき点が残っており、現在も人事考課に関する異議申し立て制度の改善について交渉を行っているところです。合意時に一定期間経過後の検証についても確認しており、引き続き制度化と運用について注視して行きます。


4.嘱託職員、契約職員の限定正規職員化に伴う問題への取り組み

雇用契約法改正による非常勤職員の限定正規職員への移行に関しては、7月に大枠に関して合意しましたが、本学嘱託職員と横浜市嘱託職員で月額4万円以上に格差が拡大した給与についての改善は実現しませんでした。それにもかかわらず、正規職員化に伴い責任と負担のみの増が懸念される状況で、すでに非正規職員の限定正規職員化に伴う各部署における業務と人員配置の見直しが開始されています。これに関連して、本当に基本的にすべての非常勤職員が以降の対象になるのかどうかについても疑念が生じています。希望するすべての非常勤職員の限定正規職員への移行と常勤職員と同様の研修機会の確保を図るとともに、来年度以降の横浜市嘱託職員並みの給与の獲得を目指して取り組みを継続します。


5.大学専門職の雇用問題への取り組み

大学専門職制度は、国内の大学関係者等の大学職員の高度化への要請に対する先進的取り組みとして導入されたものでしたが、法人化直後から大学の経営権を事実上掌握した市派遣幹部職員によって、その趣旨を無視した制度運用が行われ、告発本の出版など様々な問題が起こってきました。組合執行委員でもある大学専門職2名についても3年ごとの契約更新の度に様々な問題に見舞われ、今年末の契約更新に際しては、「学務教授」への変更について、教員、固有職員、横浜市職員に比して著しく均衡を逸した実現困難な基準を一方的に示すなど、職員の高度化や専門化とは相反する人事政策上の動きが続いています。高度専門職としての適正な処遇を求め、今後も取り組みを継続します。


6.コンプライアンスに基づく労使関係確立への取り組み

度重なる交渉や組合ニュース【公開版】等を通じた指摘がある程度の影響を及ぼした模様で、法人化後の数年間の状況に比べれば担当者レベルでの対応に関してはある程度の改善が認められるものの、法人化後、事実上人事権等を掌握する市派遣幹部職員の労働3法、労働契約法を始めとする関係法令、制度等への知識・認識の不足が本学の労使関係の底流を流れており、それが人事制度、制度運用、個別の雇用関係トラブルに大きく影響を与えています。ただし、昨年度、政府の労働政策上の修正を反映したものと思われる労働基準監督署からの厳しい指導があり、法人としても組合との関係も含め法令順守の姿勢を示さざるを得ない環境下に置かれています。これも追い風として関係法令及びそこで保障された労働者・労働組合の権利の尊重に基づく労使関係の確立を求め取り組みを続けます。


7.横浜市従本部、教員組合等との連携

本学の労働環境は、法人プロパー教職員にとって非常に厳しい状態が続いています。横浜市従本部、教員組合や病院組合等との連携を深めつつ、山積する問題に取り組んでいきます。



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2017年12月1日金曜日

契約職員、嘱託職員の限定正規職員への移行について(質問)


契約職員、嘱託職員の来年度の限定正規職員への移行については、7月に大枠に関して合意しましたが https://ycu-union.blogspot.jp/2017/07/blog-post_42.html 、最近になって移行に向けて具体的な手続き、基準等が明らかになってきました。ただし、それらの中には7月の合意までの交渉段階での話とは違うのではないか等、疑問に思われる点もあり、以下の通り、当局側に説明を求める質問書を提出しました。併せて口頭で「契約職員、嘱託職員に対する説明会を実施すること」を求めました。

回答あり次第、組合ニュース(公開版)でお知らせします。

また、契約職員、嘱託職員の方で移行に関して不安や疑問等ある方は、組合までご相談ください。

2017年11月30日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

契約職員、嘱託職員の限定正規職員への移行について(質問)

市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、契約職員及び嘱託職員の限定正規職員への移行について、以下の通り質問します。

  1. 各部署において、来年度からの制度変更に合わせて業務整理、適正な人員配置への見直しを行うとされているが、その結果、限定正規職員の人員配置が現在の契約職員、嘱託職員の配置状況と食い違う場合、それは現在の契約職員及び嘱託職員の限定正規職員への移行に対して影響を及ぼすのか。7月の制度変更の大枠に関する合意は、「現在の契約職員、嘱託職員は基本的に全員、限定正規職員に移行する」という当局側説明を前提とするものであり、仮に人員配置の見直しが現在の契約職員、嘱託職員からの移行についてマイナスの影響を及ぼすようであれば、合意の根幹自体に関わる問題になる。
  2. 移行について「勤務実績(人事考課結果B評価以上)」との説明がなされているが、「B評価」が何時のものか、単年度か複数年度か等の説明がないが、例えば昨年度の評価のみで判断するという事なのか。また、仮にそうである場合、病気等のやむを得ない理由で評価が低くなった場合の取り扱いについてはどうなるのか
  3. 平成30年4月1日時点で在職期間が3年未満の契約職員、嘱託職員について、例外的取扱いの場合を除いて「有期雇用職員」として雇用継続又は雇用終了としているが、雇用終了になる基準は何か。繰り返すが、7月の大枠での合意は「現在の契約職員、嘱託職員は基本的に全員、限定正規職員に移行する」という当局側説明を前提としたものであり、これに反する運用はあってはならないものと考える。
  4. 上記 3. で「有期雇用職員」として雇用継続となる場合について、限定正規職員への移行は、平成30年4月1日に移行する契約職員、嘱託職員と同一の基準に基づくという理解でいいか。また、その場合の在職期間については、契約職員、嘱託職員、有期雇用職員を通算するものか。

以上

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2017年11月21日火曜日

人事考課に対する異議申立て手続きについて(要求)

来年度より導入される新たな人事考課制度については、組合要求に対する8月22日付の当局側回答 を受け、8月23日に妥結しましたが、組合ニュースにも書いたように現行の異議申し立て制度には問題点が多々あり、8月22日の回答でその一部については当局側も検討を約束したものの、具体的な変更については後日という事になっていました。
https://ycu-union.blogspot.jp/2017/08/blog-post_25.html
https://ycu-union.blogspot.jp/2017/08/blog-post_62.html

妥結時の回答で「現在の『人事考課に関する相談等』制度の改善及び3年を目途とした新人事考課制度の評価・検証とそれに基づく見直し、組合との協議については確実に実行されたい」として念押しをしてはおきましたが、当局側が回答で示したのはあくまでも「人事考課に関する相談窓口が効果的に運用されるよう、苦情申出期限の見直しや処理決定期間等の明示化など、人事考課制度の見直しと併せ、検討してまいります」という一部事項に関する「検討」だけであり、そのまま来年度を待っても十分な改善がなされる保証はないため、下記の通り、改めて現行の「人事考課に関する相談等に関する要綱」及び「人事考課に関する相談等に関する要綱の取扱」について、具体的な改善要求を行いました。


2017年11月16日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

人事考課に対する異議申立て手続きについて(要求)

市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、8月23日付で合意した人事考課制度見直しについて、交渉過程において異議申立て手続きについて改善を要求し、当局側からは8月22日付で「人事考課に関する相談窓口が効果的に運用されるよう、苦情申出期限の見直しや処理決定期間等の明示化など、人事考課制度の見直しと併せ、検討してまいります」との回答を受け取りました。

上記回答に基づき、再度、「人事考課に関する相談等に関する要綱」及び「人事考課に関する相談等に関する要綱の取扱」について、以下の通り具体的改善を行うよう要求します。

  1. ハラスメント等の事情が関係する場合においては、過年度の人事考課結果も対象とすること。
  2. 新たに申し出の根拠等が発見された場合、再度の申し出を可能とすること。
  3. 上記1. および2. の場合は除いて、本人による申し出期間は、最低でも開示後1か月以上とすること。
  4. 相談窓口による判断によらず、申出者が希望する者が事情聴取等の場に同席することを認めること。
  5. 人事考課結果に関する苦情処理については、必ず「人事考課の運用に関する検討委員会」に付すこと。
  6. 「昇任、昇給、勤勉手当といった任用及び勤務条件」についても対象とすること。
  7. 最低でも「苦情処理手続き」については、本学及び横浜市と利害関係を持たず労働問題、労働関係法令等に精通した第3者を加えること。

以上

以上の各項目は、ほぼ全て過去に組合に相談があった事例で実際に発生した問題点です。

1.2. については、人事考課のトラブルの背景にはハラスメントが存在しているケースが多く、そのような状況ではハラスメントにどう対応するかどうかだけで精一杯になっているのが普通で、年度末の人事考課に対してリアクションを年度内に起こすことは困難であるにもかかわらず、年度を超えた異議の申し立ては一切に認めていないことや、同様にハラスメント等が関係している場合、異議申し立ての根拠がその時点で提示できるとは限らない点に関連して改善を求めたものです。

6. についても同様で、ハラスメントが関連する事例で、ハラスメントから免れることを優先して評価が低いこと自体は仕方がないとあきらめたものの、その後のその評価に基づく給与等の処遇が納得できないレベルのものであっても、現在の「人事考課結果に基づき決定された昇任、昇給、勤勉手当といった任用及び勤務条件に関する事項は含まない」という規程により異議申し立て自体が認められないというルールの改善を求めるものです。

4. の「申出者が希望する者が事情聴取等の場に同席すること」は、聴取を行う側は複数であるのに対し、申し出る側は当事者1人であり、特にハラスメントが関連する場合、弁護士や組合の同席を希望するのは当然であるにも関わらず、「相談窓口は、事実関係の確認に必要があると判断する場合」に限り同席を認めるとしている規程の改善を求めたものです。

最後の7. の手続きへの「第3者」の参画ですが、度々要求しているものの、残念ながら当局側には受け入れる気は全くなさそうです。しかし、例えば先週、続報が各紙で報じられた山形大学の事例を見ても、学長が「私が聞いていたこと(結論)とは違っていた」(産経新聞)(11.16)と取材に対して認めたように、 関係者のみで構成された苦情対処は透明性や客観性の点で容易に問題が発生するものです。

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2017年11月19日日曜日

非正規職員より移行する限定正規職員(仮称)の名称について(要求)

現在の嘱託職員、契約職員から来年度移行する限定正規職員(仮称)については、お知らせしてきたとおり、制度の大枠については7月28日付で妥結しました。
https://ycu-union.blogspot.jp/2017/07/blog-post_42.html

ただし、細部については組合の要求に応えていない点や制度化に当たって新たに問題になった点などもあり、これらについての交渉は続いているところです。
https://ycu-union.blogspot.jp/2017/07/blog-post_27.html

11月に入り、まず、限定正規職員(仮称)の正式名称について「限定正規職員を正式名称とし、職名を一般職と専門職とする」との説明が当局側からなされました。組合としては「正式の名称として『限定正規職員』はおかしい。それに就業規則には『正規職員』は無いのに『限定正規職員』と書くのか?」と指摘しましたが、明確な回答は無かったため、下記の通り、今回要求書を作成したものです。

また、限定正規職員【A区分】を「専門職」とすることについては「大学専門職」との関係で再考を求めており、7月28日付の当局側回答でも「組合からの意見も踏まえながら、引き続き検討してまいります」とされていましたが、上記の通り「専門職」のままとするという説明があり、さらに交渉段階では「病院だけだから大学専門職との問題は生じない」としていたものが、今回大学部門にも「専門職」を導入することが示唆されたため、看過できないとして、これについても再度、要求を行う事としたものです。

2017年11月16日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

非正規職員より移行する限定正規職員(仮称)の名称について(要求)

市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、7月27日に制度の原則について合意した限定正規職員(仮称)の名称について、先般、「限定正規職員を正式名称とし、職名を一般職と専門職とする」との説明を受けました。

組合としては、上記説明については問題があると考え、以下の通り、変更を要求します。

  1. 事務系嘱託職員、契約職員から移行する職員について、正式名称を「限定正規職員」、職名を「一般職」とするとのことであるが、「限定正規職員」は正式名称として使用するには奇妙な呼称であり、また、現行の就業規則においては「正規職員」は存在しないにも拘らず「限定正規職員」を盛り込むのもおかしい。変更を求める。
  2. 病院のレセプト業務等の専従となる職員について、職名を「病院専門職」とするとのことであるが、こちらについては、かねてから指摘している通り文部科学省における大学の「高度専門職・専門的職員」に関する検討や有期雇用特別措置法、入国管理における「高度専門職」の位置づけ、また本学において法人化時に大学経営の専門家として位置付けられ制度化された「大学専門職」との関係等から疑問がある。ことに「大学専門職」についてはその専門的知見を尊重しない運用がなされており、今後、病院にとどまらず大学部門に対しても「専門職」を導入することが示唆される状況においては、「大学専門職」の位置づけとの関係において大いに危惧を抱かざるを得ない。「大学専門職」の専門的知見を尊重しない人事・組織運用は過去において告発本の発行まで招いており、再考を求める。
以上
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2017年10月12日木曜日

職場集会開催のお知らせ(10/19木:福浦)

10月5日の八景キャンパスでの職場集会には多くの組合員、非組合員の方にご参加をいただきありがとうございました。引き続き、福浦キャンパスでの職場集会を以下の通り開催します。

7月末から9月末にかけて非常勤職員人事制度常勤固有職員人事考課制度常勤固有職員給与体系と、来年度以降の人事制度の大規模変更に関する合意が成立しました。

いずれも組合ニュース(公開版)を通じて逐次、情報をお伝えしてきたつもりでしたが、あまりにも交渉の回数が多くかつ短期間に集中したために伝えきれなかったケースやその時点では書けなかった情報もあります。あらためてこれら3件について交渉の詳細やその意味、今後の影響、来年度以降の取組等について説明と話し合いの機会を設けたいと思います。

非常勤職員はどちらかと言えば昼休みの方が都合がいい人が多い一方、常勤固有職員は業務時間終了後の方が集まりやすい人が多い傾向にあるので、昼休みと業務時間終了後の2回開催します。ご都合の良い方に参加ください。

また、非常勤職員については、来年度、横浜市嘱託職員並みへの給与引き上げ要求を、常勤固有職員については、今年度中に住居手当の横浜市職員並み引き上げを求めて、それぞれ交渉を行う予定ですが、これらについてのご意見及びそれ以外の職場態勢や職場環境についてもこの機会に聞かせていただいて、以後の交渉に反映させたいと思います。組合に要望したい問題がある方は是非ご参加ください。

日程は下記の通りです。


10月19日(木) 12:15~12:45
福浦キャンパス 研究棟2階 A209セミナー室

10月19日(木) 18:30~19:00
福浦キャンパス 研究棟4階 B441セミナー室


*昼休みの回の昼食は各自でご用意ください 

*今回も事前申込制とさせていただきます。資料準備の都合もあり10月17日(火)までに、ycu.staff.union(アット)gmail.com への事前申込をお願いします。

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2017年9月27日水曜日

職場集会開催のお知らせ(10/5木:金沢八景)

7月末から9月末にかけて非常勤職員人事制度常勤固有職員人事考課制度常勤固有職員給与体系と、来年度以降の人事制度の大規模変更に関する合意が成立しました。

いずれも組合ニュース(公開版)を通じて逐次、情報をお伝えしてきたつもりでしたが、あまりにも交渉の回数が多くかつ短期間に集中したために伝えきれなかったケースやその時点では書けなかった情報もあります。あらためてこれら3件について交渉の詳細やその意味、今後の影響、来年度以降の取組等について説明と話し合いの機会を設けたいと思います。

非常勤職員はどちらかと言えば昼休みの方が都合がいい人が多い一方、常勤固有職員は業務時間終了後の方が集まりやすい人が多い傾向にあるので、昼休みと業務時間終了後の2回開催します。ご都合の良い方に参加ください。

また、非常勤職員については、来年度、横浜市嘱託職員並みへの給与引き上げ要求を、常勤固有職員については、今年度中に住居手当の横浜市職員並み引き上げを求めて、それぞれ交渉を行う予定ですが、これらについてのご意見及びそれ以外の職場態勢や職場環境についてもこの機会に聞かせていただいて、以後の交渉に反映させたいと思います。組合に要望したい問題がある方は是非ご参加ください。

なお、今回は八景のみのお知らせとなりますが、福浦についても開催します。予定が確定次第、追って組合ニュース(公開版)でお知らせします。

日程は下記の通りです。


10月5日(木) 12:15~12:45
八景キャンパス 本校舎 職員組合事務室

10月5日(木) 18:30~19:00
八景キャンパス 本校舎 職員組合事務室


*昼休みの回の昼食は各自でご用意ください 

*今回も7月の説明会の時と同様に事前申込制とさせていただきます。資料準備の都合もあり10月3日(火)までに、ycu.staff.union(アット)gmail.com への事前申込をお願いします。

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2017年9月15日金曜日

法人固有常勤職員給与体系見直し提案妥結内容

9月13日付組合ニュース(公開版)でお伝えした当局側の最終回答を受け、9月13日、この問題に対する組合としての回答を行いました。

2017年9月13日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

固有常勤職員給与体系見直し提案について(回答)

1月20日付で提案のあった固有常勤職員人事考課制度見直しについて、以下の通り回答します。


今回の当局側の提案内容については、組合としては、①本俸の上位昇給の廃止と勤勉手当への振り向けが職員のモチベーション向上につながるのか、②口頭説明では繰り返された財政上の問題が制度変更の理由であれば人件費抑制、削減の第1歩となりかねない等を懸念し交渉を続けてきたが、①については、口頭ではあるものの、定期的な制度の検証と組合との協議が約束されたこと、②については、今回の制度変更提案が人件費削減を目的とするものではないこと、及び法人職員と市派遣職員の給与等は原則同一であるべきという原則が確認されたことから、これを了解する。

組合要求に対する回答事項及び口頭での確認事項について遵守するとともに、今後、この種の提案に当たっては、その重大性に鑑み予め充分な交渉期間を設定すること、また、提案の根拠となる各種データについて提案と同時に提示するよう強く要望する。


以上

9月13日付ニュースに書いたように、この問題に関する組合の基本的スタンスは、①「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という原則を可能な限り維持すること、②将来の安定的な財政支援を含め市、市議会の充分な理解と継続的な支援の担保を得ているか疑問のある現在の経営拡大路線のつけを一般職員に回させないこと、という2点でした。

前者については、住居手当問題以降、曖昧になっていた「市職員に準じる」という原則を再確認するとともに、例外としての制度変更に当たっては「組合と誠実に話し合う」ことを確認しました。

後者に関しては、口頭では繰り返された「法人財政の悪化」のための人件費削減は目的ではなく、当局側の制度変更提案の目的は「職員のモチベーションの向上」と「安心して働き続けられる勤務条件の確保」にあるという事になりました。

以上2点の原則面での確認を踏まえ、さらに今回の制度変更が本当に「職員のモチベーションの向上」につながるかどうかについても、口頭ではあるものの正式に「定期的な検証」と「必要に応じた見直し」、それにその場合の「組合との協議」が約束され、問題がある場合の修正が約束されたことから、加えて今回の変更による影響は(少なくとも当面は)給与額全体の中では小規模にとどまることから、上記の通り、とりあえず当局側の提案自体については了解することとしました。

最終段落については、今回の提案が給与体系の見直しという重大な問題であるにもかかわらず、当局側は1月下旬提案、3月末までの合意と4月からの実施を求めるという性急なスケジュールを要求、しかも、それにも関わらず提案の裏付けとなる財政上の数値や変更に伴うモデル賃金への影響等を提案時には一切示さず、組合の要求に応じて時間をかけて五月雨式に出してくるという不思議な対応を行い、結果的には双方にとって逆に非効率的な交渉となったため、今後、そのようなことはしないよう求めたものです。

さて、固有常勤職員にとっての今回の交渉の意義ですが、最大のものは原則面において「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」ことを再確認し、さらに原則から外れる変更については組合との交渉を行うことが約束されたことです。

法人財政が附属病院財政悪化に伴い悪化していること自体は事実であり、しかも消費税、診療報酬といった大学側からはコントロールできない外部要因に大きく影響される問題であるだけに近い将来の好転を期待するのは些か虫が良いと思われます。にも拘らず、法人の経営方針は支出増を伴う積極拡大路線へと転じています。それが市、市議会、ひいては市民の(将来の財政負担も含めた)明確な支持基盤に基づくものであるのならば、むしろ喜ばしいことなのですが、現状ではとてもそうとは思えません。将来的には再び経費削減や人員削減などの要求にさらされることが懸念されます。

明治以降の日本の公立高等教育機関の歴史には、地方による国立高等教育機関整備要求や公立高等教育機関の国への移管要望、廃止等の動きなどが同時に表裏の関係として付きまとってきました。また、最近の組合ニュースでも少し紹介したように政府主導型大学再編の始まりと“戦略の醍醐味”(1) 政府主導型大学再編の始まりと“戦略の醍醐味”(2)、政府主導による国公私を超えた高等教育機関の再編への方向性(政策方針が現在のままであると仮定した場合、中教審等の検討状況や国立大学法人中期計画のスケジュールを考えると、恐らく来年度半ばには第1段階についての最初の方向性が固まり、国立大学の第5中期計画の開始に合わせて本格的な“再編”や“整理”が行われる可能性が高いと思われます)が明確になりつつあり、これらを併せると、今回獲得した「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という原則の再確認が法人固有職員の処遇を守る防波堤として機能するのは最大で10年程度ではないかと思われます。しかも、それは“最大で”であり、何もしないままに機能するものではありません。具体的には、組合員の数とそれに基づく交渉がなければそれは10年ももたないでしょう。

今回の交渉成果は少数組合としては望みうる最大限のものでした。しかし、現状の組合規模ではその成果の維持も難しい状況です(有り体に言えばいつまで活動できるか判らなくなっているボランティア団体のようなものです)。今回の交渉とその結果に意味があると思う固有職員の方には、是非、組合に加入するよう呼びかけて終わりにします。

横浜市立大学職員労働組合 加入案内

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限定正規職員(専門職)の処遇についての提案への組合回答

来年度からの非常勤職員制度の変更については、7月27日に既に一旦妥結していたのですが、このうち、病院の職員の一部(提案当初の呼称では「限定正規職員(A区分)」の人たち)について、予定よりも処遇を引き上げる(期末勤勉手当の支給率を現在の常勤職員の50%から100%へと変更)という提案が8月30日に急に出てきました。

職員組合としては、現在の非常勤職員から移行する人たち全員の処遇の引き上げを求めている関係上、一部の人とは言え予定よりも処遇が改善されることに異論はないので、了承する旨の回答を行いました(ただし、名称については再考を求めています)。

組合としては、今後、特に現在の嘱託職員の方の処遇の改善を中心に要求を続けていく予定です。


2017年9月13日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

限定正規職員(専門職)の処遇についての提案について(回答)

8月30日付で提案のあった限定正規職員(専門職)の処遇(期末勤勉手当の支給割合の引き上げ)については、これを了解します。


ただし、限定正規職員(専門職)の名称については、7月18日付「非常勤職員制度見直し提案に関する組合要求」で求めたように、文科省における「高度専門職」「専門的職員」の検討内容に照らし、また本学「大学専門職」との関係から適切なものとは思われず、組合要求に対する7月27日付当局側回答「『専門職』の『名称』については、組合からの意見も踏まえながら、引き続き検討してまいります」に基づき再考を求めます。


以上

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2017年9月13日水曜日

法人固有常勤職員給与体系見直し提案に対する組合要求への当局側回答

8月29日付組合ニュース(公開版)でお伝えした法人固有常勤職員給与体系見直し問題に関する組合の要求に対し、9月12日、当局側から以下の通り、回答がありました。


平成29年9月12日

法人職員給与体系見直しに提案についての要求に対する回答

要求項目
(H29.8.23)
回答
1.今回の提案と法人化時の「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意の関係が不明確であり、この点に関する法人の見解を明らかにされたい。法人化時の合意に対する当局のスタンスは、一昨年度の住居手当問題以降揺れ続けており、合意の存在自体の否定から現在の有効性の否定、原則としての容認まで一貫性を欠いている。組合としては、①同一業務には同一の賃金が支払われるべきという原則、②労使間の重要な合意の変更には説得力ある根拠とこれまでの経緯を踏まえた充分な交渉に基づく新たな合意の形成が必要である、③市職員の給与自体は国家公務員と同様に市内の民間との給与格差に基づいて変動するという明快で合理的な原則に基づいており、これに準じることは原理的にも経営コスト的にも合理的である等の理由から法人化時の合意は可能な限り維持すべきものと考える。  法人職員と市派遣職員の給与等については、原則同一であるべきと考えています。職員の勤務条件等の変更を検討する場合は、引き続き組合と誠実に話し合ってまいります。

なお、法人職員の給与は地方独立行政法人法により、「法人の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定めなければいけない」と規定されています。

したがって、国や横浜市、他の国公立大学の制度改正や給与改定等の動向、法人の経営状況などを総合的に勘案し、法人職員の給与等処遇を決定するものと考えています。
2.また、仮に当局側が人事給与制度の在り方について法人化時の合意に基づかない運営を考えているのであれば、市内民間事業者間の賃金との比較に基づいて決定する横浜市職員賃金に準じるという現在の在り方に代わってどのような原理原則に基づき固有職員の給与等処遇を決定していくのか、明らかにする必要がある。
3.当局側は主たる提案理由の一つとして「法人財政の悪化」を挙げている。しかしながら、この4月より始まった第3期中期計画は逆に拡大型の計画であり、第2期中期計画後半も含め、組織、施設の新増設が相次ぐことになる。施設建設や学部レベルの組織の新設は10年単位での支出を伴うものであり、その累積による支出増は少なくとも10億円単位、100億円を超える可能性もある。現時点で「法人財政の悪化」を理由に給与体系の変更を求めながら、このような経営拡大方針が取られていることは中長期的観点に立った大学経営という点から懸念を禁じ得ない。また、労働組合としては、固有職員人件費、更には教員人件費や学生経費の削減を原資とした経営拡大のごときは当然受け入れがたい。今回の給与体系の変更提案と現在の法人の経営拡大方針との関係について説明するとともに、法人が経営上の理由から諸経費の削減を行わざるを得なくなる状況に陥った場合、固有職員人件費を他に優先して削減するような行為は行わないよう強く求める。  今回の給与体系の見直し提案は、人件費の削減を目的とするものではなく、第3期中期計画における法人経営上の4つの重点取組の一つとして位置付けている「人材育成・人事制度に関する目標を達成するための取組」として、「大学職員・病院職員としてのプロフェッショナルな人材育成」に基づき、職員の専門性や業務の継続性を高めるキャリア形成を進めるとともに、職員の意欲・能力・実績をより反映できるメリハリのある人事給与制度とするため実施するものです。

これらの制度の運用を通じて①職員のモチベーションの向上、②安心して働き続けられる勤務条件の確保を実現することを目的としています。

なお、当然のことですが、給与については重要な勤務条件であり、教職員の生活を支える「柱」であると強く認識しております。



8月23日の要求以降、組合はこの要求への回答を巡って当局側と交渉を重ねてきました。

①及び②の要求に対しては、今回の提案が法人化時の「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意から外れるものであるにも拘らず、今後、当局側が固有常勤職員について「今回、一部変更するものの、それ以外の部分については市職員に準じるという法人化時の合意に沿って行くのか、言い換えると法人化時の合意は原則として維持されるのか」、それとも「新たな何らかの原則に基づき人事給与制度を設計・運用していくのか」がはっきりしないため、「法人化時の合意を維持すべきである」という立場から、その明確化を求めたものです。

この問題については、2年半前の住居手当の引き上げ問題の交渉において「法人化時にそのような合意があったことは承知していない」という合意自体の否定(組合からすると法令に定められた労使間関係の基盤自体を破壊するような発言です)から出発して、合意自体の存在は認めるが現在の効力は否定というポジションを経て、今回、ようやく「法人職員と市派遣職員の給与等については、原則同一であるべき」という原則を再確認することが出来ました。また、勤務条件等変更の際には「組合と誠実に話し合う」ことも確認しました。なお、回答の後段部「法人の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるよう~」については地方独立行政法人法第57条第3項の規定をそのまま記載してあるものです。

③に関しては、組合ニュースで繰り返しお知らせしたように、住居手当問題も含めて「法人財政の悪化」が口頭では繰り返され、実際、財務数値を見るとその通りであるにも拘らず、第2期中期計画後半から組織、設備の拡大方針へと転じており、財政状況がさらに悪化する可能性が高いため、一体何を考えているのかの説明とともに、拡大方針による財政悪化のつけを固有職員人件費に回さないよう求めたものです。

回答としては、上記の通りです。今まで繰り返された「法人財政の悪化」は何だったのかという思いはありますが、交渉の結果としての正式回答であり、今回の制度変更は「人件費削減が目的ではなく」、「職員のモチベーション向上」と「安心して働き続けられる勤務条件の確保」が目的であることになります。

後段の「給与については重要な勤務条件であり、教職員の生活を支える「柱」であると強く認識しております」については、要求の「法人が経営上の理由から諸経費の削減を行わざるを得なくなる状況に陥った場合、固有職員人件費を他に優先して削減するような行為は行わないよう強く求める」に対応するものです。上でも書いたように、将来、拡大経営のつけを一般職員に回さないよう念押しするとともに、交渉の過程で「給与の生活給としての面」についても指摘、配慮を求めました。回答は、組合として望んだレベルの明確なものではありませんが、給与の「生活給」としての面を認め、安易な給与削減は行わないことが約束されたものと理解します。

また、組合としては本来、さらに交渉を重ねる前提で、非常勤職員制度、常勤固有職員人事考課制度と同様に制度の検証とその結果に基づく組合との協議を追加で要求する予定でした(制度変更の目的が「人件費削減」ではなく「職員のモチベーション向上」であるのであれば、「本当に職員のモチベーション向上に繋がったのかどうか」の検証はさらに重要になります)が、当局側が制度実施のスケジュール上の都合で交渉の決着を求めたため、文書ではなく口頭で「制度の検証と組合との協議」を要求し、同じく口頭ではありますが「人事考課等の制度については、定期的に検証を行い必要に応じて見直します。なお、見直す必要があるときは組合とも協議をしてまいります。」との回答を得ました。

1月以降、中断を挟みつつ交渉を行ってきた固有常勤職員給与体系変更問題ですが、当局側の回答としてはこれが最終的なもので、それに対する組合の最終回答を近日中に取りまとめる予定です。


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2017年8月29日火曜日

法人固有常勤職員給与体系見直し提案に対する組合要求

法人固有常勤職員給与体系見直し問題については、昨年度の1月20日に当局側より提案があり、提案の具体的裏付けとなる各種データの提示が全くない状況から2か月をかけてようやく当局側から提案の根拠となる最低限の情報を引き出した時点で時間切れとなり、4月以降の暫定措置で合意したものの 、その後は非常勤職員制度及び常勤職員の人事考課制度について専ら交渉を重ね、この問題については交渉が再開されないままとなっていました。

しかし、最近になって当局側から「常勤職員人事考課制度の変更提案は給与体系見直し提案の一環であり、その意味で給与体系変更の交渉は続いているという認識だった」「来年度から見直しを行うために8月中に合意したい」という話が出てきました。組合としては、3月末の暫定合意時に当局側から「事務局長が交代することもあり、新局長の方針がどうなるかということもあるので少し待ってほしい」との希望があり、了承して、その後、何も言ってこないので当局側の言う「常勤職員人事考課制度の変更提案は給与体系見直し提案の一環であり、その意味で給与体系変更の交渉は続いている」という認識はなかったのですが、交渉の再開自体には異議はなく、3月末までの、ようやく提案とその当局側の根拠が示されたという段階を受けて、まず組合としての基本的な要求を8月23日、当局側に手渡しました。

組合の基本的なスタンスは、すでに4月20付の組合ニュース(公開版)「住居手当ほか固有常勤職員に関する給与体系変更提案:第6報 2月末以降の交渉及び今後の交渉に当たっての論点について」の「Ⅱ.固有常勤職員給与体系変更問題に関する組合の見解」で明らかにしており、このうち給与体系変更に直接関連する1.~3.までを改めて要求の体裁で取りまとめたものです。


2017年8月23日
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

法人職員給与体系見直し提案について(要求)

1月20日付で提案のあった人事考課制度見直しに関する提案について、以下のとおり要求します。

  1. 今回の提案と法人化時の「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意の関係が不明確であり、この点に関する法人の見解を明らかにされたい。法人化時の合意に対する当局側のスタンスは、一昨年度の住居手当問題以降揺れ続けており、合意の存在自体の否定から現在の有効性の否定、原則としての容認まで一貫性を欠いている。組合としては、①同一業務には同一の賃金が支払われるべきであるという原則、②労使間の重要な合意の変更には説得力のある根拠とこれまでの経緯を踏まえた充分な交渉に基づく新たな合意の形成が必要である、③市職員の給与自体は国家公務員と同様に市内の民間との給与格差に基づいて変動するという明快で合理的な原則に基づいており、これに準じることは原理的にも経営コスト的にも合理的である等の理由から法人化時の合意は可能な限り維持すべきものと考える。

  2. また、仮に当局側が人事給与制度の在り方について法人化時の合意に基づかない運営を考えているのであれば、市内民間事業者の賃金との比較に基づいて決定する横浜市職員賃金に準じるという現在の在り方に代わってどのような原理原則に基づき固有職員の給与等処遇を決定していくのか、明らかにする必要がある。

  3. 当局側は主たる提案理由の一つとして「法人財政の悪化」を挙げている。しかしながら、この4月より始まった第3期中期計画は逆に拡大型の計画であり、第2期中期計画期間後半も含め組織、施設の新増設が相次ぐことになる。施設建設や学部レベルの組織の新設は10年単位での支出を伴うものであり、その累積による支出増は少なくとも10億円単位、100億円を超える可能性もある。現時点で「法人財政の悪化」を理由に給与体系の変更を求めながら、このような経営拡大方針が取られていることは中長期的観点に立った大学経営という点から懸念を禁じ得ない。また、労働組合としては、固有職員人件費、更には教員人件費や学生経費の削減を原資とした経営拡大のごときは当然、受け入れがたい。今回の給与体系の変更提案と現在の法人の経営拡大方針との関係について説明するとともに、法人が経営上の理由から諸経費の削減を行わざるを得なくなる状況に陥った場合、固有職員人件費を他に優先して削減するような行為は行わないよう強く求める。
以上
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2017年8月26日土曜日

人事考課制度見直し提案に対する組合要求への当局側回答

6月30日に固有常勤職員の人事考課制度に関する当局からの変更提案があり、それに対して7月18日付で組合から要求を行いました。

それ以降、当局側と3項目の要求事項について交渉を続けていたのですが、8月22日に当局側より最終的な回答を受け取りました。

回答は以下の通りです。


平成29年8月22日

人事考課制度見直し提案に対する組合要求への回答

組合要求内容当局側最終回答
1.新制度の目的として掲げている「職員のモチベーション向上」に関連し、一般職員による管理職評価を同時に導入すべきである。これは人事考課全体の適切性の担保のためにも有効であると考える。  管理職自らの気づきを促し、人材育成や組織活性化に活用することを目的とする「360 度フィードバック」について、来年度からの導入を視野に入れながら検討してまいります。
2.考課内容について異議がある場合の申し立て制度を整備することが必要である。異議申し立て機関は、学外の、本学や横浜市と利害関係を持たない、人事に精通した複数の外部者を中心として構成されること。  人事考課結果に対する苦情の多くは、本人の自己評価と上司の評価との間で乖離が生じた場合に具体的説明がなされないなど、フィードバックが十分に機能していない場合にあることから、全管理職を対象に実施する人材育成研修等を通じて徹底されるよう周知します。
また、各所属の人事担当課による相談窓口の周知を図るとともに、人事考課に関する相談窓口が効果的に運用されるよう、苦情申出期限の見直しや処理決定期間等の明示化など、人事考課制度の見直しと併せ、検討してまいります。
なお、人事に精通したとしても、外部者は必ずしも本学の人事制度や実態に通じているものではないことから、外部者を中心とした異議申し立て機関については、慎重に考えたいと思います。
3.人事考課制度をより精緻に設計、運用することについては民間企業において多くの先行事例が存在し、少なくともその一部については、実施上の負担に伴う制度の形骸化や構成員の評価に対する不満の高まりなどの問題につながっている。仮に新制度について当局提案通りに実施に移す場合、3年程度の実施の後、その成果、課題について当局・組合側で評価を行い、必要があれば修正等を行うこと。  制度の運用にあたっては、3年を目途に評価・検証を行い、その結果を学内へ公表するとともに、組合からの意見も取り入れながら必要な見直しを検討します。



いくつか解説を加えると、1.については、極端なトップダウン型組織において人件費縮小を前提とした評価制度を実装すると、正確でない評価(そもそもメンバーシップ型雇用において“個人の成果”を正確に測定・評価できるのかという問題もありますが)や人間関係に影響された評価などによる負の影響が大きくなるため、一般職員による管理職評価を導入することにより、それを緩和する目的で要求したものです。

それに対して当局側が検討を表明した管理職に対する「360度評価」は、そのような効果もない訳ではありませんが、直接的にはそのような趣旨のものではなりません。組合が「360度評価」を要求しないもう一つの理由は“コスト”の問題です。大学に“アカウンタビリティ”が持ち込まれて相当な時間が経過しましたが、アカウンタビリティのための評価の負担、トレードオフの関係になることもある改善のための評価の後退等の問題が生じています。法人化以降のトップダウン型組織における弊害は組合としてもいやというほど味わってきたので、その対応は必要なものと考えていますが、「360度評価」については、コストに見合うほどの意義があるのか疑問を持っており、「トップダウン型組織における人件費縮小を前提とした評価制度」の弊害の緩和を優先した要求としています。

2.については、当初、昨年度の給与体系の変更提案時に新たな人事考課制度についても検討するとされていたため、セットで異議申し立て制度も新たなものになると考えて上記のような内容で要求したものです。しかし、当局側にはそのような意図は無く、かつ、回答のように外部者を入れること自体受け入れられないというスタンスであったため、途中で現行の「人事考課に関する相談等」制度の改善へと要求を変更しました。

具体的には、①市よりもはるかに小規模な大学の事務局において、学内の上位者のみで構成された機関へ一般職員が異議申し立てを行うことは心理的に困難、②「一般相談・苦情相談」の処理期間が定められておらず、勇気を出して申し出を行ってもこの段階で店晒しにされる、③本人による申し出の期限が短すぎる(考課結果等開示後の1週間or2週間)、④「考課者」自体が考課に当たるには不適切な人物である場合が想定されていない(パワハラの当事者であるケースなど)として、4項目の改善を求めました(ちなみにこれらは実際に組合に相談等があった事例です)。最終的な当局側の回答は②、③について問題の存在を認め改善を検討するというものになりました。①については、せめて手続き的な透明性や公平性の担保のために、2段階になっている現行制度の2段階目「苦情処理手続き」だけでも1人でいいから外部者を入れるようにと要求しましたが、当局側を翻意させることは出来ませんでした。

3.については、当初の当局側回答にはなかった評価・検証を行う時期の明示、結果の学内への開示について最終的に勝ち取ることが出来ました。

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人事考課制度見直し提案に対する組合回答

上記のような当局側回答を受けて、8月23日、この問題について最終的に組合として回答を行いました。

①問題点は依然としてあるものの、当初予想していたような大幅な変更ではなく、現行制度の延長上にある修正であること、②異議申し立てにおいて外部者を入れること以外については、基本的に組合の要求に近い修正がなされたこと、③特に3年程度を目安として評価・検証とそれに基づく見直しが約束されたため、問題があれば制度の修正も可能であること、以上の理由から、今回は当局側回答の実行を条件として当局側提案を了解したものです。

2017年8月23日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

固有常勤職員人事考課制度見直し提案について(回答)

6月30日付で提案のあった固有常勤職員人事考課制度見直し提案について、以下の通り回答します。


今回の当局側の提案内容については、7月18日付要求に示したように組合としては複数の問題点があるものと考えるが、組合の懸念事項に対して概ね対応が約束され、3年を目途とした評価・検証とそれに基づく見直し、及び組合との協議が明確にされたことから、今回の提案内容については基本的に了解するものとする。

8月22日付の組合要求に対する回答事項、特に現在の「人事考課に関する相談等」制度の改善及び3年を目途とした新人事考課制度の評価・検証とそれに基づく見直し、組合との協議については確実に実行されたい。


以上

懸念点という事で以下2点ほど付け加えておきます。

第1に、今回の提案も含めた本学の職員の育成、評価は、基本的に職能資格制度をベースに目標管理、ACPAの大学マネジメント・業務スキル基準表などが混合されて作られているようですが、職能資格制度にしてもACPAの基準表にしても、基本的にまず職場の「仕事」の分析が必要になります。これを「ジョブ」を単位としてやってしまうと日本のメンバーシップ型雇用の働き方と適合しないので、職能資格制度を理論化した楠田丘は、より細かい「課業(タスク)」を単位として各現場で分析すること(「職務分析」ではなく「職務調査」)を提唱しました。それ自体は理に適っているのですが、「職能資格制度」を導入したはずの多くの日本企業では、実際には「職務調査」は実施せずに職能資格制度を導入しました。恐らくは、調査の負荷とメンテ、それに基づく運用のコストを嫌ってのものなのでしょうが、同様に負荷を嫌って制度の“空洞化”に至った場合、人件費抑制を基調とした“成果主義”との組み合わせは評価と分配に関する不満を引き起こす可能性があり、逆に真面目に「職務調査」に取り組み、厳密な評価とそれに基づく配分に取り組めば、それ自体のもたらす負荷が組織の活動を圧迫する懸念があります。これらの問題については交渉の過程で指摘しましたが、交渉段階で人事課に指摘しても担当課レベルで受け入れられるような話でもなく、とりあえずは実施とそれに基づく評価・検証を見守ることにしたものです。

第2に、労働組合の主要な役割は、今回のような従業員に関わるシステム・制度というマクロの枠組みに関して従業員の立場に立って交渉を行うことですが、従業員全体ではなくシステム・制度の中での個別の従業員の問題への対応も重要な役割です(むしろ実際には法人化後、こちらの方が大きなウェイトを占めてきました)。今回の制度については、上記のように問題点は依然としてあるものの、現行の異議申し立て制度の改善と3年程度の実施後の検証・評価及び必要な見直しを約束させることが出来たのでとりあえず実施に同意しましたが、3年程度の間はこの枠組みで動くことになり、それに伴う問題の発生が予想されます。

特に現行の「人事考課に関する相談等」制度については、前述のように少なくとも一部について改善が約束されましたが、それで本当に機能する保証はありませんし、全体として改善されたとしても個別に問題のあるケースが発生することは十分にあり得ます。過去において組合に相談があった事例においては、組合要求に対する当局側回答の解説部分で示した4つの問題点のいずれかにぶつかり、申し立てを断念するか、申し立てても店晒しにされ自然消滅というパターンに終わってしまいましたが、今回は少なくとも当局側が問題の存在を認め、一部については改善が行われることから、組合としても以前よりも交渉の余地が広がることになります。新制度下での人事考課において、「納得できない」「おかしい」と感じた職員の方は組合までご相談ください。

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2017年8月23日水曜日

係長・課長補佐級法人職員の給与体系の見直し提案に対する組合回答

固有常勤職員(一般職員)の人事考課制度に関する当局からの変更提案については、7月19日付組合ニュース(公開版)や説明会等を通じお知らせしてきましたが、その提案があった同じ6月30日付で固有職員の係長・課長補佐級についても制度変更の提案が出ていました。

具体的な変更内容は、昨年度の1月20日付で提案があった固有常勤職員に関するものと同様で、①上位昇給の廃止とそれによって浮いた原資の評価に基づく勤勉手当への振り向け、②下位昇給について、C評価の場合は2号昇給、D評価の場合昇給無しへと変更、というものです。

組合としては、常勤固有職員については、(1月から4月にかけての組合ニュース(公開版)で集中的に報じたように)様々な問題があるとして現在も交渉中ですが、一般職員に比べ給与格差の大きい管理職については一般職員とは扱いが異なるものとして、8月22日付で提案に同意する旨の回答を行いました。

ただし、人事給与制度とその運用に関しては定期的な検証と改善が不可欠であり、その実施と結果について組合に提供することを求めるとともに、提案に含まれていない課長以上の取り扱いについても“適切に”行うべきであるという組合としての見解を表明しました。これは4月20日付の組合ニュース(公開版)で示した固有常勤職員給与体系変更交渉に関する組合の見解にも書いたように、財政難等の問題について、経営責任を負わない一般職員へのしわ寄せが上級管理職や経営者より重くなるようなことがあってはならない、責任の重さは地位に比例するものであるという考えに基づくものです(ちなみにこの原則がおかしくなると、先日NHKが放映したインパール作戦のようなことが起こりやすくなります。何しろ本来責任を取るべき人間が責任を負わなくなり、にもかかわらず権限だけは持っているわけですから)。


2017年8月22日
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

係長・課長補級法人職員の給与体系の見直し提案について(回答)

6月30日付で提案のあった係長・課長補級法人職員の給与体系の見直し提案について、以下の通り回答します。

今回の当局側の提案内容は常勤固有職員について提案されている内容と同様のものであるが、給与等での格差がある一般職員とはその意味合いが異なるものと考えられることから提案内容については了解する。

ただし、同時に提案されている常勤固有職員の人事考課制度同様に、人事給与制度とその運用に関しては定期的な検証と改善が不可欠であり、これを行うとともに検証結果については組合にも提示するよう求める。また、法人経営の悪化等に伴う給与等、処遇の引き下げについては、一般職員や下級管理職にのみ実施されたり、上級管理職が一般職員や下級管理職よりも軽い引き下げに留まることなどは組織における責任の観点から不適切であり、課長以上についても適切な対応を行うよう求める。

以上

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政府主導型大学再編の始まりと“戦略の醍醐味”(2)

さて、今回は、前回の最後に挙げた「①それが(国大協も書くような)カリフォルニア州立大学システムやフランスの大学共同体のようなものを目指すものなのか、それともそちらは表看板で本当のモデルは別にあるのか」という問題について、ごく簡単にではありますが、書いてみようと思います。

国大協の「高等教育における国立大学の将来像(中間まとめ)」は、国立大学の経営形態の在り方について「アメリカのカリフォルニア大学システムやフランスの複数大学による連合体の成果や課題を検証し、それらを参考にしながら、我が国の状況に合った様々な経営形態の在り方を研究する必要がある」(P31)としています。前者、カリフォルニア州の「カリフォルニア大学」「カリフォルニア州立大学」「コミュニティ・カレッジ」の3層構造とバークレー校、ロサンゼルス校等の10大学から成る「カリフォルニア大学システム」については、あまりにも有名なので省略します。

後者、フランスの「複数大学による連合体」ですが、例えば連携・連合の代表的な枠組みである「PRES」(研究・教育拠点)の場合、2006年に制度化、「地理的に近接する高等教育・研究機関の合意によって設立」され(大場、2014)1 、その目的は「効率(efficacité)、認知度(visibilité)、魅力(attractivité)の向上とされる。PRES の構想発表資料(MEN, 2006)16において高等教育省は、激しい国際競争の下で、高等教育機関が臨界規模(taille critique)を達成することによって高い認知度が得られ、それが魅力をもたらすであろうことを強調している。すなわち,PRES の目的の中に協働による効率向上は含まれているものの、規模拡大によって認知度を高めること、そしてその結果としてフランスの大学の魅力を高めることが主たる目的であることが見て取れる」(同)とされています。

特徴としては、①すべての高等教育機関は、「PRES」及び「連盟体」、「統合」の3つの形態のいずれかを選ぶよう求められた、②高等教育機関だけでなく、研究機関、さらには連携機関として地方自治体や企業も参加できる、③構成高等教育機関だけでなく、「PRES」としても学位を出すことができる等を挙げることができます(「PRES」は2013年、政権交代に伴い見直され、「COMUE」(大学・高等教育機関共同体)という新たな制度が導入されました。「PRES」及び「COMUE」とその周辺情報については広島大学の大場淳先生が複数の論文を書かれているので、詳細はそちらをご参照ください)。

カリフォルニア大学システムが州政府の特定の政策目的への奉仕のために作られたものではない(むしろ逆)のに対して、「PRES」の場合、一定の政策目的に基づき他の2つと併せた3つの選択肢からいずれかを選び参加することを強制、一定の地理的領域に基づく、自治体・企業との連携・協力を制度的に促進する、構成高等教育機関の独自性と学位授与権を始めとする「PRES」としての実体性も持っている等、現在の日本の“大学改革”の文脈に適合しているようにも思えます。

ただし、「PRES」の場合、上でも引用したように「目的の中に協働による効率向上は含まれているものの、規模拡大によって認知度を高めること、そしてその結果としてフランスの大学の魅力を高めることが主たる目的」であり、その点で現在の日本の“大学改革”の一部としての国公私立を超えた大学再編の方向性、特に重大な問題となるであろう「大学セクターの縮小」(専門職大学は除く)、「学士課程入学定員の削減」、「国家の諸活動のうち経済面への直接的効果を基準とした専門分野構成の再編」等との関連性はあまり強くはありません。

その点に関しては、実はすぐ隣の韓国にまさにそのものの先行事例が存在しています。

韓国と日本の高等教育政策を比べると同じ東アジア地域にあることや構造的類似性・政策全般の類似性に起因するものか、非常によく似た傾向を見出すことができます。

いわゆる大学の“構造改革”についても、2004年の「大学構造改革方案」以降、国立大学の縮小、大学の統廃合推進、種別化、定員削減等に着手し、特に朴前政権下では、政府による強力な指導の下、6段階の大学評価に基づく公的資金の配分や入学定員の強制的削減、最低評価を2回受けた場合“退出”を促す等の措置が行われました。この朴前政権による入学定員削減や大学の“退出”は、その第1期期間(2014年~2016年)で予定した約4万人を上回る約4万4千人の入学定員削減を達成しました。また、評価に対応するための個別大学の取り組みは、結果として医系や理工系の充実、人社系・芸術系等の縮小につながり、中には深刻な学内の混乱や対立を生んだ例もあるようです。

この韓国の事例は、「政府による主導下」での「政府の基準に基づく評価」による公的資金配分や定員削減、さらに、その過程で政府が望むような大学のガバナンスの在り方や起業・グローバル化教育等への取り組み、専門分野構成の再編、統廃合などへと各大学を誘導することが可能になるという点で、ここ数年の高等教育政策に、(「政策枠組み」という点でも、具体的な「政策内容」という点でも)非常に親和性が高いように思われます。

ただ、この問題に関して、韓国と日本には一つ大きな違いが存在しています。韓国の大学入学定員は朴前政権がこの政策に着手する直前の2013年で約56万人、それに対して“学齢人口”が2013年の約63万人から2023年には約40万人と急減、韓国の入学定員全体を削減しない限り、例え大学進学率が100%になっても2023年には約16万人の欠員が発生するという状況にありました。それに対して日本の場合、最近各所で見かけますが、文科省の試算では大学進学率が現状より約10%上昇すれば、日本の大学全体としては現在の入学定員が維持可能です。

この点を割り引いて考えると、来るべき「政府主導型大学再編」はフランス型大学連合を表看板に、韓国の大学再編をマイルドにしたものを裏の看板として実行に移されることになるのかもしれません。

(菊池 芳明)

1 大場淳(2014),フランスにおける大学の連携と統合の推進 ─研究・高等教育拠点(PRES)を中心として─,『大学の多様化と機能別分化』広島大学高等教育研究開発センター


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2017年8月11日金曜日

政府主導型大学再編の始まりと“戦略の醍醐味”(1)

現在、常勤固有職員に関連した複数の問題について交渉中ですが、非公式折衝が中心となっていることもありニュースとして公開できる段階にありません。盆明け以降に改めて色々とお伝えすることになると思います。

そういう次第で、相変わらず交渉に追われている状態なのですが、その間にも高等教育政策、高等教育システムに関する重大な動きが続いています。一昨年のいわゆる“国立大学文系廃止通知”の衝撃はなお記憶に新しいところですが、国立大学にとどまらず、国公私立という設置種別を越えた政府主導の、言い換えれば“トップダウンによる”大学再編がとうとう本当に始まろうとしていることを示す出来事が相次いでいます。


3月 中教審諮問「我が国の高等教育に関する将来構想について」:「今後の高等教育の構造の在り方について(中略)国公私の設置者別の役割分担の在り方や国公私の設置者の枠を超えた連携・統合等の可能性なども念頭に置きつつ御検討くださいますようお願いします」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1383080.htm

4月 経済財政諮問会議(第6回):「設置者(国公私立)の枠を超えた経営統合や再編が可能となる枠組みを整備すべき(一大学一法人制度の見直し(国立大学法人)、設置基準の改正等を通じた、同一分野の単科大学間や同一地域内の大学間の連携・統合等)。また、経営困難な大学の円滑な撤退としっかりと事業承継できる制度的な枠組みを検討すべき」(有識者議員提出資料) 「国公私立の枠を超えた連携・統合の可能性の検討」(文科大臣提出資料)    
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0425/agenda.html

5月 私立大学等の振興に関する検討会議「私立大学等の振興に関する検討会議「議論のまとめ」:「例えば各法人の成り立ちや独自性を活かし一定の独立性を保ちつつ緩やかに連携し、規模のメリットを活かすことができる経営の幅広い連携・統合の在り方、国公私の設置者の枠を超えた連携・協力の在り方、事業譲渡的な承継方法など、各私立大学の建学の精神の継承に留意しつつ、より多様な連携・統合の方策について検討していく必要がある
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/073/gaiyou/1386778.htm

6月 国立大学協会「高等教育における国立大学の将来像(中間まとめ)」:「全国の国立大学が、地方自治体との緊密な連携の下に、地域の人材育成と地域の個性・特色を生かしたイノベーションの創出に貢献し、地域の国公私立大学の連携の中核拠点としての役割・機能を果たすことが求められる」「教員養成、理工系人材育成、医師養成等において(中略)当該分野のすべての大学の連携・共同の拠点としての機能を果たすことが期待される」「学部の規模については縮小も検討する必要があるが、進学率が低く、進学者の国立大学の占める割合が高い地域にあっては、更に進学率が低下することのないように配慮すべきである」「国立大学の枠にとらわれず、公私立大学や高等専門学校をはじめとする各種教育研究機関とも連携し、特に地方の国立大学は地域の高等教育機関の中核としての機能を果たすことが求められる」「全都道府県に(中略)国立大学(キャンパス)を置くという基本原則は堅持すべきである」「機能的に重複して保有することとなる資産については、整理・有効活用のほか、再配置を検討することにより、広域的な視野から見た国立大学(キャンパス)の機能強化につなげる必要がある」「複数の地域にまたがって、より広域的な視野から戦略的に国立大学 (キャンパス )間の資源配分、役割分担等を調整・決定する経営体を導入することも検討すべき
http://www.janu.jp/news/teigen/20170615-wnew-teigen.html

8月 国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議(第10回)「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議「報告書(案)」の概要」:「各地域の今後の教員需要の推移等に基づく入学定員見直し」「近隣の国公私立大学と連携した一部教科の教員養成機能の特定大学への集約」「総合大学と教員養成単科大学など、大学間で教員養成機能を統合
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/077/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2017/08/03/1388638_001_1.pdf

*下線はいずれも筆者


上記のうち、特に重大な意味を持つと思われるのは国大協の「高等教育における国立大学の将来像(中間まとめ)」です。国大協は、国立大学の団体として国、文科省の意向、政策動向を無視することができないと同時に、大学の自治や政府とは異なる“公共性”の観点からその独自性の確保をも志向するという、複雑な立場にあります。

他の3つが政府・文科省の機関であり、その意向が反映されるのは当然であるのに対して、その国大協が「設置者種別を越えた連携」「学部規模縮小の可能性」「各都道府県には国立大学ないしキャンパスを存続」「複数大学にまたがる経営体導入の可能性」を“自発的に”盛り込んだ「グランド・デザイン」を発表したことは重大で、国立大学法人化時と同様に、事実上、政府路線を既定のものと受け入れ、その前提での対応へと舵を切った可能性が高いのではないかと思います。そして、具体的にはその第1段階は「ブロック単位で国立大学を法人統合、ただし、現在のキャンパスは基本的にそのまま維持」というもののようです。

また、国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議の報告書(案)については、最も実行しやすい「国立大学教育学部再編」という領域で、早速現実化のための布石が行われたという事ではないでしょうか(それにしても文書冒頭の「国立教員養成大学・学部はもとより、都道府県・政令指定都市教育委員会、国、関係する国公私立大学、大学及び附属学校の連合組織等におかれては、本報告書が求める趣旨を汲み取り、必ずしも明示的に言及していない対応策も含めて多様な可能性を検討し、可能なものから速やかに実行に移すよう努めていただくことを期待する」というのは、何とも含蓄があるというか、意図を勘ぐりたくなる文章です……)。

大学の再編や大学数の削減等は別に今回初めて出てきたわけではなく、国立大学法人化時にも、それ以降も度々浮上してきたものですが、18歳人口のクリティカルな線までの減少、好転の見込みの立たない財政状況、経済界の圧力等の環境下、上記のような様々な“兆候”は、今度こそ来るべき時が来たということだと考えます。

問題は、①それが(国大協も書くような)カリフォルニア州立大学システムやフランスの大学共同体のようなものを目指すものなのか、それともそちらは表看板で本当のモデルは別にあるのか、②国立大学のみにとどまらない国公私の設置種別を越えた再編・統合とはどのようなものになるのか、③そして個別の大学はどうすべきか、といったあたりですが、それについてはまた稿を改めてという事にしたいと思います(いつになるか、ちょっと自分でもわからないのですが……)。

(菊池 芳明)

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2017年7月28日金曜日

非常勤職員制度の見直しに対する要求への当局側回答

前回の組合ニュース(公開版)でご紹介した組合からの要求に対して以下の通り、当局側の回答がありました。

要求内容最終回答
1 現在の嘱託職員から移行する限定正規職員(B区分)(短時間勤務)及び契約職員から移行する限定正規職員(B区分)(フルタイム勤務)の給与総額は、直近の情報では現状のままとされているが、特に嘱託職員から移行する限定正規職員(B区分)(短時間勤務)について、組合としては、給与総額の増額が必要であると考える。理由としては、①現在の本学の嘱託職員の月額給与が12万円台であるのに対して横浜市における嘱託職員の月額給与は16万円台になっており、両者の差が非常に大きくなってしまっている、②正規職員としての分類を変更するにもかかわらず、神奈川県最低賃金に若干の上乗せをしたレベルの現在の水準のままとするのはおかしい、③正規職員への変更に伴って手当が追加になるが、給与総額はそのままとするため本俸の額はかえって現在よりも低くなることになってしまう等である。せめて本俸部分を横浜市嘱託職員並みに引き上げるべきである。  今回の非常勤職員制度の見直しは、雇用期間の定めのない限定正規職員の導入など無期労働転換に伴う雇用の保障を最優先に考えたものです。
なお、制度改正後の給与額については、引き続き、協議課題であると認識しています。
2 現在の契約職員から限定正規職員(B区分)(フルタイム勤務)へ移行する職員のうち、当初提案通りでは移行により給与年額が減少する職員について現給保障を行う旨の変更案が示されたが、現給保障は該当者の退職時まで継続すること。  今回の変更案は、円滑な制度導入を図るための移行措置として、当面、現行制度の給与年額を保障するものです。
なお、現給保障の見直しをする場合は改めて協議します。
3 限定正規職員の休暇等の福利厚生及び研修については、常勤職員と完全に同等とすること。  限定正規職員の休暇制度、福利厚生は常勤職員と同等と考えています。
研修等についても、今後、組合からの意見も踏まえながら、人材育成体系に位置付けるものとします。
4 限定正規職員(A区分)について、名称を「専門職」とする修正案が示されているが、①国内においても従来の大学事務職員とは異なる専門性を持ったスタッフの必要性についての認識が浸透、文科省において「高度専門職」「専門的職員」といった名称でその制度化が検討されている状況下、今回のような位置づけで「専門職」という名称を使用することは、予想される日本の大学における「専門職」の位置づけとの関係で問題が生じる可能性があること、また、②本学において「高度専門職」として設置されている「大学専門職」との関係から望ましくなく、他の名称に変更すること。  限定正規職員【A区分】は、「専門の知識・能力・スキルを有して特定職域においてキャリアを重ねる」と定義していることから「専門職」としたものです。
なお、「専門職」の「名称」については、組合からの意見も踏まえながら、引き続き検討してまいります。
5 新制度発足後の新規採用について、限定正規職員(B区分)は、試用期間として有期雇用職員を経るとしているが、このような制度設計、運用は職務内容の異なるはずの両者の片方を試用期間のための職とすることの不自然さという点、また過去の類似事例の判例(最三小半平2.6.5神戸弘陵学園事件)からも問題がある。一般的な試行期間に比べ非常に長期間にわたるという点も問題である。試用期間を設定するのであれば、通常の場合と同様に直接、限定正規職員(B区分)として採用、常識的な試用期間とすべきである。  「有期雇用職員」は雇用期間を原則3年以内とし、業務継続の必要性が生じた場合に、本人の意向や勤務実績等を踏まえ、限定正規職員【B区分】(一般職)に転換するものです。必ずしも、すべての者が限定正規職員【B区分】(一般職)に転換するものではないことをご理解ください。
なお、制度の運用が進む中で、将来的に限定正規職員【B区分】として、当初から採用することも考えられます。その場合は試用期間として位置付けることを含め、改めて協議したいと考えます。

1.と2.については、移行後の現在の嘱託職員と契約職員の総人件費を現在と同レベルに抑える前提がまずあったのではないかと推測しています。当初、嘱託職員が移行する限定正規職員B区分(短時間勤務)の給与年額を現在より若干増、契約職員等が移行する限定正規職員B区分(フルタイム勤務)は逆に約170人が現在よりも給与年額が減という提案だったのですが、限定正規職員B区分(フルタイム勤務)について「現在よりも減るのはおかしい」という組合の指摘、予想される該当者の反発や退職などへの対応で限定正規職員B区分(フルタイム勤務)の年額給与をやはり現在通りとしたものの、そうなると限定正規職員B区分(短時間勤務)の引き上げ分の原資が新たに必要になってしまうという事で、こちらについても現行通りの額へと変更したのではないかと思われます。

組合としては、要求の通り、①現在より給与が減る人が出るのはおかしく、現給を保障すべき、かつ②現在の嘱託職員から移行する限定正規職員B区分(短時間勤務)については現在の給与レベルが低過ぎ、横浜市の嘱託職員との差もあまりにも大きく、せめて市の嘱託職員並みに引き上げるべきである、というスタンスで交渉を行ってきましたが、当局側の(恐らく)移行後の現在の嘱託職員と契約職員の総人件費を現在と同レベルに抑えるという前提を崩し、新制度移行と同時に給与を引き上げさせることは出来ませんでした。しかしながら、限定正規職員B区分(短時間勤務)の給与については今後も引き続きの協議課題であること、限定正規職員B区分(フルタイム勤務)の現給保障の変更を行う場合は組合との協議が必要であることを認めさせたので、来年度以降、この問題についての取り組みを継続することが可能になりました。特に限定正規職員B区分(短時間勤務)の給与額を少なくとも横浜市嘱託職員並みに引き上げることについては重点的に取り組んでいきます。

また、限定正規職員の福利厚生及び研修に関しては、研修の人材育成体系への位置づけについて、今後の検討で「組合の意見も踏まえる」旨を認めさせることが出来たので、今後、適切な制度化が行われるように取り組みを続けます。

最後の5.ですが、組合の指摘は、限定正規職員B区分の(現在の嘱託職員、契約職員を除いた)新規採用について「必ず有期雇用職員を経る」という制度設計になっている点に関して、限定正規職員Bになるための他のルートが用意されていない以上、過去の判例からはその有期雇用の期間は実際には「無期雇用の試用期間」の性格を持つものとして捉えられ、有期雇用職員としての任期が終わっても通常の有期雇用の終了のルールは適用できず、終身雇用の試用期間終了時の本採用拒否の場合の基準、いわゆる解雇権濫用法理の適用を受けることになるのでは、というものです。言い換えると、形式的に有期雇用として簡単に契約終了ができるようにしても、実際には無期雇用の試用期間に当たるものと解され、簡単に解雇することは許されないのでは、という指摘です。当局側の回答は、この指摘に正面から答えたものとはなっていないと思いますが、とりあえず組合としては現段階では上記のような問題点の指摘にとどめ、今後の運用を注視していくこととしました。

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非常勤職員制度の見直しに対する組合回答

上記の組合要求に対する当局側の最終回答を受け、今回の制度変更について、非常勤職員が正規職員化され、60歳ないし65歳までの雇用も保証されるようになることは現在に比べ前進であるとして、以下の通り、当局側回答に関する誠実な対応を前提として提案を了解する旨の回答を行いました。

今後は、「組合の意見も踏まえる」旨約束された限定正規職員の研修の在り方、および限定正規職員A区分の名称について、来年度の新制度発足までに引き続き協議を行うとともに、来年度以降の限定正規職員B区分(短時間勤務)の給与引き上げについて重点的に取り組んでいきます。

繰り返し呼び掛けていますが、組合の交渉力の最大の源泉は組合員数です。来年度以降の限定正規職員B区分(短時間勤務)の給与引き上げの実現のためにも、非常勤職員の方には、是非組合への加入を検討ください。


2017年7月27日
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

非常勤職員制度見直し提案について(回答)

2月28日付で提案のあった非常勤職員制度見直しに関する新提案について、以下のとおり回答します。


今回の当局側の非常勤職員制度の有期雇用職員及び限定正規職員への再編提案は、法人化以降、組合が継続して行ってきた非常勤職員の任期制、雇い止め撤廃等の処遇改善要求の趣旨に沿うもので、その点は評価できるものである。

ただし、当局側提案については、すでに組合より要求しているように看過できない問題点も存在しており、組合側要求に対する7月27日付回答の内容について誠実に対応すること、特に現在の嘱託職員の移行後の給与について、横浜市嘱託職員の給与額と比較して大きな格差が生じている点を踏まえ、その改善について引き続き交渉を行うことを前提として、来年度よりの新制度への移行を了解する。


以上

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2017年7月19日水曜日

非常勤職員制度の見直しに対する要求

非常勤職員制度の見直しに関する質問への当局側回答、それに説明会等で非常勤職員の方々から寄せられたご意見・要望も踏まえ、以下の通り5項目の要求を行いました。当局側も回答を約束しましたので、回答あり次第、組合ニュースでお伝えする予定です。

2017年7月18日
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

非常勤職員制度見直し提案について(要求)

非常勤職員制度見直し提案について、以下のとおり要求します。

  1. 現在の嘱託職員から移行する限定正規職員(B区分)(短時間勤務)及び契約職員から移行する限定正規職員(B区分)(フルタイム勤務)の給与総額は、直近の情報では現状のままとするとされているが、特に嘱託職員から移行する限定正規職員(B区分)(短時間勤務)について、組合としては、給与総額の増額が必要であると考える。理由としては、①現在の本学の嘱託職員の月額給与が12万円台であるのに対して横浜市における嘱託職員の多くの月額給与は16万円台になっており、両者の差が非常に大きくなってしまっている、②正規職員としての分類に変更するにもかかわらず、神奈川県最低賃金に若干の上乗せをしたレベルの現在の水準のままとするのはおかしい、③正規職員への変更に伴って手当が追加になるが、給与総額はそのままとするため本俸の額はかえって現在よりも低くなることになってしまう等である。せめて本俸部分を横浜市嘱託職員並みに引き上げるべきである。

  2. 現在の契約職員から限定正規職員(B区分)(フルタイム勤務)へ移行する職員のうち、当初提案通りでは移行により給与年額が減少する職員について現給保障を行う旨の変更案が示されたが、現給保障は該当者の退職時まで継続すること。

  3. 限定正規職員の休暇等の福利厚生及び研修については、常勤職員と完全に同等とすること。

  4. 限定正規職員(A区分)について、名称を「専門職」とする修正案が示されているが、①国内においても従来の大学事務職員とは異なる専門性を持ったスタッフの必要性についての認識が浸透、文科省において「高度専門職」「専門的職員」といった名称でその制度化が検討されている状況下、今回のような位置づけで「専門職」という名称を使用することは、予想される日本の大学における「専門職」の位置づけとの関係で問題が生じる可能性があること、また、②本学において「高度専門職」として設置されている「大学専門職」との関係などから望ましくなく、他の名称に変更すること。

  5. 新制度発足後の新規採用について、限定正規職員(B区分)は、試用期間として有期雇用職員を経るとしているが、このような制度設計、運用は職務内容の異なるはずの両者の片方を試用期間のための職とすることの不自然さという点、また過去の類似事例の判例(最三小判平2.6.5 神戸弘陵学園事件)からも問題がある。一般的な試行期間に比べ非常に長期間にわたるという点も問題である。試用期間を設定するのであれば、通常の場合と同様に直接、限定正規職員(B区分)として採用、常識的な試用期間とするべきである。
以上
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人事考課制度見直し提案に対する要求

また、常勤固有職員人事考課制度の見直しについても、以下の通り要求を行いました。

2017年7月18日
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

人事考課制度見直し提案について(要求)

6月30日付で提案のあった人事考課制度見直しに関する提案について、以下のとおり要求します。。

  1. 新制度の目的として掲げている「職員のモチベーション向上」に関連し、一般職員による管理職評価を同時に導入すべきである。これは人事考課全体の適切性の担保のためにも有効であると考える。

  2. 考課内容について異議がある場合の申し立て制度を整備することが必要である。異議申立て機関は、学外の、本学や横浜市と利害関係を持たない、人事に精通した複数の外部者を中心として構成されること。

  3. 人事考課制度をより精緻に設計、運用することについては民間企業において多くの先行事例が存在し、少なくともその一部については、実施上の負担に伴う制度の形骸化や構成員の評価に対する不満の高まりなどの問題につながっている。仮に新制度について当局側提案通り実施に移す場合、3年程度の実施の後、その成果、課題について当局・組合側で評価を行い、必要であれば修正等を行うこと。
以上
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2017年7月13日木曜日

非常勤職員制度の見直しに関する質問状に対する当局側回答

6月23日付組合ニュース【公開版】でお伝えした非常勤職員制度の見直しに関する質問状について、当局側の回答がありました。内容は下記の通りです。



  1. 限定正規職員B区分と有期雇用職員の、①「補助的な業務」(有期雇用職員) と「基礎的な業務」(限定正規職員B区分)、②「長期的な」「業務継続性」(有期雇用職員)と「継続性」(限定正規職員B区分)について、その具体的な差異、基準は何か。
  2. 限定正規職員A区分の「業務(調整を含む)」の「調整」とは何か。
  3. <当局側回答> 「限定正規職員【A区分】」は、医事請求や診療情報管理業務等に従事する病院専門職など、専門の知識・能力・スキルを有した特定職域においてキャリアを重ねるものであり、原則として異動は行われません。

    「限定正規職員【B区分】」は定型業務(庶務、経理、研究費管理等)について、上位者の包括的指示の下、実務経験・業務知識に基づき、業務を遂行します。同様に原則として異動は行われません。

    「有期雇用職員」は、①限定正規職員への転換にあたっての能力実証期間(試用期間)として位置づけるほか、②上位者の指示の下、限定正規職員ほどには、知識やスキルの蓄積を要しない業務を遂行します。原則として異動は行われません。

     なお、仮称とした「限定正規職員(A区分)」及び「限定正規職員(B区分)」の名称について、正規職員を含め別紙のとおり変更案を提示します。

  4. また、現在法人に雇用されている契約職員及び嘱託職員の新制度への移行についての想定、振り分けの具体的判断基準は何か。
  5. <当局側回答> 現に、雇用されている契約職員・嘱託職員は、新制度の導入に伴い、限定正規職員【B区分】へ転換します。 無期転換にあたっては、本人の意向、勤務実績等を踏まえ判断します。
  6. 有期雇用職員の業務について、状況の変化等で業務継続性が発生した場合の取り扱いは。
  7. <当局側回答> 有期雇用職員は雇用期間を3年以内としていますが、業務継続の必要性が生じた場合には、限定正規職員【B区分】に転換します。
  8. 定年について、有期雇用職員、限定正規職員B区分は65歳、限定正規職員A区分は60歳と異なる理由は何か。
  9. <当局側回答> 限定正規職員【A区分】は職域は限定されるものの正規職員とほぼ同等の業務を担い、定年後の再雇用の対象となることから、正規職員と同様に定年を60歳としています。有期雇用職員及び限定正規職員【B区分】は、現行の非常勤職員制度からの転換を想定していることから、定年を65歳としてします。
  10. 有期雇用職員、限定正規職員A区分、限定正規職員B区分における「短時間勤務」の具体的基準は何か。
  11. <当局側回答> 現行の「嘱託職員」の勤務時間である「週30時間」を想定しています。
  12. 有期雇用職員から限定正規職員、限定正規職員から正規職員への転換の「登用基準」とは具体的にはどのようなものか。
  13. <当局側回答> 別紙のとおりです。
  14. 現在の非常勤職員のうち、移行により給与年額が減額となる対象職員数はどの程度か。
  15. <当局側回答> 現時点では約170人と想定しています。 減額となる対象職員については、現給保障することを含め、その影響が最小限となるよう検討しています。
  16. 有期雇用職員、限定正規職員B区分の平成30年度以降の給与年額の変更については、どのように考えているか。
  17. <当局側回答> 正規職員の給与改定等を踏まえ、適宜適切に対応します。

【別紙】
1 非常勤職員制度見直しに伴う職名について
【現行】 【提案時】 【変更案】
常勤職員(正規職員)常勤職員(正規職員) 総合職(正規職員)
限定正規職員【A区分】 専門職(限定正規職員)
非常勤職員(契約職員) 限定正規職員【B区分】 一般職(限定正規職員)
非常勤職員(嘱託職員) 有期雇用職員(非常勤職員) 有期雇用職員(非常勤職員)
2 無期労働転換のルール
〇「有期雇用契約」⇒「限定正規職員【B区分】」
有期雇用職員として採用し、勤務実績(人事考課結果B以上)及び所属長の推薦を踏まえ、3年以内で限定正規職員【B区分】に登用する。
〇「有期雇用契約」⇒「限定正規職員【A区分】」
病院専門職など特定職域において「公募採用試験(選考)」を行い、1年間は「有期雇用職員」として採用する。
1年間の勤務実績(人事考課結果B以上)を踏まえ、「限定正規職員【A区分】」に登用する。
〇「限定正規職員」⇒「正規職員」
正規職員への登用試験(在職2年以上かつ所属長の推薦のある者)を実施し、合格者を正規職員に登用する。


  • 8.の、現在より給与が減額となる非常勤職員の方の多くは病院の医療技術職員ですが、大学部門の非常勤職員のうち契約職員の方の一部も含まれるとのことです。これらの方々について、当局側はこの回答後に現給保障を行うとの方針に転じましたが、その期間については明言を避けています。
  • 【別紙】のうち「専門職」という名称に関して、組合としては、①日本においても従来の事務職員とは異なる専門性を持ったスタッフの必要性についての認識が浸透、過去の組合ニュースでも度々ご紹介したように、文科省においても「高度専門職」「専門的職員」といった名称でその制度化が検討されている状況下、今回のような位置づけで「専門職」という名称を使用することは、予想される日本の大学における「専門職」の位置づけとの関係で問題が生じる可能性があること、②本学において「高度専門職」として設置されている「大学専門職」との関係などから望ましくなく、他の名称に変更すべきと考えます。

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2017年7月5日水曜日

非常勤職員制度見直しに関する緊急説明会(7/10月)のお知らせ

非常勤職員制度の見直しについて、前回6月23日付の組合ニュース【公開版】に掲載した質問状への回答がありました。これも踏まえ、緊急に非常勤職員の方向けの説明会を開催します。

場所: 金沢八景キャンパス職員組合事務室
日時: 7月10日(月) 17:30~19:00

*17:30~19:00の間、組合執行委員が詰めていますので、都合のつく時間に組合事務室にいらして下さい。内容的には15分程度で、随時に対応します。 

*資料準備の関係上、出来るだけ7月10日(月)の昼までに、 ycu.staff.union(アット)gmail.com への事前申込をお願いします。

*これまでの組合ニュースでもお伝えしたように、現在の組合には非常勤職員の組合員は非常に少なくなっていますが、非組合員の非常勤職員の方に新制度の内容を説明し、要望を交渉に反映させる機会は今回が最後となる可能性があります。新制度の内容を知りたい、意見を言いたいという方は是非ご参加ください。また、参加は無理だが要望とあるという方は、メールで ycu.staff.union(アット)gmail.com までお送りください。

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固有常勤職員給与体系・人事考課制度変更に関する説明会(7/19水)のお知らせ

固有常勤職員についても、人事考課制度の具体的内容がようやく提示されました。

こちらについても下記の日程で説明会を開催します。

場所: 金沢八景キャンパス職員組合事務室
日時: 7月19日(水) 18:00~19:00

*資料の量が非常に多いため、今回は完全事前申込制とさせていただきます。7月18日(火)までに ycu.staff.union(アット)gmail.com への事前申込をお願いします。

*こちちらについても、当局側の希望する回答期限が迫っていることもあり、説明や要望の吸い上げの機会は今回が最後となる可能性があります。是非、ご参加ください。

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2017年6月23日金曜日

住居手当ほか固有常勤職員に関する給与体系変更提案:第7報 5月下旬以降の交渉状況について

4月20日付組合ニュース【公開版】の第6報から約2か月ぶりになりますが、その後の固有常勤職員に関する給与体系変更問題に関する状況についてお知らせします。

5月23日付で給与体系変更とセットになる人事考課制度の見直しについての提案が新たにありました。

ただし、その内容は、例えば「考課基準の明確化」という項目では「職位毎に求められる能力・役割の明確化」、「考課項目の見直し」では「『YCUアクション』や『各職場の人材育成計画』等との連動」など当たり前の一般論、原則論レベル以上のものではなく、これでは回答のしようも無いということでより具体的な内容の提示を求めていました。また、この人事考課制度見直し提案について当局側は回答期限を7月31日と提示しており、組合としては昨年度に引き続き、重大な問題であるにもかかわらず2か月間という交渉期間はあまりにも拙速に過ぎることを指摘しつつも、とりあえず持越しとなっている固有常勤職員に関する給与体系変更問題も含め、交渉自体は早期に再開する必要があるという事で日程候補の提示を求め、併せて上記のように人事考課制度の見直しについても、より具体的に内容を示すよう要求し当局側も了解しました。

しかしながら、その後1か月余りが経過したにもかかわらず、当局側からの連絡は無く、今週に入ってようやく日程候補の提示があり、来週末より交渉を再開することとなりました。また、人事考課制度についての具体的な内容については交渉前には提示したいとの連絡がありました。

昨年度と同様に、問題の重大性に比べあまりにも短期間での合意を求めておきながら、肝心の当局側の理由により実質的に交渉が行えないというのはおかしな話で、そもそも準備が不十分であるならば、それに応じて充分な交渉期間を設定すべきものと考えます。

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非常勤職員制度の見直しに関する質問状

6月2日付組合ニュース【公開版】でお伝えした非常勤職員制度見直し提案について、以下の通り当局側に質問状を手渡しました。

2017年6月21日

横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭


非常勤職員制度見直し提案について【質問事項】


非常勤職員制度見直し提案について、以下の通り質問します。

  1. 限定正規職員B区分と有期雇用職員の、①「補助的な業務」(有期雇用職員) と「基礎的な業務」(限定正規職員B区分)、②「長期的な」「業務継続性」(有期雇用職員)と「継続性」(限定正規職員B区分)について、その具体的な差異、基準は何か。
  2. 限定正規職員A区分の「業務(調整を含む)」の「調整」とは何か。
  3. また、現在法人に雇用されている契約職員及び嘱託職員の新制度への移行についての想定、振り分けの具体的判断基準は何か。
  4. 有期雇用職員の業務について、状況の変化等で業務継続性が発生した場合の取り扱いは。
  5. 定年について、有期雇用職員、限定正規職員B区分は65歳、限定正規職員A区分は60歳と異なる理由は何か。
  6. 有期雇用職員、限定正規職員A区分、限定正規職員B区分における「短時間勤務」の具体的基準は何か。
  7. 有期雇用職員から限定正規職員、限定正規職員から正規職員への転換の「登用基準」とは具体的にはどのようなものか。
  8. 現在の非常勤職員のうち、移行により給与年額が減額となる対象職員数はどの程度か。
  9. 有期雇用職員、限定正規職員B区分の平成30年度以降の給与年額の変更については、どのように考えているか。

*職員組合には、過去、多くの非常勤職員の方が加入していましたが、それらの方々の大半が市大を退職してしまったこともあり、現在の非常勤職員組合員は極めて少数になっています。現状では、今回の制度改編で非常勤職員の方の権利を組合が代表して擁護することは難しくなっていることから、改めて、非常勤職員の方々には組合への加入を呼びかけます。

組合の概要、加入手続きは こちら をご覧ください。

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2017年6月2日金曜日

2017年度第2回学習会「高等教育政策の新展開」のお知らせ(6/14水)


第2回学習会「高等教育政策の新展開」のお知らせです。

第2次安倍政権の発足以降、高等教育政策の焦点は“グローバル化”と“ガバナンス改革”、それに“地方創生”への貢献に当たっていました。これらは「スーパーグローバル大学」の採択、「学校教育法改正」、「COC+」の採択で一段落し、昨年度は束の間の凪のような状態が続いていました。しかし、昨年度後半以降、再び急激な“改革”の嵐が予感されるようになり、ついに現在の高等教育システムの根幹部分に関わるような“改革”に着手しようとする方向性(国公私を超えた大学再編や経営困難校の撤退のための枠組み整備等)が明らかになってきました。

「骨太方針の要旨 大学再編へ枠組み整備」(日経新聞 5.31)

公立大学もまた、このような動きと無関係でいることは出来ないでしょう。進行する公設民営・公私協力方式大学を中心とした私学の公立大学法人化、それに県立農業大学校の専門職大学化、地方交付税交付金における公立大学運営費への「トップランナー方式」の導入などと併せると、公立大学セクター自体についても太平洋戦争期~昭和20年代に匹敵するか、それ以上の変動に見舞われる可能性があります。

今回は、このような現在進行中の事態を概観し高等教育システムの大局的理解につなげることを目指します。

日時、場所は下記の通りです。

【日時・場所】 6月14日(水) 12:10~12:50
金沢八景キャンパス 職員組合事務室

* 非組合員の方の参加も歓迎します。資料準備の都合上、6月12日(月)までに ycu.staff.union(アット)gmail.com までお申し込みください。
* 申し訳ありませんが、今回も開催は八景キャンパスのみとして福浦キャンパスでは実施しません。また、開催時間もとりあえず昼休みとしますが、こちらについては一定数以上の要望があった場合、別途、夜間の開催も検討します。
* 組合事務室の場所については、http://ycu-union.blogspot.jp/2015/09/916.html をご参照ください。

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非常勤職員制度の見直しについて

当局側より現在の非常勤職員制度見直しの提案が出ています。

具体的には現在の「契約職員」「嘱託職員」から成る非常勤職員制度を廃止、来年4月より、原則3年を上限とする「有期雇用職員(フルタイム・短時間)と任期の定めのない「限定正規職員(仮称)」A区分、B区分へと再編するというものです。

詳細については、後日、組合としても説明会を開催したいと考えていますが、なかなか現状余裕がありません。非常勤職員の方で詳細を知りたいという方は直接、ycu.staff.union(アット)gmail.com までお問い合わせください。

また、職員組合には、過去、多くの非常勤職員の方が加入していましたが、それらの方々の大半が市大を退職してしまったこともあり、現在の非常勤職員組合員は極めて少数になっています。現状では、今回の制度改編で非常勤職員の方の権利を組合が代表して擁護することは難しくなっていることから、改めて、非常勤職員の方々には組合への加入を呼びかけます。

組合の概要、加入手続きについては、こちらをご覧ください。

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2017年5月10日水曜日

たかがお弁当、されどお弁当(2) - トップ・マネジメントの即断で長年の問題解決へ

二見理事長が着任以来、フランクに現場の職員の声に耳を傾け、必要な事があれば即断をするとの姿勢で定期的に行っている職場訪問。さる4月19日(水)に今年度の最初の訪問先としてアドミッション課に来られた際、同課に長く在籍する組合員より入試業務における教職員の昼食弁当の私費負担が入試の現場に理不尽な負担をもたらしている問題を訴えところ、法人のトップとして公費による負担をする旨を即断されました。

この問題、もう7年も前になりますが、2011年1月27日付けの組合ニュースにて「たかがお弁当、されどお弁当 - 入試業務従事者に対する真っ当なサポートを」と題し、昼食時間もままならない入試業務に重視する教職員に対する昼食弁当の手当が、公費負担から私費負担になったことにより、個々の従事者からお弁当代を預かって発注するという大変負担の多い業務が、入試を統括するアドミッション課の職員にのしかかっている問題として、お知らせしました。

特に大学入試センター試験や一般入試の2次試験などの場合、従事する教職員は朝早くから夕方遅くまでの全日の業務であり、緊急対応に備えるためにも非常に限られた時間で昼食を取らねばなりません。昼の時間に外に食べに出ることはもちろん、お弁当を買いに行くことも不可能であり、また朝も早くからの出勤により、事前にお弁当を準備持参するのも負担になります。

何にもまして安全な実施を優先する入試業務では、昼食に関しては配達弁当を一括発注するのが、常識的な対応となります。国公立大学よりもより効率的な運営をしていると見なされる私立大学などでは、当然のように公費で発注します。本学でも法人化後の2009年頃までは公費で負担していましたが、2010年度の入試より、現場の意向を踏みにじって私費負担とされたのです。

滑稽な例を紹介すると、ここ数年のセンター試験は本学を会場に、鎌倉女子大学と湘南医療大学の教職員の協力も得て実施していますが、本学のアドミッション課職員により一括発注された同じ昼食のお弁当を、鎌倉女子大学と湘南医療大学の教職員は当然のように公費負担で食しているのに対して、かたや本学の教職員は、アドミッション課の職員が従事者1人1人からお金を預かり私費負担で食しているのです。

本来であれば、組合の交渉により解決されるべき問題でありますが、かつての公務員による官官接待等のだらしない問題と、その反動で公務員の公費での飲食に対する過剰なまでの世間の反発が、これまでの当局者の頑な対応を招き、通常の組合交渉ではいかんとも出来ませんでした。今回、そうした背景も熟知した二見理事長の真っ当な判断により、現場に突き刺さった理不尽なトゲが抜けたこと事を、素直に喜びたいと思います。

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SD義務化とプロフェッショナルとしての大学事務職員?

固有常勤職員の給与体系変更問題に忙殺され組合ニュースもそれ以外のことを書く余裕が無く、昨年末の「公立大学をめぐる国家財政システム 終わりの始まり?(3)」以来の稿となります。前回の最後でも少し書きましたが、今回は前回の続きではなく、この4月から事務職員、事務局を巡る法制度面での変更があったことを受けて、少し思う所を書いてみたいと思います。

4月14日の組合ニュース【公開版】の学習会の案内でも書きましたが、この4月からSDが義務化されるとともに、昨年度末ギリギリの3月29日に大学分科会に対して①大学設置基準に「教職協働」を盛り込むこと、②事務局に関して「事務を処理するため」とあるものを「事務を推進するため」と変更するという2点についての諮問があり、即日、これを認める答申が出され直ちに設置基準改正、4月1日から施行ということになりました。3月29日の大学分科会は傍聴していないのでそこで具体的にどのようなやり取りがあったのかは判りませんが、それまでの大学分科会でも議論らしい議論は無かったと記憶していますので、SD義務化も含め、たいした議論も無いままに職員を巡る法令上の変更が複数なされ、施行されたことになります。

SD義務化については、高等教育局長通知にあるように、その対象は事務職員にとどまらず教員や執行部、技術職員も対象に含まれること、教職協働については、同一組織内の構成員の協働をなぜわざわざ法令で規定しなければならないのか(別の表現を使えば、そもそも法令で規定するようなことなのか)、事務局については、これまでの“ガバナンス改革”の流れや大学分科会等での議論からは、これで終わりではなく、むしろ今後の「機能」を基本とした全面的な関係法令の見直しの試みの第1歩となるのではないか等、色々と論点はあると思いますが、その辺は他でも取り上げられているので、今回は、それらとは別で、かつ個人的には重大と考えている問題について取りあげます。

今回の3つの法令改正は、事務職員、事務局を巡る独自の文脈から出てきたというよりは、“大学ガバナンス改革”の一環、具体的には「学長トップダウンの強化」、「教授会の諮問機関化」と一括して捉えるべきものと考えます。即ち、学長の権限を強化し、教授会に諮問機関以上の権限を持たせないようにしたところで、アメリカのような「プロフェッショナル経営者」(ここでの「プロフェッショナル経営者」という言葉は、日本のような教員としてのキャリアの最後、あるいは途中で一時的になるものではなく、早期に経営に専門的に従事することを選択し、そのために大学院、専門職団体等での教育・研修を受け、経営者としての階梯を昇りキャリアを重ねる人々、という意味で使っています)が基本的に存在せず、かつ、悪化する経営環境下で増大する社会的・政治的要求に応えなければならないという矛盾する状況の下では学長の意思決定と執行を支えるスタッフの存在が不可欠であり、具体的には「経営」に積極的に関与しようとする一部の教員(管理職)と「事務局」として組織化されている事務職員こそがその担い手となることになります。

このうち教員管理職については、学長同様に「プロフェッショナル経営者」ではなく教育研究者としての地位も保持しつつその時間の一部を「経営者」としての活動に割くことに(少なくとも当面は)なるでしょうから、それに比べ組織的、恒常的に「経営」に関与する事務局とその構成員である事務職員の役割・実質的な権限は必然的に向上することになります。言い換えると、横浜市大で既に現実化しているように、事務局によって行われるアジェンダ・セッティングと各種原案の作成、会議における“説明”や会議の事前事後の“調整”が組織としての実際の意思決定において主要な役割を果たすことになります(なんというか、「行政」と「議会」・「行政の長であるはずの政治家」の関係が連想されます)。また、執行については言うまでもありません。それを前提としての事務職員の能力向上であると理解すべきでしょう。

ただし、個人的には、この問題を巡る議論で一つ、重大な観点が忘れられたままとなっているのではないかという点を懸念します。

事務職員、事務局を巡る法令改正が議論らしい議論も無いままにあっさりなされた一方で、それらの直接的な出発点である「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(平成26年2月12日)において設置が求められたはずの「高度専門職」に関しては、議論の混乱を経て一旦「専門的職員」へと名称が変わり、(政府がその“大学改革”の文脈で必要と認めているIRer、URAの個別整備支援は別として)最終的には棚上げ・継続検討事項となりました(この辺りの経緯、背景、意味等については過去4回組合ニュースで、また、ネット上では内容を見ることはできませんが、2015年度大学職員フォーラム「今後の大学職員の役割と課題 -大学職員における『高度専門職』の議論をめぐって-」での基調報告や「大学職員ジャーナル」第19号などで私自身の見解を示しています)。

そのような結果に至った原因としては、①経営環境が悪化する状況下、教員に準じる専門職を制度化し大量に雇用することは現実には困難、②メンバーシップ型雇用の日本型ジェネラリストが優位を占める社会、組織の中で、専門職の養成や活用は容易なことではない等があるかと思われますが、それはともかくとして、「日本型ジェネラリストである事務職員」が事実上の大学経営の主たる担い手になることで、アメリカ型の専門職が担い手となる場合に比べ大きな違いが幾つか生まれることになります。

例えば、「職務遂行能力」というタームに代表される「メンバーシップ型人材」の能力・能力観が「専門職」のそれとは全く異なるという点については過去にも指摘しましたが、もう一つ、「専門職」の要件の一つとされる社会、公共の利益(公益)と結びついた「専門職」としての倫理(専門職倫理)の問題は非常に重大でありながら、ほとんど着目されていないと思います。

専門職(profession)とは何かという問題は、20世紀初めにアメリカの社会福祉職の専門性を巡る議論の中で提起され(「Is Social Work a Profession?」)、半世紀余りをかけて一般的な定義がほぼ定着しましたが、その重要な要件の一つが専門職倫理の存在であり、それはしばしば当該専門職の職能団体における倫理綱領として現実化されています。

例えば日本医師会は、「医の倫理綱領」、「医師の職業倫理指針」を定めていますし、日弁連には「弁護士職務基本規程」が存在しています。また、大学にも関係のあるところでは、日本図書館協会が「図書館員の倫理綱領」を策定、先日、「一掃しろ」と地方創生担当相が口走って謝罪に追い込まれた学芸員についても「博物館の原則 博物館関係者の行動規範」(日本博物館協会)が、その他心理士関係では「日本臨床心理士会倫理綱領」(日本臨床心理士会)、「臨床心理士倫理綱領」(日本臨床心理士資格認定協会)、「学校心理士倫理規定」(学校心理士認定運営機構)などが定められています。

アメリカの大学専門職団体を見ても、例えば学務系専門職の2大団体であるACPAとNASPAは、それぞれ「Statement of Ethical Principles & Standards」(ACPA)「Standards of Professional Practice」(NASPA)を定めていますし、共同で策定した「Professional Competency Areas for Student Affairs Educators」においても、真っ先に「Personal and Ethical Foundations」が必要な資質能力として挙げられています。IRerの団体である「Association for Institutional Research」も倫理綱領として「Code of Ethics and Professional Practice」を制定しています。また、大学内の専門職というよりは外部の独立した専門家でそのクライアントの一つが大学という事になりますが、評価の専門家がprofessionとして存在しており、その団体である「American Evaluation Association」によって策定された「AEA Guiding Principles for Evaluators」を見ると、5項目の規定のうち3番目の「Integrity/Honesty」が最も記述量が多く、さらに4番目の「Respect for People」、最後の「Responsibilities for General and Public Welfare」と併せると専門職としての指針の大半を倫理に関連した規定が占めていることになります。

このように国内の専門職の例を見ても、アメリカの大学の専門職を見ても、専門職としての倫理規定の存在という要件は実際に満たされ、かつ重視されていることが判ります。

それに対して、基本的に日本型ジェネラリストしての事務職員の組織であり、学会であると同時に国内における事務職員の地位・能力向上運動の担い手、職能団体としての性格も色濃く有する「大学行政管理学会」の場合、その設立宣言で「プロフェッショナルとしての大学行政管理職員の確立」を謳っているにもかかわらず、学会HPには職員としての倫理規定のようなものは見当たりません(professionと日本で言う“プロフェッショナル”の関係は“リベラル・アーツ”と“教養教育”のように微妙かつ大きなずれをはらんでいますが、ここではとりあえず、大学行政管理学会が自身を“プロフェッショナル”たらんと志向し、そう宣言しているということを前提として、それはprofessionと相当重なる部分があるものとして話を進めます)。その一方で、「大学行政管理学会」との比較という観点からは奇妙な印象を受けるかもしれませんが、日本の高等教育に関する理論的研究の中心的存在で会員の大半を研究者が占めているはずの「日本高等教育学会」が、自らが「実践家や大学管理運営者などを含めた、高等教育研究にかかわる幅広い関係者によって組織されている」として「専門的能力の追求」、「誠実性の追求」、「人権の尊重」、「高等教育への敬意と専門的責任」、「社会的責任」等からなる「日本高等教育学会倫理規程」を制定しています。

さらに先にも書いたように、「高度専門職」、「専門的職員」の制度化が棚上げになる中、政府がその“大学改革”の文脈で必要と認め、国立大、私立大における個別整備を支援、推進しているIRer、URAのうち、IRerについては、見たところ職能団体のようなものは見当たらないものの、探してみると同志社大が中心となって発足した「大学評価コンソーシアム」が「評価・IR 担当者に必要な知識・スキル」を策定しています。しかしながら、そこでは「Association for Institutional Research」や「American Evaluation Association」のような専門職としての倫理に関する内容は見当たらず、むしろ「依頼者の期待に応え」、「依頼者に分かりやすいストーリーを構成」といった依頼者寄りの記述が目につきます。

このように、(アメリカの同業者のようなprofessionではなく)メンバーシップに基づく日本型ジェネラリストとしての事務職員の集団でありながら、同時に「プロフェッショナルとしての大学行政管理職員の確立」を目指している「大学行政管理学会」を見ても、一応、アメリカ等と同じ特定分野の専門職(profession)であるはずのIRerの団体である「大学評価コンソーシアム」を見ても、プロフェッショナルあるいはprofessionとしての倫理についての意識は不思議なほどに希薄です。

そして、ここでようやく今回のタイトルに繋がるのですが、これらの数少ない関連団体においてさえそうであるならば、義務化され一斉に実施されることになるはずの各大学におけるSDにおいて「プロフェッショナルとしての倫理」が取り上げられる可能性は極めて小さいのではないでしょうか。アメリカの大学の専門職集団と日本型ジェネラリストの集団である事務局を比べた場合、少なくとも現段階の個別分野での「専門的能力」はあちらの専門職集団に軍配が上がるでしょうが、先にも書いたように、能力以外の「役割・実質的な権限」については、「理事会、学長、ファカルティ」の3権分立の下にあるアメリカの大学の専門職集団よりも学長トップダウンの実質的な担い手となりうる日本の事務局の方が強力なものとなる可能性は十分にあるにも拘らず、です。

メンバーシップ型人材の特性の一つとして「終身雇用」、「転職の困難性」と相互補完性を持つ「所属組織への強い忠誠心」を挙げることができますが、この忠誠心は所属組織を超えた公益と結びついた倫理の裏付けを欠いた場合、法令や倫理に反した所属組織の行為さえ肯定する「盲目的な忠誠心」へと転落する危険があります。実際、企業の不祥事を見ても、明確な公益通報者保護法違反であるにも関わらず自社の違法行為を告発した社員が退職に追い込まれたり組織的ハラスメントにさらされたりすることがままある(例えば「オリンパス事件」や「トナミ運輸事件」など)一方で、自分のやったこと、関わったことに口を噤んだ当事者が内部で道徳的に問題視されることはまずなく(むしろ賞賛される場合すら)、最近はどうか知りませんが、かつてはほとぼりが冷めたころに関連会社にそれなりのポストを用意するなどということすら行われていたと記憶しています。このような行為は、たとえ営利組織であっても本来許されないことであり、短期的には株主等のステークスホルダーにも組織自体にも損害を与え、長期的には市場とそこで行われる競争への信頼を傷つけ、最終的には組織自体を崩壊させかねないにも関わらず、です。まして大学は本質的に非営利組織であり、教育研究を通じて社会の公益に奉仕することをミッションとする存在です。

要約すると、professionの重要な要件としての倫理性(所属組織への盲従は倫理とは呼べません)を軽視したまま、海の向こうの同業のprofessionよりも大きな役割・権限だけは手に入れるなどということにはならないで欲しい、そういう人材の養成につながるようなSDにしてはならないという話でした。

(菊池 芳明)

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2017年4月20日木曜日

住居手当ほか固有常勤職員に関する給与体系変更提案:第6報 2月末以降の交渉及び今後の交渉に当たっての論点について

今回は前回、前々回組合ニュースでは省略した2月末以降の交渉に関する追加情報、およびこの問題に関する職員組合としての見解についてです。


Ⅰ.2月下旬以降の追加情報について

まず、2月17日以降の交渉で追加開示された、今回提案に関連する組合側から要求した経営関連情報です。


1.現行給与体系(平成28年度時点)と当局側提案の新制度の移行した場合の平成29年度のモデル賃金の差額について

想定対象者(28年度時点):年齢34歳(1級~3級の事務職員の平均年齢)
4大卒業後、新卒で入職。12年目
過去の昇給はすべて標準昇給
地域手当、期末・勤勉手当以外の手当ては含めない

28年度の年収:5,048,749円
↓      
29年度の年収:
現行制度①:5,192,891円(標準昇給+勤勉手当B×2回の場合)
現行制度②:5,266,858円(上位昇給+勤勉手当B×2回の場合)
新制度  :5,273,881円(標準昇給+勤勉手当A×2回の場合)



この数字はあくまでも仮定を重ねたモデル数値であり、その点でもとより限界のあるものです。その上でいくつか解説を付け加えると、第1に、28年度と29年度の比較では固有常勤職員人権費の総額はほぼ同一で、そこで当局側提案新制度の(標準昇給+勤勉手当A×2回)の取り分が増えるという事は、その他の人への配分額が減るという事を意味します。また、このモデル自体が「上位者」と「上位者」の比較限定です。第2に、当局側の提示した現行制度①、②の条件部分を見れば判るように、現行制度の比較対象は最も評価が高い場合(上位昇給+勤勉手当A×2)ではありません。それに対して当局側提案新制度においてモデルとして提示されているのは最上級の評価を得た場合の数字です。第3に、最も該当者が多いはずの標準的なケースと標準的なケースの比較ではありません。第4に、28年度と29年度の比較では固有人件費の総額はほぼ同一で変化はありませんが、30年度以降については状況が異なります。この点については、以下の2.で述べます。このように、このモデル賃金比較については解釈に注意が必要です。


2.横浜市と同様の給与条件とした場合と当局側提案新制度の場合のモデル賃金差額について
*この項目は交渉に同席した横浜市従本部役員からの要求で、①と同様、個人のモデル賃金の比較を求めたものですが、当局側は事務職員人件費総額への影響額を出してきました。しかしながら、結果的にはかえって今回の制度改革のマクロの影響が分かりやすく表れたものとなっています。また、数値は本俸の昇給分と勤勉手当のみを対象として算出したもので、現在月額1万100円にまで市との格差が開いている住居手当は含まれていないようです。
第3期中期期間全体における事務職員人件費について、横浜市と同様の運用を行った場合と当局側提案の新制度に移行した場合の総額の差: 市と同様の運用を行った場合に比べ59,600千円の減

第2に、法人の最高経営責任者である理事長に対して直接団体交渉を要求し、3月1日に実現しました。これは、これまでの組合ニュース、職場集会でお伝えしたように、当局側の主張に辻褄が合わない点や理解に苦しむ点などがあり、担当課レベルでの交渉ではらちが明かないと思われたこと、また、それらのうちいくつかについては最終的には固有常勤職員の処遇についてどう考え、経営全体の中でどう位置づけるのかという経営判断の問題に帰着することから法人最高経営責任者である理事長の見解を直接尋ねるしかないと考えられたことから要求したもので、その意味では、交渉の決着を目指す通常の団交とは意味合いが異なるものです。

この席で、今回の給与制度変更提案に関連して理事長からあった発言は、①次期中期計画の最大の眼目は6年で法人収支の均衡を実現すること、②職員の人事制度については、「持続可能で」かつ「モチベーションを高める」、「働き方を反映できるメリハリのある制度」を作りたい、③きちんとやれば人件費は適切な抑制基調で、合理的な範囲に収まるのではないかと思う、などでした。

これまでの情報に今回の情報を合わせると、今回の制度変更は、仮に当局側提案通りになった場合、今年度に関しては総額内での職員間の配分の変更ですが、来年度以降は職員人件費の総額自体の抑制につながるものであることが明らかになりました。本給における上位昇給の廃止という、その他の手当の算定の基準(月額給与に一定の係数をかけて算出する)となる部分に関する抑制措置なのですから、当然と言えば当然の結果ではあります。そして、「総額抑制」とそれによる不満を「評価上位者への配分を一時給において増額する」という形で(言い換えれば普通~下位評価者への配分を減らすことで)解消しようという、民間企業でしばしば採用されるスキームであることが明確になりました。これらに関する見解は以下の中で述べることにします。



Ⅱ.固有常勤職員給与体系変更問題に関する組合の見解

以下は、これまでの交渉、上記の2月末以降の情報も踏まえての職員組合としての今回の問題に関する見解です。


1.まず今回の問題について、組合としては当局側が提案すること自体は拒否しないというスタンスを取っているため、1月末から3月末にかけて当局側提案およびその根拠となる各種の経営上の数値について説明を受けてきましたが(根拠となる経営上の数値については本来、提案する当局側が準備し提案と同時に示すものですが、それがなかったために組合側から要求したものです)、それだけで当局側が提示してきた交渉期間が尽き、それを受けて組合としての提案に対する対応を検討しようとするところで年度が終わってしまい、とりあえず暫定措置について合意して現在は交渉再開を待っているという状況です。このため、現時点での組合としてのスタンスは法人化時の「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意を順守すべきであるというものから変わったわけではありません。

これは、①今なお管理職を中心に多くの市職員が大学に派遣され、固有職員と同一の職場で同一の業務に従事しており、同一職場での同一業務には同一の賃金が支払われるべきであるという原則、②労使間の重要な合意の変更には説得力のある根拠とこれまでの経緯を踏まえた充分な交渉に基づく新たな合意の形成が必要であること、また、③市職員の給与自体は国家公務員と同様に市内の民間との給与格差に基づいて変動するという明快で合理的な原則に基づいており、これに準じることは原理的に明快で合理的であり、かつ給与の決定というコストを要する作業を省略できるという経営コスト的な意味でもメリットがある等の理由に基づくもので、可能な限り維持すべきものと考えます。

また、関連して市職員と月額で10,100円にまで拡大している20代、30代の固有常勤職員の住居手当についても、このまま放置すべきではないと考えます。市職員に準じるという原則上の理由からだけでなく、月額9500円という現在の額(昨年夏の合意通りに実施されれば30年度からは月額1万円に引き上げ)は、家族向けであれば10万を超える市内の賃貸相場からすればあまりにも少額です。


2.これまで、組合ニュース等で繰り返してきたように、当局側は「市職員に準じるという」法人化時の合意についてこれ以上の維持は困難としながらも、それに代わる人事制度の設計、運営の原則について示していません。一連の交渉の経緯において明らかになったのは、どうやらそのようなものは当局側にも存在していないということでしたが、その場合、「市に準じる」が「市に準じない」に変わるが「どうするかは分からない」という、組合から見れば歯止めだけがなくなり新たなブレーキは存在しないという状況につながりかねない点を強く危惧します、仮に市に準じないのは今回の提案部分のみで、他はそのままにするというのであれば、前提としてその点(変えない部分)について明確にする必要があります。住居手当の格差は拡大し、それは放置したまま今度は上位昇給の廃止・勤勉手当への配分増ということになれば、今後もなし崩しに処遇の悪化が続く可能性があります。


3.最初の提案時から現在に至るまで、当局側の提案理由の第1は「法人財政の悪化」です。しかしながら、この4月より始まった第3期中期計画は逆に拡大型の計画であり、市からの運営交付金も大幅増になる計画となっています。民間の営利企業であれば、「投資増」⇒「生産増」⇒「販売増」⇒「営業収益増」というストーリー(上手く行くかどうかは別として)を描くこともあり得るでしょうが、大学という組織(附属病院も含め)は本質的に非営利組織であり、その活動内容からして利益を上げることに向いているわけではありません。今回の中期計画は、そのような本質的に利益を上げにくい大学という組織において、さらに財政難を加速しかねない内容を無造作に放り込んでいるようにも見えます。

一例をあげると、来年度にデータサイエンス系の新学部の設置が決まっていますが、入学定員60人の(コースでも学科でもなく)「学部」を作ってペイするかどうかは、私学関係者であれば説明の必要すらないレベルの問題です。しかしながら、学内においてこの点がどの程度正確に認識され決定されたのかは全く不明です。本学の場合、横浜市から私学の授業料との差額分を運営交付金として受け取る仕組みになっていますが、それを合わせても私学並の収入で私学がペイしない規模の「学部」を作ってもどうなるかは自明のことなのですが。

念のため付言すれば、組合は別に「新たな社会的ニーズ」に対応するような活動を大学が行うことに反対しているのではなく、「財政難」「危機的状況」を言い立て、そのために給与体系の変更の必要があると提案しながら、さらに「財政難」を拡大するような計画、この場合で言えばその一例として現行法令下では最もコストのかかる「学部」という組織形態をなぜ選ぶのか、合理的には理解が困難であると指摘しているのです。何とか解釈しようとすれば、①当局側が組合に給与体系の変更を呑ませるために実態よりも大げさに「財政難」と言いたてている、②過去の組合ニュースでも指摘したように、全体の財政枠組みの中で新組織や新事業を計画するのではなく、まず経費は考えずに新組織や新事業を計画、その後、それ以外の部分で削減を行い全体としての辻褄を合わせようとするという手法をとっている( https://ycu-union.blogspot.jp/2017/02/3.html )、といったあたりが考えられますが、①だとすれば組合としては法人化時合意の変更、固有職員給与体系の変更は吞めないという事になりますし、②だとすれば、職員人件費をそのような大雑把な経営手法の辻褄合わせの犠牲とすることは組合の立場からは容認しがたい上に、そもそも辻褄が合う保証など無いではないか、今後一体どうするのだと指摘せざるを得ません。

また、本当に「財政難」なのだとすれば、そのような事態を招いた過去の「経営責任」も看過できません。以下は、リーマンショックの頃だったかに見かけたエスニック・ジョークですが、組合としては当然、そのような展開は(実際に日本企業においては珍しくもないだけに、なおのこと)笑って受けいれることは出来ないものです。

「A社が社運をかけたあのプロジェクト、駄目だったのか?」
「ああ、大失敗に終わったそうだ」

アメリカの場合;
「これでA社の上層部が一掃されるな」

日本の場合;
「これでA社の平社員が大量にリストラされるな」

さらに、横浜市からの運営交付金は実際には市の各年度の財政見通しに影響を受けており、過去の例を見ても必ずしも中期計画の策定時の想定通りに交付されるわけではありません。市庁舎の新設や統合型リゾート(IR)がどうとか、オリンピックでどうのとかいった話も考慮すると楽観する気にはなれません。その一方で支出の方は、計画通りに実施すれば計画通りに出ていくことになります。

もう一点付け加えると、最初に紹介した理事長の「次期中期計画の最大の眼目は6年で法人収支の均衡を実現すること」という発言にもかかわらず、第3期中期計画における収支計画は、フローベースで9億円以上の赤字で、それを積立金の取り崩しで埋める計画になっています。これも腑に落ちない話で、例えば次年度の話であれば短期間での対応は困難で当初から赤字を想定せざるを得ないこともあり得ますが、6年間に渡る計画で、しかも赤字が問題になっていてその解消が優先目標というのであれば、フローベースでも均衡を目標とする方が自然です。これまでの交渉での遣り取りから、組合としては、この9億円以上のフローベースの赤字が第3期中期計画において達成すべき「赤字削減目標」であり、Ⅰ.2.で書いた、今回の当局側提案通りに固有常勤職員の給与体系を変更した場合の59,600千円の削減額はその一部、かつ第1歩ではないかとの疑念も持っています。
http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/corp/plan/tt534t000000065u-att/dai3ki-cyuki-keikaku.pdf


4.法人財政全体の問題とは別に、中長期的に固有常勤職員人件費を考えるうえで問題になるのは、(これも繰り返し指摘していますが)過去の偏った採用方針・活動の結果、著しく若年層に偏ってしまった(ボリュームゾーンは恐らく30歳前後)年齢構成の問題です。彼らの年齢が上昇していくにしたがって生活に必要な資金は増加していきますが(住宅ローン、学資等)、逆に人件費が少なく済むはずの現時点でさえ固有職員人件費が負担だというのでは今後どうなってしまうのでしょうか。このような年齢構成になったのは、現状につながる採用計画を立て、実施した結果であり、それは言い換えれば過去の経営責任の問題です。その部分は事実上不問に付されたままで結果の辻褄合わせが当の固有職員に転嫁されることは、経営モラルの観点からも受け入れがたい話です。


5.給与体系の変更を提案しながら、個々の職員に対する実際の適用額の決定を左右する人事評価制度については、今年度に検討を行うとなっています。本来、両者は同時に検討され提案される必要があるものです。

この点に関連して、法人化以降、特に全員任期制廃止に至るまでの約10年の間、組合は毎年多発する個別の雇用トラブルへの対応に忙殺されてきました。これは任期制の存在が大きな原因(上司との折り合いが悪い場合や職員が病気になった場合に、簡単に職員の任期を短期に設定したり、任期更新を行わず雇止めにして問題を“無かったこと”にしようとしたりする)ではありますが、同時に人事評価があまりにも上司・部下間の人間関係に影響されたり、恣意的、不公正に行われているのではないかと思われるケースも多く経験してきました。民間企業の「成果主義」の顛末を見ても、仕事を評価する、ことに日本型組織において個人の仕事を“客観的に”評価することは極めて困難で、それが人件費縮小とセットになると、とかく上司の意を“忖度する”行動の誘発や、その組織において本来求められる能力・見識よりも“組織内処世術”に長けた人間が昇進するといった「組織の病理」が起こりがちで、その危険は過小評価できません。法人化時の経緯から組織文化の面で(現理事長の一般教職員との対話を重視する姿勢により変わりつつある面もあるとはいえ)警戒すべき点が多い本学においてはなおのことです。

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2017年4月14日金曜日

2017年度第1回学習会(4/26)「大学職員のゆくえ - SD義務化元年を迎えて - 」のお知らせ

【4/17訂正】開催日が間違っていました(4/19→26)ので、訂正いたしました。

今年度第1回の学習会「大学職員のゆくえ - SD義務化元年を迎えて - 」の開催をお知らせします。

一昨年度、「大学職員基礎講座」と題して7回シリーズで体系的に事務職員向けのSDプログラムを実施しました。さらに昨年度はこれにゼミナール形式の「SDセミナー」を加え、2本建てで併せて「職員組合SDプログラム」として開催する予定だった、のですが、固有職員住居手当問題、さらにそこから問題が拡大して固有常勤職員の給与体系自体の変更にまで飛び火したため、とてもSDにまでは手が廻らず、秋にストップしたまま終了となってしまいました。
https://ycu-union.blogspot.jp/2016/04/sd1.html

固有常勤職員の給与体系の変更問題については継続交渉となったままで、最終的にどう着地するか予想できず、さらに年度の後半には別の問題も持ち上がりそうで、残念ながら今年度は定期的・体系的な学習会の実施は難しく、可能な時に可能な範囲での学習会開催に切り替えることにしました。

とりあえず4月中に1回、「大学職員のゆくえ - SD義務化元年を迎えて - 」と題して最初の学習会を開きます。

この4月1日からSDが義務化されたのはご存知と思いますが、更に昨年度末ギリギリの3月29日、「教職協働」を大学設置基準に新たに盛り込むことについて文科大臣から中教審(大学分科会)に諮問があり、即日、これを適当と認める答申が出て、わずか3日後の4月1日から施行されています。

その一方で、これらの法令改正の直接的な出発点となった「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(平成26年2月12日)において設置が求められた「高度専門職」については、中教審大学分科会、大学教育部会における審議が迷走、当面、棚上げとなっています。また学校教育法改正後の更なるガバナンス改革の推進のために検討されていた「事務局」「事務職員」の法令上の規定の見直しについても、上記3月29日の文科大臣諮問において大学設置基準第41条の記述「大学は、その事務を処理するため、専任の職員を置く適当な事務組織を設けるものとする。」を「大学は,その事務を遂行するため,専任の職員を置く適当な事務組織を設けるものとすること」と一語だけ変更するという、なぜわざわざそれだけのために?というレベルで一旦処理がなされています。

このような職員を巡る複雑な動き、さらには大学職員に何が求められ、どうしたらいいのかという問題の理解のためには、複眼的、構造的なアプローチが求められます。

今回は、第1に、一部からは日本の大学職員の「あるべき理想像」として参照されてきたアメリカの専門職(米教育省統計ではかつて “Other professionals” と総称され、教員とともに“Professional staff”として分類されたもの)及び日本の民間企業の“総合職”との比較から、日本の大学職員、特に事務職員の人材としての特徴 -能力や能力観、さらには「仕事観」- を明らかにし、今後の在り方を考えます。

第2に、アメリカの“Other professionals”と総称された各種の専門職は職種ごとに専門職団体を形成し、人材育成、資格認定、再教育等を担うとともに、そのHPで関連する知識、スキルを身に付けることができる大学院のリストを紹介していることが多いのですが、日本においても少数ながら大学職員の育成、高度化を目的とした大学院等のプログラムが存在しています。これらについて概観するとともに、具体的な教育内容についても紹介します。

日時、場所は下記の通りです。

【日時・場所】 4月 19 26日(水) 12:10~12:50
金沢八景キャンパス 職員組合事務室

* 資料準備の都合上、4月 17 24日(月)までに ycu.staff.union(アット)gmail.com までお申し込みください。
* 申し訳ありませんが、今回、開催は八景キャンパスのみとして福浦キャンパスでは実施しません。また、開催時間もとりあえず昼休みとしますが、こちらについては一定数以上の要望があった場合、別途、夜間の開催も検討します。
* 組合事務室の場所については、http://ycu-union.blogspot.jp/2015/09/916.html をご参照ください。

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2017年3月30日木曜日

住居手当ほか固有常勤職員に関する給与体系変更提案:第5報 交渉継続と4月1日よりの暫定措置で合意

前回組合ニュースから更に2週間余りが経過しました。前回、2月下旬からの交渉経緯について追ってお知らせすると書いたのですが、なかなかそれが果たせないまま時間が経過してしまっています。申し訳ありませんが、今回も前回と同様に前回ニュース以降の事実関係での2つのポイントのみの情報とし、詳細については後日とさせていただきます。

前回組合ニュースに掲載した当局側提案に対する組合回答を受けて、当局側との間でさらに交渉を重ねる一方、年度内での合意が難しいとみなした当局側から4月1日からの給与に関する暫定措置を定めたいとの申し出があり、2本の交渉を並行して進めてきました。

このうち暫定措置に関しては、「あくまでも正式合意に至るまでの暫定的な措置である」ことを重ねて確認の上、①4月1日の上位昇給は行わない、②下位昇給については、当局側当初提案のこれまでより厳しい基準ではなく、これまで通りの昇給とする、という2点で最終的に合意しました。繰り返しますが、これは正式合意までの暫定的なものです。

また、本命の方の給与体系変更の交渉に関しては、当局側から「年度内にせめて大枠に関して合意を行いたい」という要望があり、大枠とは具体的に何を意味するのかを問いただしたところ、「上位昇給を廃止することと、上位昇給の廃止等で得られる財源を勤勉手当の拡充に充てるという2点だ」という説明であったため、組合からは、「それに加えて組合回答の第2項目に相当する、今後の給与体系の在り方の考え方、原則を含めて3点とする必要があり、それを抜きに法人時合意から外れる上位昇給廃止と原資の移転による勤勉手当拡充のみを認めることはできない」として、協議を行ってきました。

29日夜、以下の通り、当局側から10日の組合側回答に対するさらなる回答という体裁で考え方が示されました。

【組合回答1】 今回の提案は、当局側も認めたように「固有職員の処遇は市に準じる」という法人化時の合意及びそれに基づき12年にわたり維持されてきた法人固有職員の処遇に関する重大な変更であり、本来、過去の経緯も踏まえ労使による充分な検討と交渉が前提となるべき問題である。それにもかかわらず、当局側の提案がなされたのは実施のわずか2か月前の1月下旬であり、組合側に対して要求した回答期限までの期間は1か月余、しかも当局側提案の基礎となる各種データ、基本となる経営方針等の提示にはさらに1か月以上を要し、組合が当局側提案の全容を把握してから回答期限までの検討に充てうる猶予はわずか1週間しか存在しない。当局側は第3期中期計画開始に合わせて制度を変更するためと主張しているが、中期目標・中期計画の検討は1年以上前から行われていたものであり、このような重大な提案は当然、早期に示されてしかるべきものである。

【当局の考え方】 年度内に一定程度の労使での合意を得られるよう、引き続き職員組合の皆様と精力的に話し合ってまいりたいと考えております。
そのうえで、年度内に話し合いを尽くしてもなお、合意できない課題が残る場合には、来年度も引き続き話し合ってまいりたいと考えております。


【組合回答2】 また、法人化時の「市に準じる」という合意の維持は困難としながら、代わってどのような人事給与システムを構築しようとしているのか、その全体像は明らかにされないままである。一体であるはずの人事考課制度の検討を今後行うとしている点からは、当局側においてもそのようなものは現時点では存在していないのではないかと疑われる。法人化時の合意という人事給与システム上の原則からの離脱を意図しながら、それに代わる人事給与システムの全体像が不明なままでは、提案に同意することは困難である。

【当局の考え方】 市派遣職員の給与については、市との取り決めに基づき決定しています。
一方、法人職員の給与は地方独立行政法人法により、「法人の業務の実績や社会一般の情勢に適したものとなるよう定めなければならない」と規定されています。
法人職員と市派遣職員の給与等については、原則、同一であるべきと考えています。
今回の提案は、職員のモチベーションの向上や持続的で安心して働ける制度づくり、昨今の法人の財務状況などを総合的に考慮したものであることをご理解下さい。
具体的な内容については、来年度も引き続き職員組合の皆様と協議してまいりたいと考えております。


【組合回答3】 組合としては、今回の当局側提案はあまりにも拙速かつ一方的なものであり、4月よりの実施を前提とした提案は受け入れがたい。性急な実施は見送り、改めて組合との間で充分な交渉期間を設定するよう求める。

【当局の考え方】 年度内に一定程度の労使での合意を得られるよう、引き続き職員組合の皆様と精力的に話し合ってまいりたいと考えております。
そのうえで、年度内に話し合いを尽くしてもなお、合意できない課題が残る場合には、来年度も引き続き話し合ってまいりたいと考えております。

また、このメモ(考え方)の提示とともに、これまで求めてきた年度内の大枠での合意についても、メモの通り来年度への持ち越しもやむを得ないという姿勢が示されました。

職員組合としては、組合回答の第2項について満足できる直接的な回答が示されたわけではないものの、①4月1日からの当局側提案の強行が暫定措置という形ではあるもののとりあえず回避され、②組合回答第2項の内容については、現時点で当局側に回答するだけの原則的な考えや枠組み自体が存在しておらず年度内に何らかの合意に達することは無理で、「具体的な内容については、来年度も引き続き職員組合の皆様と協議してまいりたい」として交渉の対象とすることが確認されたことから、当局側メモの内容については了解し、来年度早期に交渉を再開することを確認、年度内の交渉を終了しました。

職員組合としては、引き続き固有職員の処遇の維持を基本に来年度も交渉に当たっていきます。

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2017年3月14日火曜日

住居手当ほか固有常勤職員に関する給与体系変更提案:第4報 当局側提案に対する組合回答

 前回の組合ニュースから2週間余りが経過しましたが、この間、短い間隔での交渉が続き、組合ニュースを発行する前に次の交渉があり状況も変化してしまうためニュースの発行が追い付かない状態です。

今週末か来週初め位には2月23日以降の交渉の状況について改めてニュースを発行したいと考えていますが、取り急ぎ3月10日に当局側の当初提案に対して行った組合の回答をお伝えします。


2017年3月10日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

常勤固有職員給与体系見直しに関する新提案について(回答)

1月20日及び27日付で提案のあった固有常勤職員の給与体系見直しについて、以下のとおり回答します。

  1. 今回の提案は、当局側も認めたように「固有職員の処遇は市に準じる」という法人化時の合意及びそれに基づき12年にわたり維持されてきた法人固有職員の処遇に関する重大な変更であり、本来、過去の経緯も踏まえ労使による充分な検討と交渉が前提となるべき問題である。それにもかかわらず、当局側の提案がなされたのは実施のわずか2か月前の1月下旬であり、組合側に対して要求した回答期限までの期間は1か月余、しかも当局側提案の基礎となる各種データ、基本となる経営方針等の提示にはさらに1か月以上を要し、組合が当局側提案の全容を把握してから回答期限までの検討に充てうる猶予はわずか1週間しか存在しない。当局側は第3期中期計画開始に合わせて制度を変更するためと主張しているが、中期目標・中期計画の検討は1年以上前から行われていたものであり、このような重大な提案は当然、早期に示されてしかるべきものである。
  2. また、法人化時の「市に準じる」という合意の維持は困難としながら、代わってどのような人事給与システムを構築しようとしているのか、その全体像は明らかにされないままである。一体であるはずの人事考課制度の検討を今後行うとしている点からは、当局側においてもそのようなものは現時点では存在していないのではないかと疑われる。法人化時の合意という人事給与システム上の原則からの離脱を意図しながら、それに代わる人事給与システムの全体像が不明なままでは、提案に同意することは困難である。
  3. 組合としては、今回の当局側提案はあまりにも拙速かつ一方的なものであり、4月よりの実施を前提とした提案は受け入れがたい。性急な実施は見送り、改めて組合との間で充分な交渉期間を設定するよう求める。

以上

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職場集会(3/21火、3/22水)開催のお知らせ

固有常勤職員の給与体系の変更問題に加えて、この1週間余りの間に再来年度からの非常勤職員制度の根本的な変更、来年度からの常勤・非常勤職員の休暇制度の変更の提案も出てきました。

下記の日程で職場集会を開催し、これらの問題を中心に情報提供と意見交換を行います。

3月21日(火) 12:15~12:45
八景キャンパス 本校舎 職員組合事務室

3月22日(水) 12:15~12:45
福浦キャンパス 臨床研究棟 A103教室


*都合により今回、昼食は各自でご用意ください。

*組合員で無い方も含めて、飛び入りの参加も可能ですが、資料準備の関係上、出来るだけ3月16日(木)までに ycu.staff.union(アット)gmail.com への事前申込をお願いします。

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2017年2月23日木曜日

住居手当ほか固有常勤職員に関する給与体系変更提案:第3報 当局側提案の裏付けとなるデータの提示とその問題点

2月17日夜、この問題での第3回の交渉を行いました。

内容としては、2回に分けて行われた当局側提案の根拠、裏付けとなる各種データの提示等で、1月20日の提案からちょうど4週間が経過しています。

当局側の説明内容は、以下の通りです。

  1. 勤勉手当のA評価の成績率(支給額の上乗せ率)・分布率(A評価者の割合)の拡充について、その原資は「上位昇給の廃止による680万円」+「市での住居手当の上乗せに追随しないことによる原資+勤勉手当の算出基礎からの扶養手当の除外による計1820万円」で総額2500万円、 それに対して勤勉手当のA評価の分布率・成績率の拡充により必要となる年間の総額が2410万円で、差し引き90万円の残。
  2. 平成29年度から平成34年度までの次期中期計画の収支計画の概要について。第3期における業務費は、第1期、第2期に引き続き上昇、第2期の約3388億に対して約4152億に。業務費に占める職員人件費は、第1期の33.6%、第2期の33.0%から34.9%に上昇の見通し。収支計画としては、6年間で約9億3千万の赤字でこれを目的積立金の取り崩しで穴埋めする計画。
  3. 制度見直しにより、モデルケースで見直し前と賃金差はどうなるかについては、単純な比較は困難、業績による評価の差がある等の理由によりモデルケースの提示は困難。
  4. 来年度検討する人事考課制度についての考え方としては、より職員のモチベーションを上げる仕組み、大学・病院に適した制度に見直す。
  5. 固有常勤事務職員のうちの1級在職者の数は、29年1月1日時点で63人、看護・医療技術職も含めた固有常勤職員全体では849人。

各項目に対する組合の見解等は以下の通りです。

  1. 見直しによって引かれる額と勤勉手当A評価者に回される額を比較すると、固有常勤事務職員全体として引かれる予定額の方が90万円多いことが判りました。ただし、この程度の差額は簡単にプラスマイナスゼロに調整できます。今後、譲歩の体裁を整えるために使える、いわば“見せ餌”として置いてあるものかもしれません。いずれにせよ、前回の組合ニュースで指摘したように今回の提案の最大のポイントは法人化時の「大学固有職員の処遇は横浜市職員に準じる」という合意を変更することにあると考えられ、そのためには今回はむしろ変更自体の度合いは小さくした方が交渉戦術上望ましいでしょうから、プラスマイナスゼロでも少額のマイナス(固有常勤事務職員全体にとって)でも大きな差は無いと言えるでしょう。また、前回も書いたように、市に準じた住居手当の引き上げの原資があるのであれば、当然ながら、それはまず住居手当に回すべきです。
  2. 相変わらず法人の規模の拡大を続けるようです。大学としての教育研究活動にせよ、大学付属病院としての医療活動にせよ、本質的に“儲かる”ものではなく、一定上の質を維持しつつ規模を拡大すればするほど赤字が拡大する可能性は大きくなります。規模の拡大を続けつつそれを避けようとすれば、方法としては「国内のマンモス私学のようにST比(学生・教員比)を現在の教員1人当たり10人程度から30人以上に増やす」か「アメリカの大学のように年間授業料を100万円単位にする」、あるいは両者を組み合わせる位しかありません。また、職員人件費については、圧倒的多数である看護・医療技術職員と合算しての数字では、固有常勤事務職員を巡る状況は把握できず、固有常勤事務職員のみの数字を示すよう求めましたが、「算出困難」という回答で(本当に?)、やむを得ず保健管理センターの医療技術職等も含めた「大学部門」の数字を示すよう求め、こちらについては了解を得て次回に提示されることになりました。
  3. モデルケース、モデル賃金の算出は困難という主張に対しては、それを計算しないで人件費が増だの、どう変えたらいいのか等の話ができるわけが無く、最終的に固有常勤職員の平均年齢の職員で「現在の制度では上位昇給に当たり、当局側提案の新制度では勤勉手当がA評価になる場合の差額」「現在の制度では上位昇給に当たり、当局側提案の新制度では勤勉手当がB評価の場合の差額」さらに「横浜市と同様の昇給の運用を行った場合と当局側提案内容での運用を行った場合の差額」という3通りでの数値を次回提示させることになりました。
  4. これについては予想通りあまり実のあるものは出てきませんでしたが、素直に読めば「今回の給与制度の変更に合わせて人事考課制度を設計する」、言い換えると1月20日の説明通り「大学・病院に適した」が「(職員人件費に関する)財政的制約を前提とした」、「より職員のモチベーションを上げる仕組」が「職員全員ではなく、勤勉手当評価の高い職員への抑制する人件費の優先的配分を行う」という事になるでしょう。
  5. 「1級在職者」というのは組合ニュースで取り上げるのは初めてかと思いますが、要するに年齢・在職年数が低く、月例給の上位昇給の対象外にされている職員のことです。前回の交渉で、月例給の引き上げより勤勉手当の引き上げの方がインセンティブになるという主張の根拠として、職員のプロジェクトチームの検討で上位昇給に重きを置く在り方に対して「報われていない」と不満が出たから、という主張をしていましたが、今回の数字で明らかになったのは「そもそも上位昇給の対象外とされる1級在職者が多数いるのだから上位昇給では報われないというのは現時点では当然で(昨年度、一昨年度の時点ではさらに多いはず)、そして数年待てばそれらの職員は上位昇給の対象になる」ということです(固有常勤事務職員の平均年齢は20代かせいぜい30代初めの筈ですので)。この点を指摘すると、当局側は「だからこそ、このままでは財政負担が大変で変える必要がある」という予想外の主張を返してきました。月例給の上位昇給の対象外の職員が多数いる現状で「上位昇給では報われない」という不満を制度を変える根拠として持ち出しながら、「実は皆が上位昇給の対象になっては人件費上困る」と言っているわけで、これではその「プロジェクトチーム」の検討は本来の意図とは逆の方向につまみ食いされたことになります。また、この当局側発言自体が制度変更の目的が固有職員の人件費抑制にあることを明確に裏付けています。

さて、当局側が提示してきた各種データは以上のようなもので、既述のように幾つかのものに関しては修正、ないし追加して改めてデータの提示を行うよう求め了解を得ました。また、更にこれも前回の組合ニュースで指摘したように4月から始まる次期中期計画での市よりの運営交付金は大幅に増額されており、それはなぜなのか、具体的にどのような費目が増額されているのかについてもデータの提示を求め了解させました。

それ以外では、組合が繰り返し指摘している「本当に財政難だというのであれば次期中期の拡大路線は何か?そんなに財政状態が悪いのであれば、そもそも拡大路線を取るべきではないのでは」という指摘に関して、当局側のロジックが次第に明らかになってきました。

この問題についての当局側のやり方ですが、財政状態に関する認識がまず全体の前提としてあるのではなく、それと新たな組織の設置等の拡大路線については切り離したうえで組織の新増設等をまず決定、その後、財政上の辻褄合わせを行うという方法、発想がとられているのではないかという印象が回を重ねるごとに強くなってきました。

(1)組合が「財政難」、言い換えれば「金が無い」という当局側主張に沿って「金が無いのであれば、金がさらに出ていくような組織の新増設等の拡大路線は合理的でない」という、全体を資金の観点で考えるのに対して、(2)当局側は、自身が考える「社会的ニーズに対応した取り組み」については、法人財務の状況を念頭に置いてその範囲内で計画するのではなくコスト面は棚上げして「社会的ニーズに対応した取り組み」という独立項目でまず計画、決定、その後、他の項目の費用を削ることにより全体としての財政上の辻褄を合わせればいいと考えているようなので、その意味では話がかみ合うわけがありません。

(1)の組合の観点に立てば、仮に「社会的ニーズ」が本当にあるとしても、財政が脆弱、将来の見通しも楽観できないのであれば、その経費は全体の資源配分の大まかな方向性の枠内、スクラップ・アンド・ビルド、あるいは吸収可能な経費微増という範囲内で検討することになるでしょうし、あるいは私学ではなく公立大学だという前提を考慮しても、「社会的ニーズ」に対応した増分は設置者が交付金増で支え続けるという合意が強固に存在していることが前提だと考えます。「いくらかかるか分からないが、まず、これをやる」「ついで、他の部分を削って何とかする」という手法は最終的に「何とかなる」保証などありませんし、中長期的な観点からはなおのことです。実際、本学の法人化以降の歩みは、拡大路線が経済的にはペイするどころか一層の財政上の窮地を招くことを示しています。まして、労働組合の立場からは、後出しで「何とか辻褄を合わせる」ための削減項目として職員人件費を俎上に挙げることは容認できません。職員の質が大学経営上非常に重大な要素だという認識が国内大学においてもようやく定着しつつあり、全員任期制という無理のある制度もようやく撤廃したというのに、これでは本学は「公立大学の弱点は事務局」という俗論を裏打ちする方向へと一直線という事にもなりかねません。

また、当局側の主張する「社会的ニーズ」が、「流行」や「文科省推奨」以上の、自前のきちんとした検討を経たものなのかも心もとないところです(ここ数十年の「流行」や「文科省推奨」の少なからざる部分が、今となっては「やらなければよかった」になっていることを考えればなおのこと)。

それに、繰り返しますが、大学だの大学付属病院だのというものは本質的に“儲かる”ものではありません。特区制度で株式会社立大学の設置が認められるようになったのが2003年度、本質的に“儲かる”のであれば、溢れかえる内部留保の投資先に悩む国内大企業が先を争って参入してきてもおかしくないはずです。ですが、実際には株式会社立大学は減少を続け消滅寸前です。

さて、1月20日に第1の提案があり、3回目でようやく当局側の提案とその根拠の全容が伺えるようになってきました。しかし、組合側が完全に当局側の提案とその根拠となる情報を受け取るまでに要した時間は既に1か月以上、しかも根拠となる各種データはまだ不足しており第4回が既に予定されています。当局側が指定してきた回答期限は3月10日で最早2週間しかありません。次回で当局側提案とその根拠の全体がようやく全て明らかになるとしても、それを受けての組合の検討と交渉のための期間は1週間から10日程度、やはりこれを真っ当な交渉と呼ぶことは無理があり過ぎると言えるでしょう

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2017年2月17日金曜日

住居手当ほか固有常勤職員に関する給与体系変更提案:第2報 法人化時の合意変更に当たると認める その他 多数の問題点


前回1月23日付組合ニュース以降の続報です。

前回の組合ニュースでは、「今年度の横浜市における住居手当の1600円の引き上げについて、固有常勤職員については追随しない(市派遣職員については実施)」だけでなく、4月からの「月例給の上位昇給の廃止」、「勤勉手当の算出基礎からの扶養手当の除外」という3つの措置を併せて、それによって浮いた資金を勤勉手当の成績率・分布率の拡充に充てるという給与制度の大きな変更を、しかも実施のわずか2か月前に突然提案してきたことをお伝えしました。今回はその続報になります。

1月20日に続いて2月6日、再度交渉を行いました。


Ⅰ.勤勉手当の具体的変更内容について

前回示されなかった勤勉手当の具体的変更内容ですが、A,B,Cの3段階評価はそのままとして、

  1. A評価となる職員の割合を現在の5%から最大で20%に拡大、B評価となる職員の割合は現在の90%から最大80%に減、C評価は現在の5%を絶対評価によるものとして割合は定めない。
  2. A評価になった職員への給付額の上乗せを現在の+5%から+15%に増、C評価の-5%はそのまま。


と変更するというものでした。

この当局側の追加提案を受けて、組合からは、まず、なぜこのような法人化時の合意に反する給与制度の大きな変更を、しかも昨年の8月に住居手当の取り扱いについて2年近い交渉の末、28年度は例外的に市に準じないことでようやく合意した直後、交渉期間もほとんど取れない年度末のタイミングで言い出したのかを改めて質しました。これに対しては、①「法人の財務状況が初めて完全な赤字となった昨年度以上に厳しく、積立金を取り崩しても昨年度以上の赤字になりそうだから」として、法人財務の急速な悪化に対応するためのものであるとの説明がありました。

加えて、4月から始まる次期中期計画について、②「このままでは人件費増による収益圧迫が現実のものになる」こと、③「そのような制約条件の中で、市が勤勉手当について変更するということがあり、財政状況の悪化という制約条件の中で、職員のインセンティブを維持するためには月例給の上位昇給より勤勉手当の加算で対応する方が望ましいと考えた」ことも併せて理由として挙げました。

これらのうち、③について、なぜ月例給(月給)の引き上げではインセンティブにならず、勤勉手当(賞与)の引き上げがインセンティブになるのか、意味不明であるとしてさらに説明を求めたところ、現場の職員を選抜したプロジェクトチームの2年間かけた検討で、市に準じた上位昇給にウェイトがかかり勤勉手当のウェイトの低い評価には不満が出て、勤勉手当の方が、このような業績を上げたからということで分かり易い、という組合側には説得力の感じられない追加説明がありました。

以上が、まず1月20日の交渉では明らかにされなかった勤勉手当の具体的変更内容に関する追加提案内容になります。


Ⅱ.法人化時合意の変更提案か?

続いて、同席していた、法人化時の「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意における当事者の一方である横浜市従本部の執行委員から「法人化時の市に準じるという合意ではこれ以上は財政が厳しい、変えるという提案か?」という確認があり、当局側を代表する人事課長から「そういう理解で結構」という回答がありました。これによって、今回の提案が当局側からの法人化時合意の変更を意図するものであること、法人固有職員の処遇を市職員とは別のものとしようとしていることが完全に明確になりました。

さらに横浜市従本部執行委員から「このような大きな問題は、過去の労使合意も踏まえ慎重に議論すべきもので、1月末提案、4月1日から実施では充分な議論などできない」との指摘があり、これに対しては「法人発足時に固有職員の処遇は市職員に準じるという合意があったのは承知しているが、あくまでの発足時の合意だ。地方独立行政法人法の趣旨に基づき、法人の給与は法人業務実績と社会一般の情勢に基づき決めることになっている。議論の期間については組合側と誠実に対話したいと思っている。2か月の中で精力的に協議したい」という答えでした。なお、この日の勤勉手当の具体的変更内容を記した追加提案文書の末尾には、組合側への回答期限として3月10日(金)を指定しています。実際には1月20日を起点にカウントしても交渉期間は2か月もありませんし、提案内容自体が出そろったのは1月27日、さらに交渉のために必要な各種データもまだほとんど示されていませんので、実質的な交渉期間は1か月もありません。


Ⅲ.その他

その他では、組合への提案文書における提案理由が「法人に相応しい人事給与制度」・「意欲・能力・実績を反映するメリハリのある人事給与制度とする」ことであり、口頭で繰り返している「法人財政の悪化」「固有常勤職員の年齢構成の極端な偏りへの対応の困難性」が含まれていない点について、「『制約条件』として財政状況の悪化と年齢構成の偏りを言っているにもかかわらず、提案文書では、法人に相応しい、意欲・能力・実績を反映する制度としか書いておらず、これはミスリーディングだ。これだけではまるで固有職員の給与が上がるようにも取れる。財政難への対応のための変更というなら正直にそう書くべきだ」と指摘しました。当局側の回答は「『大学・病院の実態に相応しい人事給与制度』という部分で含意している。制約条件だから敢えて書かなかった」という納得しがたいものでした。

また、「財政難で制度を変えざるを得ないというなら、財政難に至った責任の所在は?」という追及に対しては明確な回答はありませんでした。

さらに、最後に「本当によく仕事をやっている若手・中堅に光を当てるための制度だ」という発言があり、「評価」結果の高い一部職員を優遇し、その他の職員との間での処遇較差の拡大を志向する制度であることが明言されました。

以上が、2月6日の交渉における概要です。その他、書ききれなかったこともありますが、法人の提案内容を裏付けるバックデータの提供が、口頭によるごく一部のもの以外は無かったこともあり、今回はこの程度としたいと思います。


Ⅳ.組合の見解

  1. 法人財政の急速な悪化と、法人固有職員の年齢構成が極端に偏っていて今後の平均年齢の上昇により市職員と同等の処遇は維持できないという「制約条件」を前提とした提案である以上、今後、中長期的に法人固有職員の処遇を「引き上げない」ための制度変更であることは確実です。しかも、その枠内で(月例給の上位昇給を廃止した上での)勤勉手当の「上位評価者」への優先的配分ですから、勤勉手当がB,C評価(8割程度)の場合、月例給の上位昇給による埋め合わせの機会も無く、これまでよりも処遇が低下することになる可能性が高いでしょう。
  2. また、勤勉手当でのA評価への配分増と言っても、交渉の中で口頭で示された額の変動は、これまでの「A評価者の全員分」で年間総額260万円程度の配分額が2670万円程度(給付人数は現在の4倍)になるというものです。モデルケースの数値が示されていないため不確実ですが、上位昇給廃止分等の3つのマイナスと比較して大幅に大きな額となるとは考えにくいところです。
  3. そのような少しばかりの額の変動がインセンティブになるかも疑問です。月例給の上位昇給によるリベンジのチャンスも無いB、C評価者のモチベーションが上がらないのは確実として、A評価者に関してもそうはいかないだろうという反証として行動経済学の研究の例を挙げておきます。

    慈善募金の寄附集めを使った実験で、①慈善事業の意義を十分に説明してから募金集めをしてもらったグループと②慈善事業の意義のインプットに加えて各人が集めた募金額の1%のボーナスを支払うことを約束したグループ、③各人が集めた募金額の10%のボーナスを支払うことを約束したグループ(慈善事業の意義に関する説明なし)という3グループに分け、どのグループの成績が最も高く、どのグループが最も低くなるかを検証したものです。

    さて、みなさんはどうお考えになるでしょうか?

    最も高いパフォーマンスを挙げたのは①のボーナス無しのグループで、最も低かったのは②のグループでした(『その問題、経済学で解決できます。』ウリ・ニーズィー、ジョン・A・リスト)。実験の結論は、金をインセンティブにするならそれはたっぷり支払われなければならないというものです(組合が賃金の話をしているので、ボランティア活動では活動意義を十分に理解した上での無報酬が一番いいという話は除きます)。加えて勤勉手当のA評価の上乗せ分の原資は、もともと他の形で受け取っていたか、受け取る可能性のあったもので、別に今までの給与に純増で上乗せされるものではありません。インセンティブとしてはさらに効果は怪しくなります。
  4. 今回の変更により法人化時の「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意が反故になった場合、これまでであれば勤勉手当(賞与)に関しても「民間企業との較差に基づく市人事委員会勧告による横浜市の給与」に準じていたものが、民間企業同様、「法人の業績」次第で如何様にも、簡単に動かすことができることになります。むしろ本筋はこちらの方で、今回の提案で来年度の給与が幾らくらい変わるかよりも、法人化時の合意が反故になることで、以後は給与・給与制度共に経営側がいつでも好きなように変更できるようになってしまう、ことに賞与とは本来そういう性格のものだという事こそが最大の問題です。
  5. また、月例給の上位昇給より勤勉手当のA評価の方がインセンティブとなるという根拠も意味不明です。それに繰り返しますが、勤勉手当の成績率・分布率の拡充は「今年度の横浜市における住居手当の1600円の引き上げに固有常勤職員については追随しない」、「月例給の上位昇給の廃止」、「勤勉手当の算出基礎からの扶養手当の除外」という3つ措置により浮いた資金を廻すことで実行されるもので、人件費のアップで達成されるものではありません。つまり、勤勉手当のA評価者にしても、その増分の原資は「自分も対象であった可能性のある月例給における上位昇給分」と「従来通り市に準じていれば自分が借家・借間住まいの場合確実に支給された住居手当の増分」、そして同じく確実に自分が受け取っていた「勤勉手当の算出基礎からの扶養手当の除外」です。何やら朝三暮四のような話になってきた観もあります。
  6. 法人化時の合意について「あくまでの発足時の合意」と主張していますが、合意自体の有効期間を特に定めていない以上、その変更はあくまでも労使の合意に拠るべきで、法人化以後10年以上が経過したからと言って合意が自動失効しているがごとき主張は受け入れられません。
  7. 交渉期間について「誠実に」と言っていますが、人事給与制度、それも労使合意に基づき法人化以後10年以上続けきてきたものを実質1か月余の交渉で決着しようとしている時点で「誠実」とはとても言えません。
  8. 前回も書いたように、法人固有職員の年齢構成の極端な偏りは経営側の人事政策の結果であり、誰も何もしていないにもかかわらず自然発生したわけではありません。毎年、採用計画が立案され、承認され、実施された結果です。他の公立大学法人の中には、年齢構成の極端な偏りを回避するための計画的な採用を行ったところも複数存在しています。当然ながら、その責任をまず問うことが必要です。経営責任無き経営は近代社会においては許されるものではありません。
  9. 「法人財政の急速な悪化」についても同様ですが、それ以前の問題として、これも前回指摘したように、一方で「財政難」を言い、固有職員人件費の抑制に着手しながら、もう一方では4月からの次期中期計画では様々な新規事業、組織新設・増設が目白押しとなっています。右手のバケツには「水が無いからもう入れるのはやめよう」と言い蛇口を閉めながら、左手は穴の開いたバケツに水を注ぎ続けるがごとき経営は到底合理的なものとは言えません。
  10. 関連して、本当に経営難なのかという問題もあります。法人化時に「もっと経営努力を」ということで年額で30億円余削減された運営交付金ですが、次期中期計画の期間中の運営交付金予定総額は、現行第2期中期計画の約580億から約650億へと大幅に増額される模様です。労働者の権利保護が法によって与えられた使命である労働組合としては、本当に経営が悪化し、例えば(公立大学の経営においては非現実的な仮定ですが)キャッシュフローが悪化、運転資金が枯渇しそうなどという事態であれば、他の項目と同様に人件費についても削減の対象となるという事は否定しませんし、少なくとも交渉自体には応じるでしょう。しかし、そうではなく、ただ、他の事項に優先して人件費を削減しようということなのであれば、法に与えられた使命と組織における公平・公正性のために当然同意は出来ません。あるいは、運営交付金の大幅な増額を受けても苦しいほど経営状態が悪化しているというのであれば、それはやはりまず第1に経営責任の所在の問題、そして更なる経営状態の悪化につながるであろう拡張政策は一体どういう事かという問題になります。
  11. また、本学の場合、「評価に基づく処遇」自体がどこまで公平、公正に行いうるかという点でも問題があります。法人化以降、2014年度の固有常勤職員任期制廃止まで、職員組合は毎年複数持ち込まれる「上司との折り合いが良くない ⇒ 日常での軋轢 or 低評価 or ハラスメント ⇒ メンタルを中心に健康を害する ⇒ 任期更新が不可とされる or 1年などの短期契約を提示される」という相談への対応に追われてきました。ひどい時には5,6件が同時進行していたことさえあります。上記のようなトラブルは任期制の廃止により連鎖の最後の部分が無くなったことで一見沈静化していますが、上司との人間関係の軋轢等の問題は依然として存在しています。組織文化にまで及んだ影響の修正は容易なことではありません。
  12. この点もデータの提示が無いと確実には言えないのですが、来年度に関しては仮に当局側主張の通り実施されたとしても、勤勉手当の評価による差はそれほど極端なものにはならない可能性が高いと思われます。しかし、これまでの当局側の感触や法人化以降の経営サイドの態度・傾向、それに④で指摘した根本的な問題点からすると、その後、上位評価者に対する傾斜配分を大きくしていく可能性は高いであろうと予測されます。しかし、本学には上記のような評価に関する組織的な問題があり、また、仮にこれが「普通の組織」レベルに改善されたとしても、メンバーシップ型人材によって構成された組織における評価はもともと極めて難しい問題をはらんでいます。個別のジョブは明確でなく、メンバーシップの集団内においては共同して仕事を進めることが良しとされ、ジョブに基づく専門性はむしろ忌避されます。そのような仕事の在り方は個別の厳密な評価には馴染まず、評価による処遇の差が大きくなるほどメンバーシップ集団内での軋轢を強めることになります。大企業の成果主義の失敗は、メンバーシップ型の人事システム内にシステムと馴染まない「個別社員の成果」による評価を持ち込み、それに基づく処遇の差を拡大した点が大きく影響しています。逆に、処遇の差を小さくとどめても、それは③で指摘したように、コストをかけて制度・運用を変えることに見合うほどの成果が得られない可能性が高いでしょう。であれば、余計なことはせずに20代、30代職員の住居手当を法人化時の合意通り9500円から19600円に引き上げる方が制度変更や評価のコスト、リスク無しに職員の処遇を改善できるわけで、むしろ効率的であるとさえ言えます。
  13. 今回の提案通りになった場合、これまでも市派遣職員、法人固有常勤職員、契約職員、嘱託職員、アルバイト、派遣社員と複雑な人的構成であった各職場が、これまでは同一であった人事給与・評価制度面で市派遣職員と法人固有常勤職員が分離、別建てとなりさらに複雑になります。時間的コストも含めさらに非効率化する可能性が高いでしょう。
  14. そもそも論の一部として、市の住居手当の引き上げに追随する資金があるのであれば、合意に従いそうすべきです。もともと市が昨年度、20代、30代の住居手当を倍額の18000円に引き上げたのは、横浜市やその近辺において借家・借間の家賃が高く、給与も抑制されている中、せめて9000円から引き上げようという意味があったはずです。それでも横浜市やその近辺において借家・借間の家賃を賄うには到底及ばず、今年度の引き上げ額1600円を加えて19600円としてもそれは同様です。ましてや現在の法人固有常勤職員の月額9500円では住居費のごく一部しか賄えません。
  15. 考課制度については、今回は変更せず29年度中に見直すとしています。給与制度と考課制度はセットで機能するもので、考課制度はどう変えるか分からないが給与制度は前倒しで変更するので同意しろというのは組合としては到底納得できるものではありません。どのような考課制度に基づき給与制度がこう変わるという全体像が明らかにされて初めて本来の交渉が可能になるものです。
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