2018年2月24日土曜日

住居手当問題に関する質問書

現在、40歳未満の本学の固有常勤職員と同じく40歳未満の横浜市職員の住居手当は月額で10110円の差が生じています。

この問題については、2016年度の横浜市の市人事委員会の勧告に基づく40歳未満の職員の住居手当の9000円から18000円への引き上げを受けて同様の引き上げを要求しましたが、当局側は財政難を理由に引き上げを拒否、最終的に2016年8月31日、2016年度については市に準じない月額で500円の引き上げに止めること、次年度に向けて適切な時期に話し合いを再開すること等で合意しました。
https://ycu-union.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

ところがその約1か月後、10月12日の横浜市人事委員会勧告で40歳未満の市職員の住居手当のさらなる引き上げ(月額1600円)の勧告が出たため直ちに交渉を再開したものの、当局側は財政難で横浜市には追従できないとして再び引き上げを拒否、組合としては「法人固有職員の処遇は原則として横浜市職員に準じる」という法人化時の合意に反するもので当局側主張を受け入れることは出来ず平行線が続き、11月29日付で一旦、継続協議とすることで合意しました。
https://ycu-union.blogspot.jp/2016/11/105003.html

さらに年が明けた2017年1月20日、当局側が固有常勤職員の給与体系自体の変更を提案してきたため交渉の焦点が移行し(一応、当初提案には住居手当の扱いも含まれていましたが、月給と賞与という給与の根幹をなす部分の変更であること、さらに重大なことに当局側は当初、法人化時の合意自体を否定するような言動を行っていたことから、そちらへの対応をより重視せざるを得ませんでした)、2017年9月13日に合意が成立したものの、住居手当に関する交渉はこの間、実質的に行うことができませんでした。
https://ycu-union.blogspot.jp/2017/01/blog-post.html
https://ycu-union.blogspot.jp/2017/09/blog-post_3.html

2016年度の当局側の提案には2016年度は500円の引き上げ、2018年度からさらに500円を引き上げという内容が示されていました。上記のように組合が当局側と合意したのはあくまでも2016年度の措置のみでその後の扱いについては合意に達していませんが、今年度繰り返し指摘しているように財政悪化とそれにも関わらず進められる経営拡大方針という状況下、当局側のプランとしてはどうなっているのか確認するため、以下の通り、質問書を提出したものです。

2018年2月22日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

住居手当問題に関する質問書

市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、標記の件については、2016年8月31日に当該年度については市と異なり20代、30代固有常勤職員の引き上げは500円にとどめること、次年度に向けて適切な時期に話し合いを再開すること等で合意しました。その後、2016年10月12日の横浜市人事委員会勧告で40歳未満の市職員の住居手当のさらなる引き上げの勧告が出たことを受けて交渉を再開、11月29日付で継続協議について合意しましたが、2017年1月20日、当局側より固有常勤職員の給与体系自体の変更が提案されたため交渉の焦点が移行し、2017年9月13日に合意が成立したものの、住居手当に関する交渉はこの間、実質的に行われていません。
2016年度の扱いに関する合意の前提となった当局側提案では、2018年度より20代、30代の固有常勤職員について、さらに500円の引き上げを行う計画が示されていましたが、当局側としてのこの計画について現時点でどうなっているか、説明を求めます。

以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

政府主導型大学再編の始まりと“戦略の醍醐味”(3.5)

余裕全くなしの状態なのですが、もし本当なら日本の高等教育の将来に重大な影響を及ぼしそうなデータが出てきたので、とりあえず紹介だけしておこうと思います。

この稿の(1)でも挙げた中教審諮問「我が国の高等教育に関する将来構想について」ですが、大学分科会の下部の将来構想部会と制度・教育改革WGで検討が行われ、年末の12月28日付(実際に文科省HPに掲載されたのは年明けでしたが)で「今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理」が将来構想部会の名で公表されています。

その後も検討が進められているわけですが、2月21日の将来構想部会で「大学への進学者数の将来推計について」という資料が提示されました(ただし、当該資料は消されています。一時的なものなのかは判りません)。

内容については新聞各紙で一部が紹介されていますが、諮問の「概ね 2040年頃の社会を見据えて,目指すべき高等教育の在り方やそれを実現するための制度改正の方向性などの高等教育の将来構想」に基づき、2040年における県別、男女別に大学進学者数の推計を行ったものです。全体の数値については、報道にも出ていますが、2017年の約63万9千人から2040年は約50万6千人へと約12万3千人の減となるというものです。

ただし、試算方法の詳細については報道で触れられていません。

では、どのような条件設定で推計したかと言うと、①2014年から2017年の都道府県別、男女別の大学進学率の伸び率によって2040年まで進学率が上昇するとして推計、②男性の進学率が2017年度と比較して5ポイント以上上回った場合、そこで進学率は据え置き、③女性の進学率が男性を上回った場合、以降、男性の進学率と同値に、④進学率の伸びがマイナスの場合、2017年の進学率を維持、というもので、そもそも進学率が現在より5ポイント以上上回ることは無いという前提での推計です。このため大学進学率の推計も2017年の52.6%が2040年の57.4%と4.6ポイントの伸びにとどまるとされています。また、留学生、社会人学生数について、それぞれ2020年時点で現在より約2000人増、2022年で現在より約4000人増で18歳人口減による進学者数の減を補うには到底足りないとするものでした。

この推計について、委員からは「高専、短大が含まれていないが」、「パートタイム学生が増えるのでは」、「専門職大学で増える分は?」、「地方には増える余地がある筈」等々の意見、疑問が出たものの、部会長から「現状、専門学校を含め進学率約80%でこれ以上増える余地はない。あとは中での配置換えだけ。大枠は変わらない」という発言があり、同様に「もうこれ以上、細かい数字を言っても仕方ない」といった発言が2人の委員から続き、次回から叩き台を示して議論するという方向性が示され終わりました。

問題点を幾つか指摘しておきます。

第1に、進学率が5ポイント以上は上昇しないという仮定の根拠が説明されていません。

第2に、部会長の「現状、専門学校を含め進学率約80%でこれ以上増える余地はない。あとは中での配置換えだけ。大枠は変わらない」という発言自体はその通りかと思いますが、ここで問題になっているのは高等教育機関全体への進学率ではなく「大学」への進学率なので、「中での配置換え」は(実際に近年の大学進学率の上昇は短大からのシフトによる部分が大きいことを考えても)大きな意味を持ちます。と言っても、「中での配置換え」の数字を推定するのは難しい上に「専門学校からのシフト」など議論できるものではないでしょうから、政治的にも現在の高等教育各セクター間の異動は無いものとせざるを得ないというのもうなずけるところはありますが、現実離れした想定という問題は残ります。その条件では現在の入学定員に比べ約12万人もの定員割れが生じるという結論からすればなおのことです。

第3に、仮に、これまでに出されている「進学率が現状と同じとした場合」、「進学率が現在より10ポイント上昇する場合」などの試算についてはこれ以上検討せず、今回の試算だけに基づき今後の政策を検討することになった場合、約12万人もの定員割れを放置するという話にはならないでしょうから、欧米では類例のない「政府によるトップダウンの大学整理」へと舵を切る可能性が高くなります(そういえば明治時代にはありました)。ここ数か月、高等教育政策を事実上決定している官邸の「人生100年構想会議」の2月8日の第5回での総理の発言、「概ね以下の御意見を頂きました。(中略)少子化時代を迎え、国公私の枠を超えた大学の連携・統合を可能とする制度や、撤退・事業承継の制度的仕組を検討すべき。(中略)文部科学大臣には(中略)以上の論点について検討し、本構想会議に検討経過・結果をご報告いただき、そしてこの場で再度議論したいと考えております」もその方向性を示唆しています。

実はこのような「政府によるトップダウンの大学整理」は、韓国において2014年より着手され、現政権下においても一部修正の上、継続されているものです。この稿の(2)で「来るべき『政府主導型大学再編』はフランス型大学連合を表看板に、韓国の大学再編をマイルドにしたものを裏の看板として実行に移されることになるのかもしれません」と書いたのですが、本当にそうなりそうな気配になってきました。
https://ycu-union.blogspot.jp/2017/08/blog-post_23.html

その韓国の「構造改革政策」ですが、具体的には政府の定める基準により各大学を評価、「最優秀」~「退出」の6段階とし、「最優秀」以外の大学は評価レベルに応じ定員削減や“退出”を促すことになっています。2014年から2022年までの9年間で入学定員16万人の削減を目指し、前政権下での2016年までの3年間で目標の4間人を上回る4万4千人の削減を実現しました。分野的には理工系、医系を重視、人社系や教育、芸術が削減の対象となり、結果として構造的な再編成を進行させ、元々あった海外進学志向をさらに進め、国内進学率の低下につながっている模様です。韓国に比べ、“削減”しなければならない定員数がある程度少ないこと、9年で削減しようとしている韓国に比べ期間が長くなりそうなことから、韓国よりはソフトな取組みになるのかも知れませんが、いずれにせよ大変なことになりそうです。もともと少ない高等教育への公的投資が財政状況と“無償化”との関係でどうなるか分からないこと、私学セクターに長年依存してきた高等教育システムであるという構造的特徴を考慮すると、具体的には一体どうするのだろうと思います。右往左往した挙句、「みんなで少しづつ定員を削り合いましょう」という日本的結論になる可能性も否定できませんが。

「戦略」という観点からすれば、もし、上記のようなことに本当になるとするならば「戦略的(外部)環境の激変」ということになります。「日本政府」という予測困難なファクターによる影響が決定的な重要性を持つことになるので、何とも頭を抱えざるを得ない事態です。もっとも状況をうまく利用したものが最大の利益を得る?教育研究という非営利、長期的な営為の話の筈なのですが。

(菊池 芳明)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2018年2月8日木曜日

大学専門職問題

本学の法人化後初代理事長予定者であった故・孫福弘氏がその持論に則って大学経営の新たな担い手として構想、制度化したはずの「大学専門職」については、孫福氏が法人化を前に急逝して以降、実際にはその趣旨を無視した運用がなされ多くの問題が発生してきました。いまや大学に残っているのは組合役員である2名のみとなっていますが、3年ごとの任期更新時を中心に様々な問題に見舞われてきました(このあたりは過去も組合ニュースの中で可能な範囲で様々に報じてきました)。今回の任期更新にあたり、前回更新時に「専門職人事委員会において学務教授としての審査を行うこと」を要望したものの「学務准教授が学務教授となることは想定していない」などとして審査自体を拒否されていた問題について、再度審査にかけることを求め、応じないのであれば組合役員に対する不当行為の疑いがあるとして組合として取り上げると通告していました。

その結果、専門職人事委員会終了後に「『横浜市立大学学務教授』名称付与基準」なる文書が示され、「この基準を満たしていないと判断したため、専門職人事委員会の審査自体にかけなかった」との説明がありました。

この「『横浜市立大学学務教授』名称付与基準」の内容に疑義があるため、組合として要求、ついで団体交渉要求を行い、説明を求めていました。

具体的には、
  1. 基準の1として挙げられている「直近3年間におけるMBOの総合評価(二次評定)がいずれも『A』かつ『S』が一つ以上」について、職員の評価はBが標準で、特にSは例外的につけられるものであること。また、それ以前の問題として、大学専門職を評価に当たって事務職員の一部として組み込み、その母集団の一部として同様の基準により相対評価を行うことは専門職としての独自性を無視しており不適切であること。
  2. 基準の2として「本学の大学運営に資する多大な貢献」としているが、具体的な基準が不明であり、いくらでも恣意的な解釈、運用が可能であること。
  3. 基準の3として「他大学では見られない顕著な実績」とあり、更に口頭で「他大学の同種の専門職と比べて顕著、という意味である」との説明があったが、同様に「顕著な実績」の具体的基準が不明で恣意的な解釈、運用が可能なだけでなく、「他大学の同様の職種に比べ顕著な」という基準自体、本学の教員、市派遣職員、固有職員、いずれにおいても「他大学の同様の職種と同様」以上の基準は求められていないはず(説明に当たった人事担当者自身も含め)である以上、著しく均衡を欠く不公正なものであること。
  4. 以上を満たすのは事実上困難であり、組合役員である2名を「学務准教授」にとどめ置くために作成された恣意的な基準である疑いがある。

という諸点についての説明を求めたものです。付け加えるならば、当該文書自体、作成日時も作成者も不明なもので、いつから存在するのか、今回の審査前に変更されたりしていないか全く不明です。

最終的に当局側は団交に応じましたが、団交およびその事前折衝の段階で当局側からあった説明は、
  1. 事務職員の評価は30%以上がA評価以上(うちS評価は5%以下)とされていて、S評価は実際にはこれまではあまり出してこなかったが今年度は出すようにしている。実現困難ではない。大学専門職の独自性については、大学専門職はあくまでも規程上、一般職員の一部である。
  2. 「大学運営に資する多大な貢献」については、教授及び診療教授の資格でも同様に定めている。「多大な貢献」な貢献の具体的内容について事前折衝で説明の必要は無いと言ったのは「多大」には色々あって説明できないということだ。
  3. 「他大学では見られない顕著な実績」というのは、学務教授なのだからURAなどよりははるかに高い実績が必要ということ。「顕著な実績」については色々総合的に判断する。その時々の個別具体的な話になるので具体的に示すのは困難。
  4. この基準は専門職人事委員会において承認されており問題は無い。

というものでした。団交の席において重ねて「『多大な貢献』『顕著な実績』が総合的な判断で明らかにできないというのはおかしい。実際に判断する以上、基準は必要なはずであるし、その基準は明らかにされている必要がある」と説明を求めましたが、「総合的な判断なので明らかにできない」と繰り返すばかりでした。

さらに加えて指摘すると、「大学専門職」は確かに就業規則上は広義の「一般職員」(教員以外の職員全てを包摂)ですが、「事務職員」とは別に「大学専門職に関する規程」「大学専門職年俸に関する要綱」(大学専門職のための)「専門職人事委員会要綱」が規程として設けられており、規程上も運用上も事務職員とは別に扱うべきものです。「公立大学法人横浜市立大学事務組織規程」においても、職員の分類は「大学専門職事務職員、技術職員、医務職員その他必要な職員」とされ、別々に区分されています。

また、「『多大な貢献』『顕著な実績』は総合的な判断で明らかにできない」という説明については、解釈、運用は恣意的に行うと宣言しているようなものであり、論外というべきです。教授、診療教授の資格について当局側は団交の席で言及しましたが、例えばその教員の場合、評価における恣意的な運用を避けるために教員組合との間に合意を交わし、教員評価において、教育面を例にとると「学生のレベルアップにつながる教育を行わず、授業の質が確保されていない」と判断される場合について「授業をたびたび放棄する」など具体的な事例を列挙し、制度の公正な運用を期しています(もっとも、その後、当局側は合意に反した運用を行おうとして、その結果、教員組合が神奈川県労働委員会に斡旋申請を行うという事態も起こったようですが)

もう一点、当局側は大学専門職に対して一方で教授、診療教授の基準を、また一方で事務職員に対する考え方を、と自分たちの主張に都合よく恣意的に適用しています。過去、組合書記長で大学専門職である菊池が中教審における「高度専門職」の新設を巡る議論について、濱口桂一郎氏の「メンバーシップ型」「ジョブ型」という枠組みを援用して分析したことがありましたが、
大学専門職を巡る交渉を通じて事務職員も該当する「メンバーシップ型」と教員や大学専門職が該当する「ジョブ型」という人材の在り方の違いについては当局側にも説明し、当局側もそのような概念があり、それが社会的にも広く通用するようになってきたことは理解をしていたはずなのですが、いざとなると素知らぬ体を装うつもりのようです。

「学務教授なのだからURAなどよりははるかに高い実績が」云々というのも他大学の専門職に対して非礼なものであるだけでなく、国立大学の場合、URA、IRerなどの専門職も教員として採用されているケースが多く、国立大学の専門職の「教授」よりも本学の「学務教授」は「はるかに高い」業績が無ければいけないというのは論理的論拠がまるで判らない主張です。

最後に、この基準は今回、しかも審査後に初めて明らかにされたもので団交中に組合側からも声が出たように「後出しじゃんけんと言うしかないもの」です。

3年半ほどのやり取り、最後は団交まで行ってようやく明らかになったのは、残念ながら当局側にはこの件でおよそ誠意ある対応を行う気はなさそうだということでした。横浜市従本部とも相談の上、今後の対応を決めていくことになります。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ